木村拓哉が三度覚醒した「教場2」ラストシーンとパート3への伏線 | FRIDAYデジタル

木村拓哉が三度覚醒した「教場2」ラストシーンとパート3への伏線

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『教場』シリーズで白髪姿の警察官役を演じた木村拓哉。今までのヒーロー路線とは違う姿を見せた
『教場』シリーズで白髪姿の警察官役を演じた木村拓哉。今までのヒーロー路線とは違う姿を見せた

もはや元旦の風物詩となりつつある『相棒 season19 元旦スペシャル』(テレビ朝日系)に始まり、2日の『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』(TBS系)など数々の新春スペシャルドラマが今年も新年を彩ったが、正月を大分過ぎた今も1月5日に放送された『教場2』(フジテレビ系)のラストシーンの衝撃が忘れられない。

「‘13年にミステリー界を席巻した警察学校を舞台にした長岡弘樹の同名小説が原作。昨年の正月、二夜連続でフジテレビ開局60周年特別企画としてファン待望の映像化を実現。木村拓哉が白髪姿の冷酷な教官・風間公親を演じ、新境地を切り開き、前編・後編とも平均視聴率15%台を記録しました。

鋭い観察眼を持つ風間が問題を抱える生徒たちのわずかな変化も察知して徹底的に追い詰める姿は、今回もまったくブレていない。裏に大ヒットアニメ映画『天気の子』(テレビ朝日系)などがありながら、並み居る特番を抑えて2話とも世帯平均視聴率13%台は大したものです」(ワイドショー関係者)

しかし衝撃を与えたのは、本編の内容ではない。エンドロール後に突然現れた、まるでリドリー・スコット監督の映画『ブレードランナー』を思わせる”5分間”の惨劇。このシーンによって「教場」の闇が白昼の下に晒された。

「降りしきる雨の中、ネオン管の怪しい光の中で繰り広げられる暗闘により、風間は右目だけでなく心をも失う。これこそ原作『教場0』で描かれた風間公親の原点。『教場』シリーズは、いよいよこれから風間を取り巻く闇に挑む。来春の『教場3』では、壮大な伏線回収が期待されます」(前出・ワイドショー関係者)

第3弾の可能性について、長年木村とタッグを組んできた中江功監督は「次回への伏線は、はってみました」と早くも発言。木村演じる風間がなぜ右目を失ったのか、そして「私も警察に恨みだらけだ。命を捨ててでも、この組織に報復したいほどな」と話す風間の言葉の真意は、一体どこにあるのか。「教場」は、今やっとスタート地点にたったばかりだ。

思い返せば、木村拓哉にとって「教場」シリーズほどチャレンジングな役柄はない。

「‘18年、主演する連ドラ『BG〜身辺警護人〜』(テレビ朝日系)でアクションシーンの傍、木村は中年ボディーガードの悲哀を演じてみせ、注目を集めました。『教場』では、さらに一歩踏み出して、”白髪頭に義眼”といったビジュアルに身をやつし新春のスペシャルドラマに挑んだ。そこには、これまで築いてきた”キムタク=ヒーロー”といった自画像を、みずから木っ端微塵に破壊するカタルシスがありました」(制作会社プロデューサー)

そこまで思い切ることができたのは、倉本聰脚本のドラマ『北の国から』(フジテレビ系)を手掛けた杉田正道監督の下でドラマのイロハを覚え、木村と数々のヒットドラマを作ってきた、師とも仰ぐ中江功監督との信頼関係があったからだろう。

‘89年。17歳になったばかりの木村拓哉は蜷川幸雄氏演出の「盲導犬」で初舞台を踏む。声の出し方すらわからない木村は戸惑い、10日間も続く理由のわからないダメ出しにボロボロになった。

「バカヤロー!こんなところまで来て、アイドルの芝居をするな」

と蜷川さんに怒鳴られながら、戯曲を手掛けた唐十郎が描く”魂の自由”を貫こうとするフーテンが一体どんなヤツなのか、もがき苦しみながら掴み取ってゆく。あまりの苦しさに、17歳の木村拓哉はトイレに籠城して泣き腫らし、ストレスで白髪も生えたと言われる。

本番が終わり、客席から湧き上がる喝采を初めて目にした時、木村拓哉の中に”役者魂”のようなものが宿ったのかもしれない。

そんな木村を再び大きな試練が襲ったのは、‘16年。SMAP解散は日本中に衝撃を与え、木村自身が非難の矢面に立たされた。その最中、木村は海外でも高く評価される鬼才・三池崇史監督とタッグを組み映画『無限の住人』に取り組んでいた。

「木村演じる万次は”血仙蟲”を埋め込まれ、不死身の肉体を手に入れた用心棒。三池監督は『不老不死の死なない男と、永遠にトップアイドルとして生きなければならない木村とはリンクする。人は殺さないけど木村拓哉も”無限の住人”』と話せば、木村自身も『毎日エネルギーを全て出し切らせてくれる。くたくたになれるキャラクターで眠ることもできた。非常にバランスのとりづらい私事があった中、この役と作品がなかったら厳しかった』と当時を振り返っています」(制作会社プロデューサー)

映画の冒頭に登場する荒くれ者に囲まれながら大立ち回りを演じる100人斬りのシーンは、特に目を惹かれる。死闘を繰り返し打撲や切り傷に加え、右膝の靭帯損傷を抱えながら木村は撮影に臨み、カットがかかるとその場に崩れ落ちた。木村の脳裏にはその時、一体何がよぎっていたのか。

日曜劇場『グランメゾン東京』(TBS系)で共演した沢村一樹は、「窮地に立たされた時からが木村拓哉」と木村の凄みを評している。人は生と死の間で覚醒する。木村拓哉は50歳を前に、三度目覚めようとしているのかもしれない。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • PHOTO川上孝夫

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