無観客で浮き彫りになった紅白の「音声問題」が起こった背景 | FRIDAYデジタル

無観客で浮き彫りになった紅白の「音声問題」が起こった背景

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’20年12月に日本での本格デビューを果たしたガールズグループNiziU(ニジュー)。紅白とおなじく「年末の風物詩」である「第62回輝く!日本レコード大賞(レコ大)」(TBS系)では、特別賞を受賞した 写真:西村尚己/アフロ

今年も様々なアーティストによるパフォーマンスが話題となった紅白歌合戦。

第2部の平均視聴率が40.3%と2年ぶりに40%台に復帰し、2020年の年間視聴率1位になるなど、無観客で開催されたにも関わらず大きな盛り上がりを見せたが、その一方で歌番組の大切な要素である「音声」にさまざまな問題があったのではないかという指摘もされている

まず、多くの人に指摘されたのがNiziU(ニジュー)の「Make you happy」イントロ部分でメンバー全員が揃わずMAYUKAが不在だったこと。これはMAYUKAのマイクトラブルでスタンバイが遅れたことが原因だったことが判明した。

さらに、高い歌唱力で定評があるOfficial髭男dismが、「I LOVE…」を披露した際にも、歌いにくそうにしており、予想外に音程が安定しなかったという声も聞かれた。ボーカルの藤原聡は歌いながら、IEM(イン・イヤー・モニター)と呼ばれるイヤホンをしきりに気にしており、「アーティストへの送り返し音声が良くなかったため、歌いにくかったのではないか」と考えられる。

さらに、このほかの歌手についても「声が予想以上に出ていなかった」「マイクの音量が小さかったのではないか」「パーカッションなど、楽器の音量が大きすぎて、ヴォーカルが聞こえにくかった」などの指摘が、web上、そしてコラムニストや業界人などからなされている。

「国民的音楽番組」でなぜこのような音声の問題が指摘されるような事態となったのだろうか。テレビの音響関係に長年携わり、放送関係の専門学校でも教鞭を執るベテラン技術者に話を聞いてみた。

「今回の紅白歌合戦は、通常のようにNHKホールだけで行われたのではなく、感染対策のため多くのスタジオも使っていましたし、外部のホールなどさまざまな場所と中継もしていましたね。NHKはもともとこれでもかとリハーサルを繰り返すのですが、今回はそういう事情であまりリハができなかったのだと思います。ちょっとしかリハができないから、音のバランスがバラバラになってしまったのではないでしょうか」

つまり今回、無観客でも紅白を盛り上げるために多くの会場を結んだので、一曲にかけるリハーサルの時間が通常のように取れなかったことが大きな原因なのではないか、とまずベテラン技術者は指摘する。そしてさらにこう続けた。

「民放は音楽番組での中継の経験が豊富で、慣れています。しかし実はNHKは音楽ものの中継に慣れていません。担当したミキサーはドキドキものだったのではないでしょうか。言っては悪いですが、今回の紅白歌合戦の問題は『下手くそだった』の一言につきるのです」

NHKは民放に比べて音楽中継番組の経験が浅い、と聞くと意外に思うかもしれないが、実は筆者もかつてベテランの音声さんから同じ話を聞いたことがある。「紅白歌合戦は音声がそんなに良くない」というのはこれまでにも音響関係者の間やネット上ではよく指摘されていたことだ。

そもそも民放より経験値が少なかったのに、コロナ禍で感染対策防止のため日頃より複雑な番組構成になったため、ミスが多発してしまった可能性が考えられるというのだ。そしてさらに、そこにはNHK特有のこんな事情もあるのではないかと、ベテラン技術者はこんなことを教えてくれた。

「かつて私と大手番組制作会社で一緒に仕事をしていた同僚の音声技術者がNHKに転職したのですが、彼は『もう民放の仕事のスピードに戻れない』と言ってました。NHKは予算にも時間にも余裕があるので、逆に短時間で作業するのはとても苦手なんですよ」

コロナの感染者数が急速に増えて問題が深刻化する中でも数多くの趣向を凝らし、無観客でも例年になく面白いと言われる紅白歌合戦を制作したNHKの制作者たちの努力は素晴らしかったと思うし、称賛に値するだろう。きっと直前になって状況に合わせて急遽さまざまな変更が懸命に行われたのだろうということも推測できるし、頭が下がる。

しかし、音楽を聴いて楽しむのが音楽番組の根本であるわけだから、肝心の音声にトラブルが起きてしまっては台無しだ。今後はぜひ技術面でも万全の準備をして、素晴らしいクオリティの紅白歌合戦にしてもらいたいものだ。

  • 取材・文鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。

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