『アメトーーク!』で単独MC務める蛍原の評価がうなぎ上りなワケ | FRIDAYデジタル

『アメトーーク!』で単独MC務める蛍原の評価がうなぎ上りなワケ

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日本を代表するバラエティー番組のひとつとして不動の地位にある『アメトーーク!』。 

2003年の深夜番組からスタートして徐々に人気を高めていき、2006年にはゴールデン枠に進出。その後、現在のネオバラエティ枠に落ち着いた。安定した人気の中で訪れたのが、2019年の6月にあった宮迫の闇営業問題の発覚だ。同番組では、それまでの宮迫博之・蛍原徹の2人MC体制から蛍原の単独MC体制に切り替わった。 

はじめは、宮迫不在を不安視する声が多々あったが、それは杞憂に終わり、1年半が経った今では、蛍原の単独MCには何の違和感もない。むしろ今の流行にあったスタイルのど真ん中を突き進んでいるように見える。 

大黒柱とも言える宮迫を失った『アメトーーク!』が、今も変わらずに人気バラエティー番組の一角を守り続けている背景には、蛍原の変化が大きく関係しているのだろう。 

(撮影:齋藤雅昭)
(撮影:齋藤雅昭)

いつの間にか消えた。大黒柱の宮迫を失った喪失感

 早速だが、新体制の『アメトーーク!』が順調とは言え、宮迫のいた時代が忘れられないという人も多い。それもそのはず、宮迫博之という芸人は、お笑い力・トーク力・人間力に加えて、「お笑いレーダー」という大きな武器を持っていた。ほかの人なら見逃してしまうだろう小さな違和感を上手くすくい取って笑いに変える。その技は超一級品で、ゲストの言動を時においしくイジり、時に厳しくいなしたりして、番組内での盛り上がりの中心には、いつも宮迫の姿があった。

「振り」、「ボケ」、「ツッコミ」の3役で笑いが取れる天才型とも言える宮迫の事実上の降板は、世間に大きな衝撃を与えた。しかし、単独MCになった蛍原は、芸人ゲストMCの力を借りながらも、宮迫不在分をカバーするかのように新しい一面を次々に出していき、それまでの『アメトーーク!』にはなかった笑いを作っている。

そこで今回は、単独MCとなった蛍原が、宮迫不在の不安を跳ねのけられたポイントを大きく2つに分けて、考察してみたい。 

宮迫不在の不安視を跳ね返した蛍原の「ボケ解禁」

まず1つ目は蛍原のボケが解禁になったことだろう。元々、「雨上がり決死隊」は主にコントを行っており、ボケを宮迫、ツッコミを蛍原が担当していた。しかし、宮迫はどちらかというと、その場を自由自在に操ることができるツッコミタイプ。対する蛍原は天然ボケタイプ。2人ともボケ・ツッコミができる両刀使いだ。

『アメトーーク!』で、宮迫は比較的自由に発言していたが、蛍原は過去の失敗から番組内でボケるのは1回までとされていた。そのため、2人でMCをしている時は、ボケることはほとんどなかった。

もしかしたら、「ボケるのは1回まで」という制限があったから、世間では「アメトーーク!=宮迫」という図式が自然と出来上がっていき、宮迫不在時の不安の声が大きかったのかもしれない。

孤軍奮闘が予想されていた蛍原の単独MCだが、前述したとおり、見事にその不安を吹き飛ばした。それを説明する神回を2つ紹介しよう。

1つ目の神回は、蛍原が単独MCになって間もない2019年8月の「もっと売れたい芸人」だ。ゲストの見取り図が、自分たちで作ったオリジナルゲームを蛍原と千鳥・大悟に促したことがあった。お題に合った「あるある」を、2人がリズムにのせて即興で上の句と下の句を言うというゲームだったのだが、「アメトーーク!」というお題に対して大悟が上の句に「行くと」とパスを出し、蛍原が下の句でとっさに「ひとり」と続けた。

