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「ワクチンで強い兵隊を」接種済み峰宗太郎医師が疑問に答える

自分の身体という「城」を守るために、わたしたちができること

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身体という「城」を守るためにできること。ワクチン接種の効果とともに、予防行為など「今できること」を考える時期だ 写真:ロイター/アフロ

新型コロナウイルス「ワクチン」。有効性、安全性について不安な情報も多い。すでにワクチンを接種した医師・峰宗太郎先生が、疑問に答える。

「副反応」は、悪くない

「1月24日に新型コロナのワクチンを打ってきました。筋肉注射です。筋肉注射は、皮下注射より痛いと思っている方も多いようですが、針を刺す痛みは同じです(笑)。とても簡単な注射で、アメリカでは、講習を受けた警官などが市民への接種を行っているほどです。

接種したあと、アレルギー反応が出ることがあるので、1530分は接種会場内の『観察部屋』に待機します。私もしばらく待機して、問題がなかったので帰ってきました。

注射して、だいたい1時間後くらいから、注射を打ったところが痛くなってきました。ピークは3日目の朝くらい。筋肉痛のような痛みがでて、触ったり、腕を上げたりすると痛みがありました。全身の状態としては熱も出なかったですし、打った場所がちょっと腫れて赤くなり、痛くなった程度でした。

4日後からは、もうまったく痛みません。1週間も経つと、どこに打ったのかわからないほどになりましたね」

峰先生がワクチン接種した日、カマラ・ハリス副大統領も同じ会場で2度目の接種を済ませた。アメリカでは、野球場などあらゆる場所でどんどん接種が進められている

注射したところが痛い、というのは、ワクチンの「副反応」のひとつだ。

「こうした副反応は、まさに『免疫が反応している』ということですから、基本的に心配ありません。逆に『副反応がなければ効いていない』ということではないですが、痛みやだるさ、頭痛などは身体が反応しているということですから、ワクチンが効いている傍証ではあります。

打った直後に副反応が出なければ、その後、心配することは少ないですね。このワクチンの成分は1週間もすれば身体から消えてしまいますから、何年も経ってから副反応が出ることは考えにくいのです」

今、流通しているワクチン「2種類」の効果

「新型コロナウイルスで、今流通している主なワクチンは『核酸ワクチン』と『ベクターワクチン』と呼ばれるもの。核酸ワクチンにはメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンとDNAワクチンの2種類があります。アメリカで承認されているのは、ファイザー社製とモデルナ社製のmRNAワクチンです。私が接種したのはモデルナのものでした。

mRNAワクチンは、新型コロナの設計図の一部が書き込まれた『RNA』を体内に入れます。一方、日本への輸入も決まっているアストラゼネカ社のワクチンはベクターワクチン。大阪府知事肝入りの、アンジェス社が開発しているものはDNAワクチンですね。ベクターやDNAは比較的安定的なので、保存・運搬がしやすいのです。

ワクチン接種でどのくらい発症しにくくなるかという『効果』は、mRNAワクチンで9495%と、かなり高い。ベクターワクチンの場合は、今のところ、6090%前後と低めですね」

「核酸ワクチン」は、新型コロナで初めて承認された新しい技術だ。遺伝子を傷つけるのではないかという不安の声もある。

「核酸ワクチンのうち、mRNAワクチンのほうは、99.9999%といっていいほどその心配はありません。ヒトの細胞内にある染色体(DNA)に傷がついたり、新しい情報が組み込まれるということはないのです。

一方でDNAワクチンは遺伝子に影響する可能性が、ごくわずかではあるものの残ります。またDNAワクチンは、mRNAワクチンと比較すると、かなり多くの量を打ちこまないといけないという点も指摘しておく必要はあるでしょう」

そもそも「ワクチン」というのは、ウイルスに対抗する免疫をつけるためのもの。つまり、感染症の治療ではなく、感染、発症を抑えるためのものなのだ。

「ワクチンを接種するのは、身体にとって、感染症に対する『予行練習』のようなものです。ワクチンが擬似でウイルスの役割をして、『こういうウイルスが来るよ』とあらかじめ知らせることで、身体に準備してもらうんです」

ワクチンで、身体に「強い兵隊」を育てるのだ

「体内に入ったウイルスを見つけ、攻撃するのは、免疫細胞や抗体などの免疫システムです。免疫細胞は外敵から体を守る兵隊のようなもの。体内にはさまざまな免疫細胞・抗体がありますが、そのなかで『コロナ対応が得意』(生物学的には特異的に反応するという)な兵隊に、コロナの形を覚えさせるんです。するとその兵隊が分裂して、どんどん数が増え、『活性化』といって、ウイルスとの戦いを頑張れるようになっていきます。

mRNAワクチンを打つと、体内にほぼ0だったこの『コロナ対応が得意な兵隊』が、例えば600人くらいに増えるとイメージしてください。新型コロナという敵と戦うために訓練された兵隊ですから、強いですね。

