「中盤にカップル成立」令和のドラマに変化が起こった背景 | FRIDAYデジタル

「中盤にカップル成立」令和のドラマに変化が起こった背景

最近の恋愛モノはなぜ連続ドラマ中盤戦でカップル成立するのか?

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物語の途中で恋が成就した『恋はつづくよどこまでも』でヒロイン佐倉七瀬を演じた上白石萌音。今クールのドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』にも主演
物語の途中で恋が成就した『恋はつづくよどこまでも』でヒロイン佐倉七瀬を演じた上白石萌音。今クールのドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』にも主演

おそらく多くの女性が、テレビドラマのジャンル“恋愛モノ”が好きで、そして癒やされている。あり得ないシチュエーションだとは思っているけれど、苦難を乗り越えて、物語の終盤で迎える男女のハッピーエンドは胸キュンしていられる……と、通説のように思っていた。ただ最近の恋愛モノの事情は、そうでもないことに気がつく。

最近は最終回ではなく、連続ドラマの中盤にカップルが成立をして、最後まで二人が別れることはない。どうもこれがテレビドラマの今後の主流になっていくらしい。その傾向をドラマオタクの視点から探ってみることにした。

イチャコラシーンで荒んだ心を癒やされたい症候群

連続ドラマの中盤で主人公の二人の想いが通う……このパターンを近年放送のドラマで最初に気づかせてくれたのは『恋はつづくよどこまでも(以下、恋つづ略)』(TBS系)だ。当初は絶対に叶うことがないと周囲から思われていた、佐倉七瀬(上白石萌音)の片想い。それが第五話で天堂浬(佐藤健)から告白をされてカップル成立。視聴者からすると「(盛大な)一丁上がり!」だった。

七瀬が食べているパンをかじる、ジェンガに負ければ濃厚キスの罰ゲーム……。天堂からの贈られる夢のような愛情表現の連打に、火曜22時は恋愛飢餓難民の心の砦になった。このドラマ何かと天才だとは思ったけれど、まさかの新しいラブロマンスを提示していたとは、一年前には知るよしもなかった。

そして3月のドラマ終了とともに、この世は空前のパンデミックへ。

ただ日本のテレビドラマは視聴者を裏切ることはなく、制作を続ける。そこで誕生したのが『#リモラブ ~普通の恋は邪道~(以下、リモラブ略)』(日本テレビ系)だ。コロナ禍という状況をそのまま反映して、オンラインゲームで心を通わせた大桜美々(波瑠)と、青林風一(松下洸平)は第6話で結ばれている。コロナ感染が引っかかってしまい、なかなか“濃厚接触”まで進まない、二人のプリミティブな恋愛模様は癒やしだけではなく、笑いも起こしてくれた。

最終回でハッピーエンドの『ロンバケ』法則の代替わり

かつてラブストーリーといえば『ロングバケーション(以下、ロンバケ略)』(1996年)や『ラストシンデレラ』(ともにフジテレビ系・2013年)に見られる、最終回で主人公が幸せを摑んで、二人のその先は視聴者が想像していくのが王道だった。うまくいけば2時間スペシャルが組まれることはあるけれど、稀なことだ。

昔と令和二年の今で、何が違うのかと言えばまずは今、上記に挙げたコロナ禍であること。人とコミュニケーションを取る機会が減ったとはいえ、個々の性格までもが変わるわけではない。今まで通りに心癒やされる恋愛がしたい。ドラマはその溜まったストレス解消には適役だと言える。

それから今はこういう状況下ではなくても「恋人がいない」「リア友を作ることができない」という話題を、毎日のようにネットニュースで見かける。でもこの思いを共感してくれる仲間は、SNS上には存在する。『恋つづ』『リモラブ』、いずれの作品も放送中、Twitterのトレンドに関連ワードが上がっていた。

『ロンバケ』放送当時、平成の世の中はテレビ文化至上主義だった。昨夜見たドラマの感想を言い合える仲間や職場が存在したけれど、今はその井戸端会議のスペースがSNSへと変わった。そしてそこに集まるのは、悲しくもリアルなコミュニケーションを制約されてしまった私たち……。

最終回に幸せを提示しても、共有する映像が放送されていないのなら、その盛り上がりをSNSで騒ぐことができない。恋愛が進展していく方向性も、深くは知らない。そんな条件が揃ってしまうのなら“幸せの形はそれぞれ”ではなく、上記に挙げた2本のドラマのように、具体的な演出で示唆する方が親切だ。

いずれにしても肌を触れ合わせる交流に枯渇していることだけは、間違いのない現代人たち。彼らに向けた、テレビドラマの“中盤カップル成立”の新法則。これはしばらくの間、人気を呼びそうな気がする。

2021年の冬ドラマにも『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系)など、恋愛モノはいくつか放送される。どんなハッピーエンドを迎えていくのかに、注目したい。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

  • 写真時事通信社

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