「アフターコロナ」に後悔しない!35歳からの転職で考えたいこと | FRIDAYデジタル

「アフターコロナ」に後悔しない!35歳からの転職で考えたいこと

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長く続いた「売り手市場」の中でも、ミドル世代の転職は簡単ではなかった

新型コロナウイルス騒動が起きるまでは人手不足が囁かれ、人材採用のマーケットも、長く売り手市場と言われてきた。しかしそんな時期でも、実はミドルの転職は決して簡単なものではなかった。 

輪をかけてコロナ禍では倒産、経営破綻が相次ぎ、リストラ対象者の低年齢化も始まっている。自社の状況を見極めて転職を考えるミドルは、めまぐるしく変わるこの状況をどう捉えていけばいいのか。ミドル世代専門で転職コンサルを手掛ける黒田真行氏に聞く。

コロナで経営が傾いた会社はもちろんのこと、健康状態のよい企業でも中途採用が減っている(写真はイメージ)

人材採用マーケットは、この先さらに冷え込む可能性が高い

ミドル世代といえば、そろそろ中間管理職に手が届こうという年齢層だ。一般的な企業組織の場合、トップである社長はひとりで、階層が下に行くほど兵員の数が増えるピラミッド型の構造。単純に考えても椅子の数に比例して、ミドルの求人は少なくなる。

そんな中、コロナで経営が傾いた会社はもちろんのこと、健康状態のよい企業も中途採用が減っている。その理由はどこにあるのか。

「緊急事態宣言が出た4月は一般的に、新卒新人受け入れの時期です。そこに突然のリモート対応があったので、中途採用をしている場合ではなくなってしまいました。 

結果的に前年同時期に比べて4割ダウンになり、6月に若干戻ったものの、コロナの第2波、第3波でまた求人が減ってきている状況です。 

ちなみにリーマンショックのときはリーマンブラザーズが破綻して半年ぐらい経ってから本格的な危機が来ました。時差がありますので、2021年以降にさらに一段、ドンと落ちる可能性はあると思います」(黒田真行さん 以下同)

リーマンショック後、長らくなだらかな右肩上がりが続いていた日本経済。求人が増える一方、若手の人口減少も響いて労働力は足りず、外国人雇用などで穴埋めをしてきた。しかし、実状では2019年の後半からGDPはマイナスに。そこにコロナがあり、下ブレが加速した。

ヤバい空気は早めに察知し、在職中から行動しよう!

「35歳からの転職には卒業型、脱藩型、逃亡型の3つのパターンがあります」と、黒田氏は言う。今の会社としっかりと折り合い、円満退職する「卒業型」。会社に見切りをつけ、自分の可能性を求めて飛び出す「脱藩型」。そして3つめはいたたまれない現状から逃げ出す「逃亡型」で、これがもっとも出現率が高い。コロナ禍の今は、経営不振に陥った会社からの逃亡も大いにあるだろう。

「経営不振型の転職は本人の意思ではないため、充分な準備もないまま急に来ることが多いです。 “今はまだ大丈夫だけど、これから悪くなりそうだ”という場合、逃げ遅れると準備期間がなくなるので、早めに察知して動くことが大事です。辞めてしまってから転職先を探すと、あとがないから精神的にも追いつめられます。基本的には今の職場を辞める前に活動を始めるべきです」

自分は会社に勤めるしかないと決めてかかるのは危険

そもそも転職や独立というのは手段にすぎず、どうしたら自分が気分良く働いていけるのか、どうやって生活をしていきたいのか、ということが大前提として存在する。しかし、長く一社で働いてきたミドル世代には、その大前提を深く考えない嫌いもあると言う。

「特に40代以上の方は、会社に雇われるしか生きる場所がないと思い込みすぎているところがあります。 

求人はどっさりあるわけではないので、雇われることだけに賭けていると、何百社受けても通らないという現実や家族からのプレッシャーに押しつぶされ、極論を言うと自殺に繋がる可能性もあります。 

