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最近、とても器用だとジェラシーさえ感じてしまいそうになるのが、俳優の谷原章介である。この数年間、ドラマ、映画、CM、歌やクイズ番組と彼のことを見かけない日はない。年末年始、あちこちで見かけるお笑い芸人やアイドルグループの“忙しそうな”動きとは違う。細かく、かつスマートにメディアの世界を回遊しているように見える。“脂が乗っている”とは、まさに彼のことを指しているだろう。
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そんな彼がここ数年、ゲイの役を立て続けに演じていることを知っているだろうか。
<h3>３年連続、同性と愛し合う衝撃的なシーンを世にさらけ出す</h3>
衝撃的だったのは2019年放送『腐女子、うっかりゲイに告る。』（NHK総合）で見せた、主演の金子大地演じる安藤純と交際中の佐々木誠役。妻も子供もいるけれど、高校生の純も愛している。初回放送時、二人の濃厚なラブシーンからスタートしていたのは衝撃だった。泣いている純に温泉旅館で遭遇すると、人目もはばからずに廊下でキスをしていた。愛する恋人を慰めるように、優しく、熱く。佐々木は冷たく、ずるい印象を覚えた。純は佐々木を失ったら消失感に襲われるけれど、佐々木には失うものが何もないからだ。
そして翌2020年には『黒い画集～証言』（NHKBSプレミアム）では、浅香航大演じる、大学生の智久と交際する医師の貞一郎役を好演。妻がいても、世間への後ろめたさを感じながらも愛する人は智久。設定が前述の作品と既視感を覚えるけれど、こちらは恋人との関係を隠すための偽証から、人生が転落していくサスペンスだ。
どちらの作品もNHKでは放送内容はギリギリの表現だった。しかも谷原は演歌から、アイドルソングまで幅広い曲をセレクトしている番組『うたコン』という番組の司会を務めている。その他、朝ドラや大河にも出演。規約が多いテレビ局にガッチリと認められた存在なのだ。
<h3>司会、俳優、子だくさんパパ。好感度はどこまで上がっていく？</h3>
谷原が演じるゲイ役はテレビの枠を飛び越えて、パルコ劇場での『チョコレートドーナツ』で、東山紀之の恋人役を演じていた。育児放棄された障害のある子供を、カップルが育てていく物語。東京での公演は2020年12月30日（水）までだったが、2021年１月からは地方公演へと続いていく。ついに彼は男性同士で愛し合う姿を、人前で披露するまでに至った。
なぜこんなにゲイカップルのオファーが続くのだろう？　そう考えると、谷原自身がいくつもの顔を持った“マルチ”な人であることが思い浮かぶ。
この10年くらいで、日本国内のLGBTに対する意識はずいぶん改善され、柔和になっている。とはいえ“役”として考えるとどうだろう？　それなりにインパクトは強いので演じることは、多少の心持ちが必要だ。パブリックイメージはどこで生まれてしまうか、皆目検討がつかないところがある。万一にも次の役へのステップへうまく到達しない可能性が生まれるのは、俳優にとって大きなリスクだ。
でも谷原の場合、男性と愛し合うシーンを公開しても、翌日は『アタック25』（朝日放送・テレビ朝日系）で司会をしているかもしれない。また深く耳に溶け込んでくるイケボで、聴く側を魅了するナレーションをしていることもある。
そして彼といえば、６人の子どもを持つ父親だ。少子化の時代において、国から表彰されてもいいような存在である。確か数年前に『チューボーですよ！』（TBS系・2016年終了）で、何度か慣れた手つきで料理を作っている姿を見かけた。きっと家庭でも同じように料理を振る舞っているのだろう。
いくつもの顔＝イメージがあることで、強烈なシーンを演じても次々にアップデートをしていくことができるというウエポンが彼にはある。国内の他の俳優が容易に持ち合わせるものではない。
そして彼は次にどんな衝撃をもたらしてくれるのだろうか、ニヤニヤしながら期待をしてしまう。あの好バランスな印象をどこまで伸ばしていくのだろうか？　個人的にはいつか、紅白歌合戦の白組司会を務めてほしいのだけれど。

エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』（KKベストセラーズ刊）が好評発売中。

小林久乃

西村尚己/アフロスポーツ

いま、脂ののっている俳優といえば谷原章介。そんな彼は、ここのところ立て続けにゲイの役を演じている。なぜだろうと考察してみたら、彼の類い稀なパーソナリティが浮かび上がってきた。

NHKに愛される男・谷原章介が「ゲイ役」で好演を連発するワケ

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