バイデン就任で始まる「コロナバブル危機」に備えよ!
“バイデン・ショック”で日本市場も大混乱 ダウ平均株価3万1000ドル超え!史上最高値はいつまで続く?
米国の株価が空前の勢いで上昇している。民主党のジョー・バイデン氏(78)が1月20日、米国の第46代大統領に就任し、さらなる金融緩和と財政出動に踏み切ることをマーケットが期待しているのだ。

「1月5日にジョージア州の上院議員選挙の決選投票が行われ、民主党が勝利を収めました。上院と下院を民主党が制したため、大型の公共投資を掲げるバイデン新政権は政策を進めやすくなります。しかも、公約の増税は棚上げしました。
こうした状況から、米国株どころか、原油も金価格も、暗号資産のビットコインさえも上昇。マーケットが諸手を挙げて歓迎している様子がうかがえます」(株式アナリストの鈴木一之氏)
バイデン氏は「国民一人当たり2000ドル(約21万円)の現金給付」を含む数兆ドル規模の追加経済対策を就任後に実施すると打ち出した。
「この現金給付で株を買う人が増えるのではないかという憶測から株式市場に資金が流れ、ダウ平均株価は3万1000ドル超えと史上最高値を更新しました。しかし、世界的な金融緩和でジャブジャブになったお金が株式市場に流れているにすぎません。実体経済は新型コロナによって深く傷ついています。いずれ、コロナが収束し、金融政策が正常化すれば、株式市場も過度の熱気は薄れていく」(証券ジャーナリストの今野浩明氏)
市場関係者が注視するのが、米国債の利回りだ。米国債の金利が上昇すれば、これまで株式市場に流れ込んできた資金が「逆回転」を始めるという。
「米国の10年国債利回りが急ピッチで上昇し、一時1.19%になりました。金利が上昇すると、これまで株式市場に向かってきた資金が債券に流れ、株価が下落する傾向があります。米国は実体経済の落ち込みを避けるため、株式市場を利用してきましたが、それも限界でしょう。バイデン氏が就任後にもう一度、大規模な追加経済対策を行ったら、それで打ち止め。次はありません。材料出尽くしとなったときが一番危険だと思っています」(株式評論家の渡辺久芳氏)
東京五輪はどうなるのか
米国が〝バイデン・ショック〟に見舞われれば、もちろん日本も無傷ではいられない。むしろ、日本の株式市場のほうが大きなダメージを受ける可能性さえある。RPテック代表で、国際金融評論家の倉都(くらつ)康行氏がこう指摘する。
「世界的に株価が下落して、投資家がリスクを回避するようになれば、比較的安全とされる円が買われ、為替は円高に振れます。これは国内の輸出企業にとって大きな逆風となるでしょう。また、菅政権の支持率が下がっていますが、これが政局に発展することも、株式市場にとっては大きな不安材料です。
さらに日本は新型コロナのワクチンの調達が米国や英国ほど進んでいません。春になってもワクチン接種が普及していなければ、感染者は増え続けますし、夏の東京五輪・パラリンピックの開催は難しくなる。五輪の中止や再延期が決まれば、国内のムードは確実に悪くなり、株価の大きな調整は避けられません。日本はこれから3月にかけて、大きな山場を迎えるのではないでしょうか」
1都2府8県に緊急事態宣言が発令され、国民の生活は困難に直面している。実体経済とかけ離れた株高が、いつまでも続くワケがない。「コロナバブル」崩壊の危機は目前に迫っている。


『FRIDAY』2021年1月29日号より
写真:アフロ