水中ドローンで「多摩川・荒川の中」を撮って見えたヤバい現実
4Kカメラを搭載し、アームでモノをつかむことも可能。1〜4時間にわたり海や川を自由自在。水深300mの世界を探検できる機種も
いまや空だけではなく、水中でもドローンは活躍し始めている。
人が潜れないような深海へ行き、遠隔操作で回収や探索をこなす「無人潜水機」は’60年代から開発が進められ、主に軍事や産業用に使われていた。それが「ドローン」として一般向けにも製造が始まったのは、最近のことだ。
「’17年に北京のパワービジョン社が発売した『パワーレイ』が、一般向けに作られた最初の水中ドローンと言えます。水深30mまで潜れ、4K動画撮影もできる画期的な商品でした。’19年になると、さらに数社から普及につながるような機体が続々と投入されて今に至ります」(一般社団法人『日本水中ドローン協会』の井東恭彦事務局長)
最新機種では性能も格段に上がっている。6つないし8つのスクリューを使って水中で前後左右自在に動き回り、水深300mまで潜れる機種もある。深海を強力なライトで照らし、アームでモノをつかむこともできる。売れ筋商品の価格帯は20万~30万円台だ。
「水中撮影や、釣りをする際の魚影の確認に使っている人もいます。産業用途では漁網、船底、水中にある構造物の点検が多い。航空法の適用を受ける空のドローンと違って水中ドローンにはまだ明確なルールがないため、使用する場所に関係する法令を遵守したうえで、航行する船舶や漁場に近づかないなどのマナーを守れば、比較的自由に使えるのも魅力です」(同前)
そんな魅力あふれる「水中ドローン」を記者もさっそく入手! 水中は電波が届きづらいため機体と制御器を長さ100mのケーブルで接続、ケーブルが届く水深100mまで潜れる機種だ(2枚目写真)。
リモコンにスマートフォンをセットしてカメラに映る映像を見ながら操作スティックを動かすと、スルスルと水中へ潜っていく。慣れれば操作は難しくない。
荒川や多摩川など、首都圏の主要な川を撮影してみると、川底はゴミ、ゴミ、ゴミ……。レジ袋や空き缶などが散乱し、タイヤやバイクの車体も複数あった。陸からは見えなかった「首都圏河川の現実」が一目瞭然である。
一方、伊豆の海では、青や金色に輝く魚たちが群れを成して泳ぐ美しい映像が撮影できた。ダイビングをしないと見られなかった海中の風景を簡単に記録できるのは感動ものだ。
遊びに仕事に、水中ドローンは工夫次第でいろいろ使えそうだ。
横浜の用水路
伊豆・川奈
荒川
多摩川
『FRIDAY』2021年2月5日号より
- 取材・文・撮影:桐島 瞬(ジャーナリスト)