コロナワクチン接種は滞りなく進むのか…浮かぶ「ある懸念」 | FRIDAYデジタル

コロナワクチン接種は滞りなく進むのか…浮かぶ「ある懸念」

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「情報が何もない……」困惑する病院関係者

河野ワクチン担当大臣の任命、ワクチン接種訓練など、本格的に動き出した感があるコロナワクチン接種への準備。だが、実情はすべての業務を各自治体に丸投げの状態だという。

PCR検査で保健所に丸投げし“目詰まり状態”を招いた失敗がまったく生かされていないと語るのは医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師。東京オリンピックどころか、来冬の感染拡大を回避できない可能性もあると警鐘をならす。 

1月22日、ドイツ南部の中規模都市ルートヴィヒスブルク市(人口9.3万人)にオープンしたコロナウイルスワクチン接種センター。この大きな施設でも、ワクチンを接種できるのは1日あたり約80人だけだとか(写真:AFP/アフロ)


見えない一般の人向けのワクチン接種スケジュール

政府は新型コロナワクチンの接種を2月下旬から国立病院などで約1万人の医療従事者に先行接種を行い、続けて約370万人の医療従事者に接種するとしている。だが、それ以降の高齢者、基礎疾患のある人、そして、一般の人への接種スケジュールは曖昧なままだ。

ファイザー社と基本合意していたという供給量も、当初は6月までに1億2000万回分(新型コロナウイルスワクチンは1人2回接種するので6000万人分)が供給される予定とされていたが、1月20日の正式契約では年内に1億4400万回(7200万人分)となり、接種スケジュールの変更を余儀なくされている。

スケジュールさえはっきりしない状況の中で、接種の準備に奔走しているのが各自治体や病院関係者だ。

新型コロナの感染第一波からコロナ患者を受け入れていた都内の病院関係者によると、東京都から自院で接種できるかどうか、ファイザー社のワクチンを‐70度で保管できるフリーザーを希望するかなどを問い合わせるアンケートが届いたのは1月上旬。その病院では、自院での接種希望、フリーザー希望などの旨を返信したが、その後連絡はなく、どのような準備が必要なのか、まったくわからないという。

「ワクチンの取り扱い方もわからない。まだ日本では正式承認されていないので、メーカー側も情報を出せないのだと思います」(病院関係者) 

日本のファイザー社のサイトには、保管方法、ワクチン接種までの手順が紹介されているが、まだ未発表の部分も多い。手順によっては確保しなければいけないスタッフの数も変わってくる。

しかも、フリーザー不足も懸念され、フリーザーを希望していても、ドライアイスを使う簡易型の保管庫が届けられることも考えられるという。簡易型の保管庫はワクチンの保管期限が限られる上に、ドライアイスから発生する炭酸ガスを考え換気が効いた専用の部屋も必要になる。このように少ない情報の中、さまざまなケースを考えて、準備することが求められている。

また、このような拠点病院には個人クリニック等の医療従事者が接種を受けに来ることも想定される。ちなみに東京都だけでも医師・薬剤師は約8万人(日本医師会)、看護師は約10万人(衛生行政報告例 平成26年末より)だ。東京都からは1日100人以上の接種が求められているが、「こんな状態で1日100人できるかと言われても……」と、困惑は隠せない。

他の先進国から3ヵ月遅れたツケは大きい

国民の7割以上の接種が理想とされる今回の新型コロナウイルスのワクチン。このような状況を考えると、インフルエンザのように、近くの病院で簡単に接種というわけにはいかない。

「一般の人に接種するためには、ソーシャルディスタンスを保ちながら、待つ場所、接種する場所が必要な上に、副反応が出ないか経過観察をするため15分以上待機してもらうスペースも確保しなければなりません。

院内に感染者を入れないためには外にテントなどを設営する必要がありますが、すでに感染予防のため駐車場のスペースにプレハブで検査室を立てている状態。スタッフもコロナ患者さんや、ほかの患者さんのケアで手一杯。とても一般の人のワクチン接種まで受け入れる余裕はありません」(病院関係者)

となると、3月からの高齢者をはじめとする一般市民の接種は自治体が場所やスタッフを確保することになるが、いったいどれだけ場所を確保しなければいけないのだろうか。

「新型コロナウイルスワクチンは、1人2回接種しなければなりません。例えば、人口5万人の町だと、10万回接種。3月から始めて、感染が広がる冬(11月)までに仮に250日と考えて、それまでに終わらせるとすると、1日400人に接種しなければなりません」(上昌広氏) 

世田谷区の人口は約92万人。250日で終わらせると考えると、1人2回接種しなければならないので、1日7360人に接種しなければならない。接種の対象となるのは、16歳以上と考えても、かなりの人数になる。インフルエンザのワクチンを打つときも問診票を記入したり、医師からの説明などに接種するまえに5分ほど時間がかかっている。

新型コロナウイルスワクチンは、これまでにないワクチンということもあり、問診票に書かれる項目も、インフルエンザより多くなるかもしれないし、副反応に関する質問や説明も多くの時間が必要になるだろう。 

日本では、ようやくワクチン接種訓練が始まったばかり。写真は1月27日に行われた川崎市でワクチン接種訓練の様子

11月ぐらいまでに人口7割の接種を終えないと、来冬も感染拡大が続く可能性

「国はすべて自治体に丸投げしているんです。PCR検査ですべて保健所に丸投げしたときと同じことを繰り返そうとしている。人口が少なく、地域のコミュニティが緊密なところはスムーズに接種できるかもしれませんが、人口の多い大都市で、自治体だけが主体になって行うのはむずかしいと思います」(上昌広氏)

今のところ、住民票がある自治体でのワクチン接種が基本になっているが、

「自宅と職場が離れている場合、仕事を休んで接種しに行く人がどれだけいるか。

このような施設は人が多く集まるところで行うのが常識です。スタジアムやショッピングモールを半年以上借り切るためには、国が主体となって契約をしなければいけないことも多いはずです。米カルフォルニア州では、休園となっているディズニーランドや大リーグのスタジアムも接種会場になっているそうです。

そのようなことをいっさいせず、自治体に丸投げしている。そんな国は先進国では日本だけです」(上昌広氏)

接種会場に入ったら、検温して問診票に書き込んでもらい、接種、その後経過観察……このような一連の流れをスムーズに行うのもたいへんだ。自治体に任せるにしても、早めにオペレーションマニュアルのようなものは国が作るべきではないかと病院関係者は言う。

「ワクチン接種の目的は、人口の一定数の割合が免疫をもち、ほかの人に感染させる機会が減る『集団免疫』という状況を作り出すこと。新型コロナウイルスでは、7割ぐらいが集団免疫に必要と言われていますので、新型コロナウイルスの封じ込めるためには人口の7割以上のワクチン接種が必要です。

次の冬が来る前に抑えきってしまわないと、またコロナは大流行します。それができるか、できないかにすべてかかっています」(上昌広氏)

 

上昌広(かみ・まさひろ) 医療ガバナンス研究所理事長。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より現職。著書に『日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか』(毎日新聞出版)など。

  • 取材・文中川いづみ写真アフロ

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