米国在住の専門家が緊急提言「ワクチンについて知ってほしいこと」 | FRIDAYデジタル
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米国在住の専門家が緊急提言「ワクチンについて知ってほしいこと」

米在住のウイルス・免疫学の専門家が緊急提言「あと1年を乗り切る」方法

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世界各国で接種が進む新型コロナワクチン。効果は?安全性は?…日本はワクチンは入手できるのか。情報が錯綜しているなか明るい展望も AFP/アフロ

新型コロナウイルス(以下新型コロナ)のワクチンが「とても期待できる」らしい。感染収束までうまくいけば「あと1年」という、米国国立研究機関の博士研究員で、病理学・ウイルス学・免疫学を専門に研究をしている医師の峰宗太郎氏に話を聞いた。

新型コロナのワクチンは「効果は9割超えの超優等生」

「開発されたばかりの新型コロナのワクチン、この「能力」は非常に高いです。昨年11月末に臨床試験の最終報告が出てくるまでは、そこまで期待していなかったのですが、ファイザー社とモデルナ社のワクチンの「発症抑制率」(ウイルスを浴びても発症しなくなるリスクの比率)が、94~95%。12月にはアメリカFDAに使用が承認され、1月20日現在、すでに世界で1200万人以上、イスラエルでは全国民の28%以上が接種しています。

これらのワクチンは2回打たないと試験通りの効果はないのですが、イスラエルでは1回目の接種をした人からすでに30%以上、感染率が下がり始めていると報告されています。これは、ワクチンとしてかなり『優等生』。すばらしい効果といえます。

今、各国で接種が進んでいて、G7(主要7カ国)で接種が始まっていないのは日本だけです。私自身はアメリカのメリーランド州に住んでいて、1月中には接種できる予定です」

ワクチンは「危険」なのか

とはいえ日本は、フランスと並んで「反ワクチン」の国民感情が強い。また、副反応など安全性を懸念する声も聞かれる。

「YouTubeで公開されている臨床試験の治験の最終報告やFDA承認の審査の様子を見ても、ファイザーもモデルナも、とてもよくできたワクチンだと思います。現状、これまでのワクチンと比べても『安全性が高い』と言い切っていい。現在世界で1200万人以上が打っていて、アナフィラキシーというアレルギー反応は重いことがありますが、それ以外は軽度の副反応で、命に関わったり後遺症が残るようなものではないのです」

このワクチンを「2回接種」をすれば、感染を防げるのかという疑問もある。

「接種したワクチンの効果がどれくらい続くかはまだわかりませんが、臨床試験の追跡結果を見ている限りでは、接種から3~4か月経っても効果の指標である抗体価がまったく下がっていません。通常、ワクチンの効果は急激には下がらず、ゆるやかに減っていくことが多いので、少なくとも半年、1年は効果が消えることはなさそうです。かなりコストパフォーマンスも良いですし、これは絶対に打つべきだなと思っています」

感染症の流行を抑えて終息させるには、「集団免疫」が重要だ。国民の6割以上がワクチンを接種し、自然感染後の回復者を含む免疫保持者が多くなって「集団免疫」ができれば、感染は終息(収束)の方向に向かうという。

「日本は先進国のなかでもとりわけ『ワクチンへの信頼度』が低いのですが、仮に多くの方が接種を希望し2月下旬から接種が始まったとして、国民の6~7割がワクチンを打つのにどのくらい時間がかかるのかが問題です。それだけのワクチンを遅滞なく集められるのか。現状、年内に約7200万人分が供給される見通しといいます。長年、感染症を含む基礎研究を蔑ろにしてきた日本には、素早く確実に国産のワクチンを作る研究力と製薬会社の体力が足りません。現時点では海外の製薬企業から輸入するしかないのです」

重症化は「ロシアンルーレット」なみの「運」で決まる

「新型コロナに感染したとき、どんな人が発症し、だれが重症化するのか。高齢者、基礎疾患のある人が高リスクといわれています。しかし、個人レベルでみると、じつはほとんど『運』といっていい。

いわば、装弾数が24発くらいあるロシアンルーレットみたいなもので、健康な30代なら、入っている弾が『1発』だけれど、基礎疾患があると3倍の『3発』に。年齢が上がるとさらに2倍に…というイメージです。だいたい50代くらいから急激に重症化率は上がって、65歳あたりで高止まりします。だから65歳以上になれば、80代の方と同じくらい危ない。逆にいうと、80歳でも65歳でも、年齢による重症化のリスクは大きくは変わりません。

糖尿病や高血圧、心疾患、呼吸器疾患、高度肥満(BMI30以上など)があると、またさらに『弾』が増え、ロシアンルーレットの『あたり=重症化』率が上がります。けれども、みんなが重症化するのではなく、弾に当たるのは『運』としかいいようがない。

若くて基礎疾患がなくても、感染したら必ず『弾』は入っているので、重症化する可能性はあるんです。重症化するかどうかは完全に運です。だれも『絶対大丈夫』ではない。だから、新型コロナに関してはロシアンルーレットに参加しないこと、つまり『感染しない』ことがなにより重要です」

