この1年、テレビドラマの「コロナ」の扱い方はこんな風に変わった | FRIDAYデジタル

この1年、テレビドラマの「コロナ」の扱い方はこんな風に変わった

コロナとドラマは向き合うべき? それともスルーするべき?

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『監察医 朝顔』の第2シーズンに主演している上野樹里。長期間の放送でも視聴率は2桁をキープ
『監察医 朝顔』の第2シーズンに主演している上野樹里。長期間の放送でも視聴率は2桁をキープ

ドラマオタクの私が、色眼鏡を外して視聴をしても冬ドラマは面白い。昨年、突然起きてしまったパンデミックによって、ドラマ界も漏れなく苦渋の放送スケジュールを強いられることになった。

当時味わった鬱憤を晴らすかのように、今、全体が盛り上がっている。巣篭もりしているのも苦痛にならないほど、毎日見たいものがある。特に『監察医 朝顔』、『知ってるワイフ』(フジテレビ系)『俺の家の話』(TBS系)はオタクが推薦をするので、物語が中盤を超えた今からでも見てほしい。

ただ気になっているのが、映像内に出てくる“コロナ感染対策”。全く触らないで、コロナ禍以前の日本の様子を舞台にしている作品もある。ただ対するように、政府が全推しししてくる“新しい生活様式”に倣っているパターンもしばしば。要するに方向性が定まっていない。

ではいったいどんな対策シーンがあったのか? を、昨年とまだ始まったばかりの今クールの作品で検証してみたい。ただあくまでも放送中のドラマを網羅して見ている私の記憶の範囲内なので、抜けなどがあった場合はお目こぼしを……。

ウイルスが物語の中にも静かに蔓延してきた2020年

2020年のテレビドラマによるコロナ対策は、春ドラマの撮影、放送が完全にストップした後に始まった。各局「……やったほうがいいんですよね?」という、互いの放送ルールや、世間の顔色を伺いながら対策を取り入れていた。

ただどの局も放送シーンが短かった。例えば自粛後、最初にドラマで発見した『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系)では、警察学校生のカイくん(中島健人)とジロちゃん(平野紫耀)が交番勤務の訓練中のこと。近所の人からもらった差し入れを食べるときに、手を消毒していた。ほんの一瞬だったけれど、まだ消毒という行為が特別だったせいか「ついにドラマにもこの波が来たか……」と目についた。

やっと放送時間がまとまってきた秋ドラマは、コロナ禍を感じさせるシーンが続々『姉ちゃんの恋人』(関西テレビ・フジテレビ系)では、桃子(有村架純)の勤務するホームセンターで、コロナ禍のマスク争奪戦争のことを「あんなこともあったねえ」と懐かしむスタッフ同士。

『共演NG』(テレビ東京系)ではドラマの制作発表会で検温シーン、『恋する母たち』(TBS系)では終盤で出演者のマスク着用が当たり前になり、自粛期間中に夫婦が揉める生活も描かれていた。いずれにしても視聴者と同じ目線で“コロナ=目に見えない敵”として扱っていたようだ。

そんな最中に新しい切り口を見せてくれたのが『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)。コロナを全面推しで扱い、むしろ笑いに変えてくれた。ソーシャルディスタンス、オンラインゲームによる出会い、濃厚接触が難しい恋人同士に、出演者全員しっかりマスク着用。眼力を中心にして口鼻を隠した演技は、おそらく難しかったはず。それでも毎日、自粛を求められる生活の中、この作品を見て「ああ、恋もできる」と胸を撫で下ろした人もいたはずだ。

冬ドラマ、ついにコロナにまで“匂わせ”がスタート

新年を迎えてスタートしたドラマでも、コロナ禍の取扱いは様々だ。ただ去年と比べて、撮影に入るまでに時間があったのか、ウイルス感染を彷彿させるという手法がちらほら。

例えば毎回号泣必至の『監察医 朝顔』(フジテレビ系)。コロナとはダイレクトに出さず、朝顔(上野樹里)の勤務する法学室で狂犬病が発生する放送回があった狂犬病といえば死に至ることもある伝染病だ。噂はたちまち広まり、今や“国民的孫”に鎮座した、つぐみちゃん(加藤柚凪)が保育園でお友達とケンカになってしまう。

自分が観察医をしていることが原因だと、落ち込む朝顔……。これは今、日本の医療現場でも起きている事件と酷似している。家族にコロナ感染の対応をしている医療従事者がいると差別があるという、筆舌に尽くし難い事件を思い出させる。

『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系)は、ちょっと匂わせ方がハードだ。ひとつの街に起きたパンデミックは、化け物に噛まれると自分も化け物に変異するという感染病をテーマに取り上げている。これがガチでコロナだったら世も末だけど、この時期に“感染”“パンデミック”というワードが出てくるだけで、現実の感染病を匂わせているのかと思った。

ちなみにこのドラマ、ジェイソン風の化け物と、殺人シーンが大量に登場する。子どもが迂闊に見ると、夜寝られなくなるくらいホラー感満載なのでご注意を。ちなみに私は第一話を見て面白いとは思ったけど、怖くなってしまったので、レコーダーに録画されっぱなし。いつか明るい時間帯にまとめて見る予定です……。

この2作品についてはドラマの中で“匂わせている”も正しいけれど、私たちがウイルスに対して敏感になっているのも正しい。余談だが“匂わせ”という言葉はマウントを取りたい女性の嫌がらせ行為だけに適用する言葉なのかと思ったけれど、こんなふうにも使えるのだと、この原稿を書いて知った。

他では『俺の家の話』、『天国と地獄 ~サイコな2人~』(ともにTBS系)では、マスクや消毒が当然のものとして扱われている。これは2020年から続くものだけど、変わったのは見る側の私たちのほうだ。去年に比べて自分たちが感染対策を衣食住のように取り入れているので、対策にはだいぶ違和感が減ってきている。

ドラマ制作に関わる人たちに聞くと、どんな作品も企画段階で一度はコロナをどう扱うのかと打ち合わせをするらしい。対策の全くなかったコロナ禍以前を物語の舞台にするのか、それとも令和3年の現在を反映するのか。

個人的にはドラマは娯楽のひとつだし、あまりマスクをした演者は見たくない。世界中の人も思っていると思うが、以前の生活を懐古して愛おしく思う気持ちがある。無理とは分かっているけれど、やっぱり東京ドーム満員のライブでぶち上げたい。

せめてドラマくらいは、コロナを感じさせないで欲しい。ただ取り上げることが正義でも間違っているわけでもない。

今後、ドラマの世界はコロナ禍とどう向き合っていくのだろう? 近い将来、私たちが“戦争モノ”と呼んでいる作品のように“コロナモノ”が普通に取り上げられるようになる日も近いのかもしれない。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

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