『ボス恋』菜々緒、ヒラからファッション誌編集長へ大躍進の歴史 | FRIDAYデジタル

『ボス恋』菜々緒、ヒラからファッション誌編集長へ大躍進の歴史

もはや「菜々緒」は一つのジャンルとなった!

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2017年11月、東京銀座に設置されたオメガの「東京五輪カウントダウン時計」の前で挨拶する菜々緒 写真:共同通信社
2017年11月、東京銀座に設置されたオメガの「東京五輪カウントダウン時計」の前で挨拶する菜々緒 写真:共同通信社

今クールのTBS火曜22時枠のドラマは『オー!マイ・ボス!恋は別冊で(以下、ボス恋略)』が放送されている。この放送枠、いつの間にか胸キュンラブストーリーが多く並ぶようになり、女性視聴者の癒やしの園になっている。

今回の『ボス恋』ももれなく、主役の鈴木奈未(上白石萌音)と宝来潤之助(玉森裕太)の間に恋が始まりそうなムードだ。ハートウォーミングな物語の向こうに、何かすごい威圧感を感じる……と思ったら、そこには菜々緒が演じる鬼上司・宝来麗子の姿があった。

『ファースト・クラス』で腰掛け編集部員だったのに……

“人並みに生きることだけをモットーにしていた鈴木奈未が就職したのは、超一流ファッション雑誌『MIYAVI』の編集部。ここで奈未は編集長・宝来麗子の雑用係として働く。人並みという言葉からはほど遠く、朝から晩までこき使われる日々。そんな中で出会ったのは麗子の弟でもある、カメラマンの宝来潤之介。実は御曹司でイケメンという好条件の潤之介と自分では釣り合わないと先に進めないと思っていたけれど……?”

ドラマ内で編集部員が麗子のことを「サイボーグだ!」と噂をするように、編集長の存在感がすごい。ラブストーリーであることを忘れさせてしまう、編集部員へのキツい態度と、セリフの連打だ。

「2ヵ月後に『MIYAVI』を創刊し、半年で発行部数30万部を実現します。あなたたち(編集部員)がここにいるのは結果を出すため。結果を出せない無能な人間は必要ありません」

「“人並みでいい”なんて言えるのは、平均以上の能力やステイタスのある人間が使える言葉」

「“人並み、人並み”って言うなら、まずは人並みの責任を取ったら?」

感情はほぼ表に出さず、売り上げ記録を作ることだけを虎視眈々と考えているのが麗子であり、ビジュアルは菜々緒である。言うまでもないけれど、身長172センチ、9頭身ボディを誇る人気女優だ。

第一話の放送当初、SNSでは人気映画『プラダを着た悪魔』と設定が似ているとSNSのトレンドに上がった。映画は女性ファッション雑誌の編集部を舞台に、悪魔のような編集長から部員への要求が続いていたので、確かにうなずける。でももう一つ、読者に思い出してほしい作品がある。それが2014年に放送された『ファースト・クラス』(フジテレビ系)だ。今から7年前のドラマに、実は菜々緒がイチ編集部員として出演していた。

主演は当時、人気絶頂だった沢尻エリカ。田舎から上京してきた主人公・吉成ちなみが、女性ファッション雑誌で成り上がっていくまでを描いたドラマだ。この作品から“マウンティング”という言葉が流行したほど、女同士のプライドのぶつかり合いが繰り広げられていた。

ここで菜々緒が演じていたのは川島レミ絵という、コネ入社の腰掛け社員。ただ当時から、若手女優陣の中でも存在感は別格。ちなみにジリジリと詰め寄りながら、心の中で罵詈雑言をひたすらつぶやく様子が実物だった。

ドラマ上のことではあるけれど「たったの7年間で編集部員から編集長への大出世か……!」と、しみじみ。

女優枠を超えて『菜々緒』という一つのジャンルに

この7年間で、役だけではなく自身も着実に進化をしているのは、止まることのない露出を見ていれば一目瞭然。日本人離れをしたスーパーボディをキープするために、日常から努力をしていることはバラエティ番組でも時折、本人が紹介している。ハードなトレーニングに加えて、BCAA(必須アミノ酸)を毎日3リットル摂取していると聞いたことも。

努力の結果、作られたあのボディと肌のきらめきは、普通の女優でさえも横に並ぶと違いが出る。例えば『ボス恋』で並ぶのは身長152センチ、宮崎美子によく似ていて、どこか垢抜けない雰囲気の上白石萌音。『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(関西テレビ、フジテレビ系・2015年)では主演の木村文乃と並ぶと、確かに見た目の違いがあった。

この様子を昔は“公開処刑”と呼んでいたけれど、もうこの言葉自体がすでに死語だ。単純に二人の女優の方向性の違いが表れているだけだ。個性や見る側の好みは「あって当然」。

この現象をドラマで通常運転にしてくれたのが、菜々緒という強力バイプレイヤーだと推したい。セリフでも「美人」「かわいい」連呼されるヒロインがいて、その横に少し控えめなバイプレイヤー。こんな縮図で今までの作品は成立していた。でも現代は冴えないヒロインの横に、サイボーグのような引き立て役がいても不自然さはない。このシチュエーションを作ってくれたのは、菜々緒ではないだろうか。

演者として「様々な役をモノにしてこそ……」という欲や目標があるかもしれない。でも彼女の存在を真似ができる演者も日本にはまだ見かけないことも事実。かつて『4分間のマリーゴールド』(TBS系・2019年)では、普通の心優しい女性を演じていたことがある。

ただ隠しきれない日本人離れをした骨格と、妖艶さが普通っぽさの邪魔をしていたのが残念だった。できればパブリックイメージそのままに、菜々緒という一つのジャンルを突き進んで欲しい。

こうして思い返すと、彼女が7年間で築いてきた功績は編集長役に相応しい。いや、社長役でも遜色はないような……。

さて『ボス恋』。完全無欠の麗子が宇賀神慎一(ユースケ・サンタマリア)の前ではペースを崩すのも、潤之介の元カノ役をあざと女代表・倉科カナが演じることも気になるところ。火曜22時、待機。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

  • 写真共同通信社

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