どうすれば「感染しないか」を考えるべき

「各感染症の病原体がどれだけ感染しやすいかは『ひとりの感染者が何人に感染させたか』という『再生産数』で表します。『基本再生産数』は、すべての人に免疫がなく、なんの対策も行われていないときの数で、基本となる病原体の性質によるものです。『実効再生産数』は、ワクチン接種や外出規制などの対策が行われている状態での再生産数です。新型コロナの基本再生産数は約『2.5』。1人が平均2.5人に感染させています。実効再生産数は流行状況で変わり、この数値が1未満になると、流行は収束していきます。今、東京は『0.9』前後。1を切っていけば拡大ではなく収束に向かいます」

日本全国の実効再生産数は、1月11日が「1.54」。1月22日現在で、沖縄県、鹿児島県、大分県、千葉県、埼玉県など「1」を超えている地域がある。

「大事なのは、総合的かつ基本的な感染対策の中身と、それを社会が、人々が守れているかです。

政策だけを取り上げて、他国と比較しても意味がないんです。例えば私の住んでいるメリーランド州モンゴメリ郡では、未だに、公共交通機関や店舗内でのマスクの着用義務はもちろん、レストランの屋内営業一切禁止、オフィスも限られた場所や時間以外はほぼ閉鎖なんです。ものすごく強い規制をかけているんですね。でも日本よりずっと感染者が多い。

理由はなかなか判然としないのですが、ホームパーティをする人がいるなど、対策に穴があるからでしょう。強く規制していても、それが本質的に守られなければ意味がないですよね。日本の規制は、アメリカから見ると『ゆるゆる』で、GoToまでやりましたが、欧米に比べると感染者数はずっと少なかった。そこそこコントロールできていたんですね。とくに日本の保健所の働きは抜きん出ています。もっと評価されていい」

保健所の対応が「限界」に近づく一方、発症者、濃厚接触者だけでなく「だれでもPCR検査を」と、拡大を求める声も大きい。

「PCR検査は、症状のある人や濃厚接触者に遅滞なくしっかり行い、隔離や治療につなげるために大事です。そのためのキャパシティの拡大や維持は必要ですが、PCR検査の対象を無計画に拡大したり、『陰性証明』を要求することに意味はありません。偽陰性の可能性もありますし、検査の後に感染することだってありえますよね。陰性だから大丈夫と油断するのも大変に危ないでしょう」

報道に惑わされず、基本を守って身を守る

日々の陽性者数や「何曜日として最大」などの「数字」で危機感をあおるような言説も少なくない。今、何を信じていけばいいのか迷う人も多いだろう。

「テレビをはじめメディアにはいろいろな『専門家』が登場して未来の予測的な発言をしていますが、根拠の薄弱な発言が多すぎます。未来の予測は極めて難しいものです。過剰な報道にあおられて、やらなくていい対策をやり続けたり不要なものを買ったりして消耗している人もたくさんいるでしょう。

しかし新型コロナの対策は、『3密を避ける(換気や咳エチケット)、マスクを着ける、距離を保つ、手を洗う』という基本が肝心。やはりこれらが守られていない場所で感染が拡大していることが多いのです」

自分と周りの人の身を守るためにできることは、じつは難しいことではない。

「この先、ワクチン接種が進んでも、流行が続いているうちは、感染対策をやめることはできません。感染症に『これで解決!』という特効薬はないのです。多くの人がワクチンを打っても、予防策の重要性は変わりません。

ワイドショー的な『分析』や突飛な『対策』に飛びつきたくなる気持ちや不安はよくわかりますが、それでは延々と『情報』を探し回らなければいけない。実際には、すでに周知されているような、単純で基本的なことが妥当であることが多いのです」

基本を守る。飛沫感染や接触感染を防ぐには、基本の予防策が最も重要という。

「あと1年」乗り切るために

「呼吸器感染症の予防法は、①栄養と睡眠をしっかりとる ②手指衛生の徹底 ③咳エチケット ④3密を避ける ⑤体調不良者と接触しない ⑥体調不良なら外出しない ⑦マスクの着用 ⑧充分な換気 ⑨うがいをするなら水でしっかりと。

この9項目。一見、多いですが、どれも基本中の基本で単純なことばかりです。余計な『投資』をする必要はどこにもありませんよね。

これらを守りながら、情報をしっかり集め、理解し納得したうえで、可能になったらワクチンを接種する。当たり前のことを粛々とやっていけば、新型コロナの感染は予防でき、流行は抑えられます。今夏の東京オリンピックは国内外に感染を広げる可能性もあり非常に困難でしょうけれでも、ワクチン接種が始まれば流行はよりコントロールしやすくなるはず。おそらくは、願わくば、あと1年。基本を守り、メンタルに気をつけて乗り切りましょう!」

峰宗太郎:医師(病理専門医)、薬剤師、医学博士。京都大学薬学部、名古屋大学医学部、東京大学大学院医学系研究科卒。国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所等を経て、米国国立研究機関博士研究員。専門は病理学・ウイルス学・免疫学。ワクチンの情報、医療リテラシー問題にも明るい。

  • 取材・文和久井香菜子写真AFP/アフロ

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