お見事!杉咲花のナチュラルすぎな『おちょやん』の関西弁まわし | FRIDAYデジタル

お見事!杉咲花のナチュラルすぎな『おちょやん』の関西弁まわし

朝ドラにつきものの「方言問題」を考察してみた!

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『おちょやん』で達者な関西弁を操る杉咲花

コロナ禍の影響で遅延したものの、2020年11月30日から杉咲花が主演する『おちょやん』(NHK総合)が始まった。大阪の貧しい家に生まれ、家族のために9歳から女中奉公に道頓堀へ出された竹井千代(杉咲)。芝居茶屋『岡安』に住んで女中として働くうちに、芝居の魅力に惹かれて、女優の道を歩んでいくという物語だ。

今回の『おちょやん』は舞台も収録も、大阪。セリフは関西弁が使われているのだが、杉咲の発音が……お、おお……とても聴きやすいことに気づく。なぜだろう? その理由を考えてみた。

ナチュラルで耳に入りやすい杉咲花の「へぇ!」

朝ドラの舞台が関西になると、当然のようにほとんどの出演者が使用している関西弁。むしろ『あさが来た』(2015年)の五代様のように、一人だけ標準語を話していると存在が際立つことになる。

この状況を追うようにヒロインを取り囲む出演者には、ガチの関西出身勢が多くキャスティングされているのも、関西収録の特徴だ。今回は千代の父親・竹井テルヲ役のトータス松本(ウルフルズ)、千代が働く岡安の主人・岡田宗助役の名倉潤(ネプチューン)、その母親役の宮田圭子は兵庫県出身。岡安の一人娘で、千代の友人であるみつえ役の東野綾香は大阪府出身……とリストアップしてもキリがないほど、天然の関西弁勢が杉咲(東京都出身)の周辺にはわんさか。

方言の中では、全国区で知られている関西弁。でも役作りのためにと急遽頑張ったところで、いきなり話せるものではない。そんな理由から東京から参加している俳優陣が放送当初、関西弁に違和感があってもそれはご愛嬌だと思って視聴を続けている。

それが杉咲花の関西弁は初っ端から非常にナチュラルで、聴きやすい。違和感もなく、上記に挙げた天然関西弁勢にすんなりと馴染んでいる。ドラマ内で「はい」という返事を関西風に「へぇ!」と言うのが慣わし。こういう短い言葉こそ、方言は難しいはずだがここもクリアしている。他出演者の様子を見ていると、ベテランと呼ばれる女優でも関西弁使いに辿々しさを感じさせるなか、彼女は頭ひとつぶん抜け出した。そして舞台は年明けから京都へ移り、新しい舞台でどんなイントネーションが聴けるのかも見どころのひとつになっている。

リアル地元民には敵わない、イントネーションのもどかしさ

この方言問題は朝ドラがスタートすると、必ずと言っていいほどSNSやネットニュースに上がってくる。標準語に生まれ育っていると触れる機会が少ないとは思うけれど、方言はその土地に住む人にとって誇りである。ちょっとしたイントネーションの違いなどは、敏感に察知してしまう。朝ドラは民放ドラマと比較をすると、ヒロインを中心に地方を舞台にすることが多い。チェックされがちなのだ。

例えば『とと姉ちゃん』(2016年)は、放送当初の舞台が静岡県浜松市、個人的ではあるが、出身地である。使用されていたのは、遠州弁と呼ばれる浜松市の方言だ。ただ残念なことに、出演者の方言の使い方が大きくズレがあったことを覚えている。これは地元でも話題に上がっていて、皆小さく落胆していた。

東京とは違って、情報量の少ない地方都市がドラマの撮影に使われるのはお祭り騒ぎ。にもかかわらず誇り=方言が違った形で全国へ伝達されていくことが、疑問だったのかもしれない。

前クール放送の『エール!』(2019〜2020年)は、ヒロインの音(二階堂ふみ)は愛知県豊橋市出身という設定。ともに東京へ嫁いできた姉の吟(松井玲奈)といると、つい出てしまう三河弁。これが「い(↑)るでしょう!」など、細部のイントネーションを二階堂はマスターしていた。豊橋市は松井の出身地なので、ひょっとしたらリアル地元民から直接の指導があったのかもしれないと予想。

いずれにしても朝ドラ出演者の皆さま、放送回が進んでいくと当たり前のように方言の発音がこなれていく。スタートの時点で上質な杉咲が、最終回にはどんな話しぶりなのか楽しみである。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

  • 写真Rodrigo Reyes Marin/アフロ

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