そこまで思い詰めなくても、手段はもっといろいろあるので、“転職ありき”という考え方に固執しなくてもいいと思います」

今は〈ココナラ〉〈タイムチケット〉〈ランサーズ〉といった、スキルシェアのサービスだってある。今の会社を辞める前に、そういう「店舗」に自分のスキルを並べてみて、買い手がつくかどうかを確かめるのも賢い方法だ。

「例えば経理をずっとやってきた人なら“中小企業の繁忙期の月次決算などを土日にお手伝いします”と出してみるとか、“新人教育が得意です”、“パワーポイントで資料を作成します”など、大したスキルではないと思っても並べてみましょう。それを求めている会社があるかもしれません。売れなければ売れないで対策を考えられますし、何もしなければ何も始まりません。まずはそういう動きをしてみるというのは大事です」

1社から1ヵ月10万円もらって5社と契約すれば、それで月収は50万円になる。確かに丸抱えで「年収600万円で雇ってください」と1社に交渉するより、小分けにして売った方が需要はあるかもしれない。

転職を考えるミドルが身につけるべき武器。それは、異業種でも対応可能な「ポータブルスキル」

それでもどこかの会社に雇ってもらいたいと思った場合、多くの人は資格を身につけて武装しようとするが、実は資格取得はあまり重要ではないそうだ。

「絶対に資格が必要な建築士とか薬剤師、医師などは別ですが、企業の人事や経営者は、まず最初に資格を問うことはほとんどありません。資格があるからといって、成果を出せるかどうかはわからないので」

また、他社でどれほど活躍したといっても、自分の会社には関係のない話。要は入社後、投資した人件費以上に利益を出してくれるかどうかを、その人の経験から憶測しているだけなのだ。

では、身につけておくべき大切なものとは一体何かというと、ズバリ「ポータブルスキル」に尽きるという。業種や職種が変わっても、持ち運び可能な能力。黒田氏は、その好例を話してくれた。

「わかりやすいケースとして、コールセンターで健康食品のクレーム対応をやっていたスーパーバイザーが、大型量販店の新規店舗開発責任者として採用された例があります。 

その量販店は新しい店を出すたびに、近隣住民の納得をどうとるかに悩んでいました。店舗開発の経験がまったくなくても、クレーム処理能力が近隣対策に活かせるということで転職、活躍されています。 

その仕事のいちばん大事なポイントは不動産の目利きでもなく、ビルの家賃相場を知っていることでもなく、近隣住民の納得を得る力なのだと因数分解したときに、そういうマッチングが成立します」

ただでさえ椅子の数が少ないミドルの転職。同業他社にこだわっていると、椅子を得る可能性は低くなるばかりだ。さらに業種そのものが傾いていれば、自ら泥舟に乗るハメに。数を打つには自分のなかで制約を設けすぎないこと。そして、自分のスキルを自分自身に聞いてみることが大切なのだ。

最後に、黒田氏の著書『35歳からの後悔しない転職ノート』(大和書房)より、自分が勤めている会社の未来予想図を知るためのワークの一部を紹介しよう。書き出すことで、自分の現在地が見えてくるはずだ。

黒田真行(くろだ・まさゆき) 1965年生まれ。ルーセントドアーズ株式会社代表取締役。ミドル世代専門転職コンサルタント。関西大学法学部卒業後、株式会社リクルートに入社。関西版「とらばーゆ」、「フロム・エー」、転職サイト「リクナビNEXT」等の編集長時代に培った豊富な取材経験から、転職活動のノウハウや日本の中途採用市場に精通する。2014年、「ミドル世代の適正なマッチング」をめざし、ルーセントドアーズ株式会社を設立。『転職に向いている人 転職してはいけない人』(日本経済新聞出版社)、『40歳からの「転職格差」』ほか、著書多数。

「会社の未来を見る」『35歳からの後悔しない転職ノート』(大和書房)より

  • 取材・文井出千昌写真アフロ

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