年収1000万円のキリン社員が「55歳で芸能界へ転身」の背景 | FRIDAYデジタル

年収1000万円のキリン社員が「55歳で芸能界へ転身」の背景

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若手サラリーマン時代の山田氏。毎晩のように銀座の高級クラブで営業していた(写真は山田氏提供)

消防士、新聞記者、バーテンダー……。

これまで男性が演じた役柄は、多岐にわたる。だが芸歴は短い。芸能事務所に入所したのは昨年8月。俳優になって、まだ5ヵ月ほどしか経っていないのだ。男性の名前は山田直樹氏(55)。大手酒造メーカー「麒麟麦酒」(以下、キリン)を早期退職し、50代半ばで芸能界入りした異色の役者である。山田氏が語る転身の背景だ――。

「新型コロナウイルスの影響で、家にいることが多くなりました。太るのは怖いですね。50代でスリムな体形を維持するのは大変です。毎朝ヨガや腹筋で30分ほどトレーニングし、昼間はキックボクシングをしています。俳優としては、まだまだ駆け出し。時間を見つけて映画やドラマを研究し、ボイストレーニングをしていますよ」

山田氏は身長183cmで、余分な肉がなく若々しい。子どもの頃から背が高く、人前でふざけ笑われるのが好きだったという山田氏。学芸会では、よく主役を演じていた。

「目立ちたがり屋だったんです。小学2年の時に『ケーキ屋ケンちゃん』(70年代前半にTBSで放送された児童向けドラマ)のオーディションを受けたいと母親にお願いすると、こう言って断られました。『子どもに稼がせていると思われるとイヤでしょ』と。父親は絵描きで収入が安定しませんでしたから、世間体を気にしたんです」

小学校では演劇クラブに入り、中学、高校ではバンド活動に興じた。卒業後は、立教大学法学部に進学する。

「法学部を選んだのは、つぶしがきくと言われていたため。明確な志望理由はありません。大学でもボーカルとして、ずっとバンド活動をしていました。将来はミュージシャンになるんだと、漠然と考えていました」

高級クラブのママと明け方まで

医師の役を演じる現在の山田氏。50代になっても体型は若い頃と変わっていない(写真は山田氏提供)

だが、現実は甘くなった。「(所属する)事務所の都合でやりたい音楽などできない」と理想とのギャップに悩む、ミュージシャンになった先輩たち。母親からは「(自由業の父親を支えるのが)どれだけツラいかったか……。サラリーマンになってくれ」と説得された。

「仕方なかったですね。自分が将来ミュージシャンとして活躍する姿が、見えませんでしたから。就職したのは、キリンシーグラムというキリンの関連会社(後に統合)。志望理由は酒が好きだからという、単純なものです」

会社員の身分に期待をしていなかった。だが、山田氏は営業の仕事にのめりこんでいく。

「入社3年目から、東京・銀座の担当となり高い酒を売っていました。当時はバブルでしたから、飛ぶように売れるんです。楽しかったですね。高級クラブのママとアフターに行き、明け方まで飲み毎日二日酔い。得意のカラオケを披露し、一晩で30~40万円使うのも当たり前でした。おかげで体重は20kgも増え85kgに。学生時代のスリムな身体は、見る影もありませんよ」

充実したサラリーマン生活を送ってきた山田氏に、転機が訪れたのは50代前半のときだ。管理職としてさらにステップアップできる社内試験に、2回落ちてしまったのだ。

「試験に落ちると年収は上がらない。2、3年もすると役職離脱して、収入が減ります。落ち込まなかったと言ったらウソになる。サラリーマンとして、明るい未来が描けなくなってしまったんですから。妻にはこう言いました。『55歳の早期退職には応じるつもりだ』と。

とはいえ、50代の男をあらたに雇ってくれる会社などないでしょう。30年以上続けたサラリーマン生活を止め、今後何をすべきか。コロナが感染拡大し、家にいる時間が多くなり自分を見つめなおしました。ミュージシャンとしては限界がわかっている。もう一度やりたい。本気で思ったのが役者なんです」

退職間際、山田氏は担当部長として1000万円ほどの年収があった。高収入をたち切り、シニア俳優を募集している芸能事務所のオーディションを受ける。10人の受験生で、合格したのは山田氏だけだった。

「緊張はしませんでしたね。むしろ演技などの試験で、久しぶりに人前に立て楽しかった。事務所の社長からは、『(合格理由は)身長が高かったから』と笑って言われました。今はマネージャーから来る、ドラマやウェブCMのエキストラの仕事を待つ日々です。昨年までは連日のようにエントリーのお知らせをもらいましたが、1月前半はコロナの影響でパタリと仕事がなくなってしまいました。

仕事が少なくても、今が人生で一番充実していますよ。これまで接することがなかったような職業を演じ、見ている人を喜ばすことができるんですから。早期退職金や失業保険で、しばらくはおカネの心配もいりません。我ながら今後が楽しみです。子どもの頃から目立つのが好きで、ボーカルとして鍛えてきたで声にも自信はありますから」

早期退職し、55歳にして人生最高の時間を得た山田氏。さすがに、ドラマや映画の主演はムリかもしれない。だが「エンドロールに名前が出るぐらいの俳優になりたいですね」と、目を輝かせる。

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