即興ゲームとは思えないクオリティーの高さに加えて、蛍原が感じている心細さや不安さが十二分ににじみ出た自虐ネタで、大爆笑をかっさらったのだ。

さらに2020年2月に放送された「コンビ芸人ホームルーム」企画でも、この自虐ネタをぶち込んだ。ゲストたちが普段は言えない相方への不満や不安を次々に吐露していき、感想を求める度に、蛍原は「言いたくても…(今は言えない)」「やりたくても…(今はできない)」といったように、宮迫の不在を寂しむコメントを返して笑いを誘った。

絶妙な「緩さ」が生み出す副産物 

宮迫不在の心配を跳ね返した2つめのポイントは、蛍原の持つ緩い空気感だろう。長い期間ボケを禁止されていたためか、蛍原は宮迫と違って相手の話を途中で切ることなく、じっくり聞くスタンスをとっている。それが番組のカラー変更につながったと考えられる。

また、それまで番組の進行を大きく左右していた宮迫のお笑いレーダーがなくなったために自然と番組全体に鋭さがなくなり、いい感じの緩さが出てきた。

この空気感の変化はとても大きい。単独MC前と後を学校で例えると、ダブルMCの時は宮迫が担任、蛍原が副担任という立ち位置だろう。頭のキレる宮迫先生が受け持つ授業では、生徒(ゲスト)たちが担任のお眼鏡に適おうとスパルタ授業に挑み、ふいにやって来る回答ターンをいかにものにするのかを競いあっているイメージだ。

生徒たちにとってのライバルはクラスメイトと宮迫先生。この場合、自然とクラス全体がレベルアップしていくが、担任同様の突出した才能を持った生徒たちにスポットライトが当たりがちになる。そんな苦戦を制して這い上がってきた優秀な生徒が、有吉、博多華丸・大吉、ケンドーコバヤシ、サバンナ・高橋、麒麟・川島、フットボールアワー・後藤、オードリー・若林といった面々。押しも押されぬ実力者たちばかりだ。

しかし、最近のバラエティー番組は、特定の誰かが番組を引っ張るよりも、出演者全員が協力して番組を楽しく盛り上げようという傾向がある。宮迫不在となった今、蛍原のスタイルが見事にそれにハマり、『アメトーーク!』は「進学クラス」から「放課後の部室」に変化したように見える。

明るく面倒見がいいけれど、どこか抜けているキャプテン・蛍原。彼の元には、毎日のように後輩(ゲスト)たちが集まってくる。安心感にあふれる部室では、学年(世代)に関係なく、誰もが自由に発言してワイワイ楽しんでいる。そんな絵が想像できるだろう。

たまにトークが脱線したり、その場で生まれたノリで後輩たちが小遊びすることもあるが、キャプテン蛍原の優しい注意が、ふんわりとした楽しいトークタイムに格上げしている。

また、時には本気で後輩たちに反論することもあるし、自分の体験談をかぶせて笑いをかっさらい、いい所を取ってしまうこともある。これは、蛍原が自分を飾らずに素を出しているからなせる寄り道で、計算では生まれない笑いと言えるだろう。

蛍原のさらなるボケ体質の開花に期待

前述したように、蛍原はコンビ上ではツッコミだが、実際は天然ボケ気質の両刀使いだ。『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)内で生まれたネプチューンの堀内健とのコンビ「ホトシュール」では、蛍原はボケを担当。年末年始の特番でも「ホトシュール」で笑いを取っていた。

今のところ、『アメトーーク!』内では誰かからの振りを笑いで切る形をとっているが、事実上のボケ解禁となっている今、笑いの切りどころは至るところに存在する。私たちが知らない蛍原の新しい一面が、いつ訪れるのか。期待値は高まる。

  • 安倍川モチ子

    WEBを中心にフリーライターとして活動。現在は、「withnews(ウィズニュース)」「Business Jounal(ビジネスジャーナル)」などで執筆中。また、書籍や企業PR誌の制作にも携わっている。専門分野は持たずに、歴史・お笑い・健康・美容・旅行・グルメ・介護など、興味のそそられるものを幅広く手掛ける。

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