SNS、学校内警察、監視カメラ…異色の刑事ドラマが続々のワケ | FRIDAYデジタル

SNS、学校内警察、監視カメラ…異色の刑事ドラマが続々のワケ

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安定した視聴率を稼ぐジャンルだが…

藤原竜也が出演する『青のSP(スクールポリス)―学校内警察・嶋田隆平―』も、学校問題を切り口にした新しい刑事ドラマだ(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

成人の日を過ぎると正月ムードの特番もすべて終わり、入れ替わるように各局の冬ドラマがはじまっている。

今冬の新作ドラマを見渡して驚かされたのは、一風変わったテーマの刑事ドラマがそろったこと。12日にスタートした『青のSP(スクールポリス)―学校内警察・嶋田隆平―』(カンテレ・フジテレビ系)のテーマは学校内警察、23日スタートの『レッドアイズ 監視捜査班』(日本テレビ系)のテーマは監視カメラ、25日スタートの『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』(テレビ東京系)のテーマはSNSの誹謗中傷と、これまでとは異なる刑事ドラマのムードが漂っている。

刑事ドラマと言えば、テレビ業界で「最も安定した視聴率を稼げる」と言われ続けてきた定番ジャンルのはずだが、なぜ今冬の新作ドラマにはこれほどの異色作がそろったのか。

2010年代は刑事ドラマ供給過多だった

まず忘れてはいけないのは、刑事ドラマのシリーズ作が今冬も放送されていること。『相棒 season19』(テレビ朝日系)は21年、『今野敏サスペンス 警視庁強行犯係 樋口顕』(テレビ東京系)は17年、『遺留捜査』(テレビ朝日系)は10年もの放送歴を持つシリーズ作であり、いずれもオーソドックス刑事ドラマと言える。

一方、今冬スタートする新作のテーマは、オーソドックスというより、「イレギュラーな刑事ドラマ」と言ったほうがしっくりくるのではないか。ただ、このイレギュラー路線は今冬にはじまったことではなく、近年ジワジワと進みはじめていた。

たとえば昨年放送された新作の刑事ドラマには、刑事と検事がバディを組む『ケイジとケンジ ~所轄と地検の24時~』(テレビ朝日系)、初動捜査を行う機動捜査隊にスポットを当てた『MIU404』(TBS系)、警察学校の学生が事件解決に挑む『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系)などがある。いずれのテーマもオーソドックスではなく、イレギュラーな刑事ドラマと言える作品だった。

新作にイレギュラーなテーマが増えたのは、刑事ドラマというジャンルが過渡期に入っていることの証だろう。振り返ると2010年代は世帯視聴率の落ち込みを食い止めるために各局が刑事ドラマを量産し、一時期はプライム帯の約4割を占めるなど供給過多の時期が続いている。

各局が殺人、強盗、誘拐、放火、強制わいせつ、立てこもりなどの凶悪犯罪を扱う捜査一課の活躍を描くオーソドックスな刑事ドラマを次々に制作したことで、視聴者に飽きられてしまった。かつてのような「最も安定した視聴率を稼げる」というセオリーが通用しなくなっているのだ。

また、昨年は『ランチ合コン探偵』(読売テレビ、日本テレビ系)、『アリバイ崩し承ります』(テレビ朝日系)、『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)、『探偵 由利麟太郎』(カンテレ、フジテレビ系)などの探偵ドラマが目立った。これらは主人公を刑事から探偵に変えただけで“刑事事件”を扱っていることは同じ。こちらも「刑事ドラマが増えすぎたことによる影響であり、差別化を狙った動き」と言われている。

若年層狙いで現代性を踏まえたテーマに

「もはやオーソドックスな刑事ドラマでは通用しない」という状況になって各局が目をつけたのは、現代性を踏まえたテーマ設定。今冬の新作で描かれる「学校問題」「監視カメラ」「SNS」は、まさに現在の社会をとらえたテーマであり、新鮮な印象を与えるとともに、長年放送されているシリーズ作との差別化にもなる。

その「現代性を踏まえたテーマ設定」という意味で見逃せないのが、昨春に行われた視聴率調査のリニューアル。各局がスポンサーの求める13~49歳向けの番組制作に舵を切ったことで、より「若年層も見たくなる刑事ドラマ」を制作する必要性が生じた。その点、「学校問題」「監視カメラ」「SNS」というテーマは、その年齢層にとっても興味を抱きやすいものなのだろう。

また、『青のSP―学校内警察・嶋田隆平―』には藤原竜也と山田裕貴の刑事コンビに加えて生徒役で多くの若手俳優が出演し、『レッドアイズ 監視捜査班』にもジャニーズ事務所のアイドルである亀梨和也と松村北斗が出演。『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』も元ジャニーズの香取慎吾が主演を務めるほか、SNSがテーマだけに若手俳優の出演も多そうだ。これらのキャスティングにも、「若年層も見たくなる刑事ドラマ」を目指す制作姿勢がうかがえる。

もともと寒さが増し、在宅率の上がる冬は、「家でじっくり見て、犯人、動機、トリックなどを当てたくなる」という理由から刑事ドラマが多かった。今冬も新作3、シリーズ作3の計6作も放送されるのだから、業界内で「まだまだ需要アリ」と思われていることがわかるだろう。

もし今冬の新作がそろって支持されたら、ますますオーソドックスな刑事ドラマは減り、イレギュラーな刑事ドラマが増えていくのかもしれない。刑事ドラマにそんな過渡期が訪れていることを踏まえて、新作に注目してみてはいかがだろうか。

  • 木村隆志

    コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間推計1億PV超を記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行っているほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

  • 写真Rodrigo Reyes Marin/アフロ

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