パのサブマリンが集結!「アンダースローだらけの自主トレ」の中身
史上初 チームの垣根を越えて切磋琢磨 楽天 牧田和久 × ソフトバンク 高橋礼 × 西武 與座海人
ウワサは本当だった。
「1月上旬、関東でアンダースローだらけの自主トレが開催される」との一報を聞き、埼玉県某所に駆け付けるとメジャー帰りの牧田和久(36・楽天)を先頭に、’19年の新人王・高橋礼(25・ソフトバンク)、西武期待の與座海人(よざかいと)(25)らパ・リーグの主力サブマリンたちが続々と球場入りしているではないか!
発起人の高橋によれば、これは構想2年に及ぶ一大プロジェクトで、狙いは「日米の一線で投げ続けている稀有なアンダースロー」の経験値の共有だという。グラウンドに出てきた3人を直撃した。
――令和3年初始動ということで、まずは抱負を聞かせてください。
牧田 1年間ケガせず、任されたところで投げるだけです。
高橋 僕も「ケガをしないこと」です。昨年は春先にケガして中継ぎに回りましたが、今年は先発に戻るのでしっかり試合を作る。長いイニングを投げたいです。
與座 自分は昨季、初めて先発ローテに入れたんですが、まだしっかり立ち位置は決まっていない。自分のポジションを摑(つか)めるようにやっていきたいです。先発、中継ぎ、こだわりはありません!
――アンダースロー同士だからわかる、それぞれの良さは何でしょうか。
牧田 高橋くんはパワーですね。真っ直(す)ぐが速い。捕手の甲斐(拓也・28)くんもその威力をわかっているから、高めの速球を効果的に使って、良さを引き出していますよね。その一方で真っ直ぐを少し動かして詰まらせたり、スライダーで泳がせたりもできる。打たせて取るのも巧い。見習うべき点は多々、ありますね。
――ソフトバンクの王貞治球団会長は常々、「打者に向かってくる高めの真っ直ぐが一番打ちづらい」と言っています。
牧田 そういうことです。
與座 あの140㎞を超える速球は本当に魅力ありますね。普通、右のアンダースローは左打者を苦手とするんですけど、彼は苦にしない。右左関係なくしっかり抑えているのは凄い。
――左の強打者といえば、以前、’19年の首位打者・森友哉(25・西武)選手について、高橋さんに「右アンダースローの天敵では?」と聞いたら「全然」と答えていましたね。
高橋 そんなこと言いましたっけ(笑)。
與座 たしかに(森に)臆せず速球をバンバン投げ込んでいました。
――「楽天の浅村(栄斗(ひでと)・30)さんのほうがイヤですね」と言っていましたよ。
牧田 浅村は皆、イヤだと思うよ(笑)。そういう與座くんは……以前、スカウトの方や西武の渡辺久信GMから聞きましたが、僕の完コピに取り組んでいるとか。非常に似ているなとは思います。ただ、まだノビシロがあるというか、改善点があるという印象。完コピまでには、もうちょっと時間がかかるかな。
――コピーするうえで難しい点は?
與座 打者との駆け引きとか、ランナーがいる場面でのクイックとか、前後の打者を考えての勝負だとか……。
――フォームに関しては完璧だと。
與座 あ、いや、全然ダメですね。もうちょっと低く沈み込んで投げたいです。もっと身体の柔軟性を高めないと。
牧田 アンダースローは筋肉より柔軟性が大事。身体が硬いとケガしてしまう。
――アンダースローは疲れませんか。
牧田 正直、疲れます(笑)。
高橋 その疲労が激しいアンダースローで長くプレーできているのが牧田さんの凄さ。去年も1年間、安定したピッチングを続けられていた。まさに〝完成品〟だと思います。その〝完成品〟に與座さんはソックリなんですよ、フォームは。僕もマネしてみたんですけど、ボールをリリースした後の形が再現できず……。
與座 見た目が似ているだけで、中身は全然違いますから!
10日間の自主トレ期間で、どれだけ〝完成品〟に近づけるか!?
『FRIDAY』2021年1月22日号より
- 写真:小松寛之