デビュー10年を『姉恋』で飾った有村架純の起死回生”女優魂” | FRIDAYデジタル

デビュー10年を『姉恋』で飾った有村架純の起死回生”女優魂”

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エキストラ100人の中でも輝く笑顔を見せた有村架純。‘21年はどんな飛躍を見せるのか…(‘20年)
エキストラ100人の中でも輝く笑顔を見せた有村架純。‘21年はどんな飛躍を見せるのか…(‘20年)

コロナ禍の非日常が「日常化」した2020年。女優・有村架純のデビュー10周年を締めくくる連続ドラマ『姉ちゃんの恋人』(フジテレビ系)は、そんな世の中が閉塞的な中、ハッピーエンドの内に幕を閉じた。

脚本家・岡田惠和と6度目のタッグを組んだこの作品は、ハロウィンから始まった恋がクリスマスで成就するトレンディドラマ全盛期を思い起こさせるような王道のラブストーリー。しかし、彼女の描くラブストーリーは、やはりどこか切ない。

「有村演じるヒロインの桃子は、女手ひとつで3人の弟を養う”肝っ玉姉ちゃん”。そんな彼女が恋してしまったのが”ワケあり”のトラウマを抱え、幸せになることを諦めてしまった真人(林遣都)。その傷は深く、心は硬く閉ざされたまま。

ところが第6話ではそんな真人を桃子は観覧車に呼び出し、閉ざされた心を揺さぶる。涙を浮かべ『もっと好きになっちゃいました』と思いを伝えるシーンは語り継がれる神回となっている」(制作会社プロデューサー)

そして最終回のラストシーン。King & Prince高橋海人の、

「生きるってことは、ずっと幸せって奴に片思いし続けることかもしれないね。(中略)でも今を生きる僕らみんなが、幸せにちゃんと片思いしていれば、きっと大丈夫。この星は壊れない。そうだよね、姉ちゃん」

と続くナレーションは、ミスチルの歌う主題歌「Brand new planet」と合間ってコロナ禍に苦しむ私たちの心に寄り添い、優しく抱きしめてくれた。

有村架純は不思議な女優だ。石原さとみや多部未華子のように舞台で培ったスキルが備わっているわけではない。“感性の化け物”と評される、二階堂ふみのような感情の振り幅も持ち合わせてはいない。

しかしいざ「本番!」の声が掛かると、たとえ台詞のない場面でも、その役になり切って不思議なオーラを醸し出す。そんな有村を脚本家の岡田氏は「どう見られるかより、どうしたらその人になれるか。ただそれだけを考えている」とその魅力を語る。

しかしこの2年あまり、有村は女優として迷いや不安を抱え、苦しんで来た。

「現在、27歳。30歳へ向けてより力のある人だけが女優として残っていく。そんな中、有村は自分の思いを胸に秘めるなど、等身大の役を演じることも多く、お仕事モノや舞台もあまり経験していない。自分の幅が狭まってきているんじゃないかと、インタビューなどで不安な気持ちを口にしています」(ワイドショー関係者)

しかし不安の要因は、それだけではなさそうだ。‘18年10月期に主演した話題作『中学聖日記』(TBS系)は全話平均視聴率が6.9%と低迷。民放ドラマ単独初主演で躓いたことも、悩みを深めるきっかけになっているのかもしれない。

「この作品は、ヒット作『アンナチュラル』や『MIU404』(TBS系)を手掛けた、今をときめく新井順子・プロデュース×塚原あゆ子・演出による注目作。オーディションで選ばれた期待の大型新人・岡田健史と”教師&生徒”の禁断の恋を演じ、放送前から期待されていただけに残念な結果に。有村の新境地を切り開く作品にはなりませんでした」(前出・ワイドショー関係者)

その後、有村は視聴率の結果にシビアな民放ドラマを避け、連続ドラマW『そして、生きる』『有村架純の撮休』(共にWOWOW)と言った作品に主演。そういった意味でも今回の『姉ちゃんの恋人』は、満を持しての登場となった。

「今回『姉恋』の演出を担ったのは、有村のデビュー映画『阪急電車 片道15分の奇跡』でメガフォンを取った関西テレビの三宅喜重氏。デビュー直後の有村を振り返り三宅氏は『芯のしっかりしたガッツのある頑張り屋』と評しています。

この時の好演に惚れ込み、脚本を手掛けた岡田氏は『ひよっこ』への抜擢を決めています。まさに有村としては、女優デビューのきっかけを作ってくれた恩人コンビとタッグを組んだ再チャレンジというわけです」(制作会社プロデューサー)

有村には、胸に秘めた思いがある。小学校4年の時に両親が別居の末に離婚。母の元に引き取られた有村は、寿司屋と蕎麦屋のアルバイトを掛け持ち。懸命に働きながら一家の家計を助けた。女優への道も「女手一つで育ててくれた母に恩返しがしたい」。その思いから必死にチャンスを掴み取っている。

「奇しくも有村が『ひよっこ』で演じたのは、出稼ぎに出て行方不明になった父親を探すために上京するヒロイン・みね子役。そして『姉恋』では高校3年生の時、目の前で両親を交通事故で失ったヒロイン・桃子役。家族を失った悲しみこそ、みずからも家族の喪失を女優になることで乗り越えてきた有村にとって女優魂の原点。不安な思いを断ち切り、女優として次のステージに挑むには、まさにピッタリの作品ではなかったでしょうか」(放送作家)

喪失感を抱え、常に憂いを含んで佇む女優・有村架純。そんな彼女にはコロナ禍で非日常が日常化する今こそピンチをチャンスに変える好機。そう言った意味でも、このタイミングで「姉恋」のヒロイン桃子を演じた意味は重い。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • PHOTO近藤裕介

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