金正恩の妹・金与正「スピード出世からまさかの降格」の背景

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まさかの「降格」となった金与正氏。兄との不仲説も浮上した(画像:コリアメディア・共同)

ハイスピードで出世した若き女性が、まさかの「降格」となった。北朝鮮の最高権力者・金正恩氏の妹・与正氏だ。異例の人事の背景には、金ファミリーの意外な思惑があったーー。

1月5日から12日の間に平壌で行われていた、朝鮮労働党第8回大会。正恩氏は「党総書記」に推挙された。建国者で祖父の金日成、父親の金正日と同じ肩書きで、正恩氏の権威はさらに高められることになる。

「北朝鮮で、金日成や金正日は絶対的な存在です。『総書記』のポストは、正日氏が亡くなった11年12月以来、長い間空席となっていました。これまでの正恩氏の肩書きは、『党第一書記』(12年から)や『党委員長』(16年から)。今回の大会決定書では、正恩氏の指導力をこう褒め称えています。『天才的な思想的・理論的英知と非凡かつ特出した指導力、崇高な風貌を身に付けた卓越した指導者』と。

正恩氏が『卓越した指導者』である『総書記』になったのは、危機感の表れでもあります。相次ぐ自然災害に長引く新型コロナ禍、国際的な制裁により逼迫する経済……。危機的な状況で自身の求心力を高め、困難を乗り越えようと考えているのでしょう」(韓国紙記者)

正恩氏との不仲説の真相は?

今回、もう一つ注目されたサプライズ人事がある。大会前は党指導部入りすると予想されていた、妹の金与正氏のポストだ。幹部である政治局員候補から外れ、「党副部長」に「降格」となったのである。

「一部には、低迷する経済が上向かない責任を取らされたという見方があります。与正氏は昨年4月に正恩氏の重病説が出てから、たびたび兄の名代として国家指導にあたってきましたからね。存在感が増したことで、正恩氏の反感を買ったという情報があるんです。

韓国の脱北者団体が5月に女性の水着合成写真などビラを撒いた際には、文在寅大統領を『吐き気がする』『ムカつく』と罵倒しました。過激な発言も、韓国との融和を図る勢力から問題視されていたと言われます」(同前)

一方で、「降格」はリスク回避という見立てもある。『デイリーNKジャパン』編集長の高英起氏が解説する。

「正恩氏との不仲はありえませんよ。与正氏は正恩氏が心を許せる、数少ない存在の一人ですから。肩書き上の降格には、国内外二つの背景があります。一つは、米国との国際関係です。トランプ大統領時代、米朝関係は比較的良好でした。トップ会談も行われ、『外交の華』として与正氏の役割は大きかった。

バイデン政権になれば、再び米朝関係が悪化することが予想されます。実際に党大会で正恩氏は『米国は最大の敵』と述べ、極超音速滑走ミサイルの開発を進めるとしていますから。外交でなく軍事優先となれば、与正氏が表舞台に出る必要は無くなります」

もう一つの背景は、国内情勢だ。高氏が続ける。

「北朝鮮では、いまだに男尊女卑の風潮が強いんです。与正氏が喫煙を規制しようとした際には、かなりの反発があったとか。北朝鮮内の情報筋によれば、正恩氏がヘビースモーカーであることから『妹のオマエが言うな』と陰口を叩かれたそうです。昨年6月に韓国との国境近くにあった南北共同連絡事務所を爆破した時は、地方幹部から『生意気な青二才』と非難する声が出たといわれています。

30代の若い女性が、権力を握ったことに対する妬みですよ。コロナが蔓延し経済が低迷する現在の状況で要職に就けば、責任を問われかねません。『降格』はリスク回避と見るべきでしょう。与正氏は、金日成の血を引くロイヤルファミリー『白頭の血統』(第二世界大戦中、金日成が抗日ゲリラの拠点とした白頭山が由来)です。肩書きに関係なく、今後も正恩氏の最側近としてサポートしていくと思います」

「降格」となっても、変わらぬ与正氏の存在感。「無冠の権力者」として、山積みの難題解決に臨む。

  • 写真共同通信社

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