実際にコロナに罹患した人が獲得する免疫は、兵隊にして400人くらいというイメージです。ワクチンで増える兵隊のほうが多いことが知られているんです。ですから、すでに感染したことがある人でも、ワクチンを接種する意味はあるんです」

ワクチンの「兵隊」は、変異ウイルスにも対抗する

「ワクチンは変異ウイルスには効くのか」という疑問もいわれている。イギリスや南アフリカの変異ウイルスに、既存のワクチンは効果があるのだろうか。

「イギリスでみつかった変異ウイルスにはワクチンが効果を発揮することが、すでにわかっています。一方、南アフリカの変異ウイルスは、ワクチンで得られる抗体の効果が16くらいまで落ちるとわかっていますが、600人だった兵隊が100人になる程度ともいえます。

現状、もともとの『兵隊600人体制』は過剰防衛とも言えるので、100人でも無駄というわけではありません。今のところ変異のせいでワクチンが全く効かなくなることは心配しなくてよいでしょう。

ワクチン接種後に時間が経つと、この兵隊は少しずつ数を減らしていきますが、今のところmRNAワクチンによって作られた兵隊は3カ月以上経っても数が大きくは減っていないので、例えば1年後にまったく0になることはあまり考えられません。半年から1年は、相応の効果が続くのではないかと予想できるかな、というところです」

ワクチンの効果は、かなり期待できそうだ。気になる安全性はー。

「これまでのワクチンでも使われてきた、生きたウイルスを使う生ワクチンというものは、実際に感染させるわけで、過去には事故もありました。が、今回の新型コロナウイルスのワクチンは実際に感染させるわけではないんです。なので、打ったワクチンから新型コロナに感染するということは絶対にありません。

RNAワクチンもあくまで、本物のウイルスがきたときのための『予行練習』ですから、実際に感染はしません。

感染してしまうと体にダメージを受けますから、まずは『感染しない』ことが大事ですね。免疫をつけるならワクチンでつけることが一番なんです」

国産ワクチンが国を守るから

ワクチンの副反応として、アナフィキラシーという反応が出る可能性が知られている。アレルギーのある人は打たないほうがよいのだろうか。

「今回のワクチンでアナフィラキシー(重度のアレルギー症状)が出る人は、過去にも大きなアレルギーを起こしていることが多いです。大きなアレルギーとは、発作で救急搬送されたり入院したりしたことがあったり、アナフィキラシー症状に対して用いる『エピペン』という注射を持ち歩いているような人ですね。

そうした方はワクチンの接種を避けたほうがよいこともあるので、主治医と相談が必要です。ただ、花粉症などでくしゃみが出る、食べると発疹が出る程度のアレルギーがあるというぐらいならば、ワクチンに関しては基本的に心配はないでしょう」

各国でワクチン接種が進むなか、日本は「出遅れている」。その理由のひとつに、必要な数のワクチンを確保できない、国内生産ができない、という課題もある。

「今のところ、変異ウイルスにも既存のワクチンが効くことはわかっていますが、そのうち日本で、新たな変異ウイルスが出るかもしれない。そうなったときにその日本独自の変異ウイルスに合わせたワクチンを、海外の製薬会社が日本のために作ってくれるかは未知数ですよね。そういったことも考えると、どこの国でもワクチンを作れるようにしておくのがよいと思います。

医療に限らず、いざというときのために自国生産できることは国を守るための手段のひとつでしょう。国産ワクチンも、少しずつ開発が進んでいます」

ワクチンで兵隊を、予防行為で壁を作って、城を守る!

日本では、2月中旬に医療従事者、4月から高齢者への接種が計画されている。

「ワクチンを打ったからといって完全に安心ということはなく、手洗いやマスクなどの予防は引き続き必要です。予防行為は、城に侵入してくる敵にバリアの壁を作るイメージです。といってもひとつひとつの壁は薄く、低い。手洗い、マスク、3密を避ける、よく寝る、栄養をしっかりとるといった対策を重ねていくと、壁は少しずつ積み重なって厚く、高くなります。

ワクチンは、万が一その壁を乗り越えて敵が入ってきても退治できるように、兵隊を鍛えておく予行練習であり、身体を守る、最も大きな防御壁です」

一般の接種が始まるのは初夏以降になりそうだ。それまで、基本の予防を徹底し、自分という「城」を守るための「壁」をしっかりと築いていかなければならない。

「そのためには、情報に振り回されないこと。注意深く情報をチェックし、何が正しい情報なのかを自分の頭で考えるのが大事でしょう。

あと1年です。予防をしっかりしつつ、ワクチン接種の機会が来たら納得して臨む。落ち着いて、できることをやりましょう。予防は治療に勝るのです」

 

峰宗太郎:医師(病理専門医)、薬剤師、医学博士。京都大学薬学部、名古屋大学医学部、東京大学大学院医学系研究科卒。国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所等を経て、米国国立研究機関博士研究員。専門は病理学・ウイルス学・免疫学で、ワクチンの情報、医療リテラシー問題にも明るい。愛称は「ばぶ先生」。

  • 取材・文和久井香菜子写真AFP/ロイター/アフロ

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