難演技に挑む綾瀬はるかと高橋一生『天国と地獄』が絶好調なワケ

綾瀬はるか（35）と高橋一生（40）のW主演ドラマ『天国と地獄～サイコな二人～』（TBS系）が大好評を博している。初回視聴率は、昨今では珍しい15％越えの16.8％。第二回も14.7％と非常に高い数字を記録している。

物語は、セクハラと戦いながらも手柄を立てようと努力を惜しまない女刑事・彩子（綾瀬はるか）と、サイコパス殺人の疑いをかけられている会社社長・日高（高橋一生）の魂が入れ替わってしまうというもの。二人は協力して日高（中身は彩子）の逮捕を阻止しようとする。その過程で、果たして日高は本当に犯人なのか、二人が入れ替わったことには意味があるのか、といった疑問が生まれてきて……。

そんなストーリーの面白さはさることながら、高視聴率の一因は、心が女性になってしまった日高を演じる高橋一生の演技力にもあるようだ。「高橋一生が本当に綾瀬はるかに見える！」「入れ替わった一生さん、紛れもなく最高です。日高が犯人であってほしくない～」など絶賛コメントが溢れ返っている。

入れ替わりもの作品といえばこれまでも多数作られてきており、大ヒットしているものは多い。そう聞くと、ヒットを狙える安定の題材と思いがちだが、ドラマウォッチャーの芸能ライターは「そうとは限らない」とクギを刺す。

「入れ替わりものは役者の演技力に依存するところが大きいため、実は意外と危険な賭けの題材でもあるのです。それが男女の入れ替わりとなるとなおさら難しく、それゆえ同性同士の入れ替わり作品に比べると、意外と多くは作られていません。そういう意味では今回の『天国と地獄』は、綾瀬さんと高橋さんという奇跡のコラボレーションを実現できた時点で、勝ったも同然だったと言えるかもしれません」

男女入れ替わりの難しさ

意外と難しい男女の入れ替わりもの。そこで、成功した作品にはどのようなものがあるか教えてもらった。

「やはり一番は、何といっても映画『転校生』（1982年公開）でしょう。かの名監督、故・大林宣彦さんが、若かりし頃の尾身としのりさんと小林聡美さんを抜擢して作った映画。入れ替わりといえば階段から転げ落ちた瞬間に起こる、というのが今や定番ですが、それもこの映画が元祖です。

当時はまだまだ男性は男らしく、女性はおしとやか、というのが当たり前の時代だったので、メソメソする尾身さんをがさつな小林さんが叱咤する、そんな男女逆転ぶりがめちゃくちゃ面白かったものです。一方で入れ替わりによって生まれた二人の恋心が切なく、見終わった後は胸がキュンと絞めつけられるような心地よい余韻がある。

この映画は公開時こそそこまで注目されなかったのですが、テレビでのロードショーで放送されると大絶賛され、長く愛される一作となりました。この後の小林さんと尾身さんの活躍ぶりを見ても分かるように、二人の演技力なしではこのロングヒットはあり得なかったでしょう」

もう１つ挙げてくれたのが、今をときめく新垣結衣（32）の隠れた名作とも言われる『パパとムスメの七日間』（2007年／TBS系）だ。

「舘ひろしさん（70）演じる父親と、ガッキーこと新垣さん演じる高校生の娘が入れ替わってしまうというもの。オロオロする女子な舘さんと、偉そうなオヤジ・ガッキーがとにかくかわいくて面白くて、平均視聴率13.9％と好評を博しました。

ただ『転校生』と同様、この作品も入れ替わりの面白さだけでなく、断絶しがちな父親と思春期の娘の歩み寄りがしっかり描かれていて、見ていて心温まるものがありました。かの有名な男女の入れ替わりアニメ映画『君の名は。』もそうでしたが、入れ替わった先にどんなメッセージが込められているのか。

やはりそこが丁寧に描かれていなければ、大ヒットにはつながりません。そういう意味では、『天国と地獄』もただの入れ替わりをスパイスにした事件解決もので終わらないことを願っています」

あらたな男女の入れ替わり作品の代表作となるか、それとも……。今後のストーリー展開に多いに注目していきたい。