原田泳幸容疑者 谷村有美との「夫婦関係の歪み」が起こるまで
「原田容疑者が、東京渋谷区内の高級住宅街に豪邸をかまえたのは5年ほど前でした。昨年6月にもつかみ合いになり、谷村さんが『夫から身体を床に押しつけられた』と渋谷署に相談していたとの報道もありました」(全国紙社会部記者)
妻のヒジや腰などを、ゴルフの素振り用練習器具で殴打――。2月6日、シンガーソングライターの谷村有美さん(55)を暴行した疑いで実業家の原田泳幸容疑者(72)が逮捕された。被害にあった谷村さんが警察に通報。検察は原田容疑者の勾留請求をしているという。周囲がうらやむカリスマ経営者と有名アーティストの関係が、こじれた背景をさぐる。
谷村さんが歌手デビューしたのは、慶応大学在学中の87年11月だ。愛くるしい外見と、透明感の歌声でブレイク。『がんばれブロークン・ハート』や『信じるものに救われる』などのヒット曲を出し、40代50代を中心に人気は高い。
「谷村さんは一途で、一つのことにのめり込む性格です。音楽に対する姿勢がストイックなため、考えすぎてしまうこともあるようで、98年には体調を崩し、活動を2年間休止しています。谷村さんは、当時こう話していました。『曲が書けなくなった』と。
その後、活動を再開しましたが、02年4月に原田さんと結婚して以来、家庭を優先する生活を続けています。毎年クリスマスコンサートは行っていますが、コロナ禍、大好きな音楽で気分を発散する機会が少なくなっていたでしょう。そこにきてこの一件ですから、精神的にもいろいろと苦しいはず」(音楽事務所関係者)
責任なきトラブルで辞任
一方の原田容疑者が、敏腕経営者であることは言うまでもない。経済ジャーナリストの松崎隆司氏が語る。
「アップルコンピューターやマクドナルドの業績を伸ばした、日本を代表する経営者です。アップルの主力商品『マッキントッシュ』やマクドナルドの愛称から、『2つのマックの再生者』として名をはせました。
マクドナルドでは、それまで一辺倒だった低価格路線を見直し成功。『100円マック』などの安い商品で顧客を呼び込み、『メガマック』などの高価格メニューで利益を大幅に上げたんです。就任以来8年連続の売上高プラスを達成し、『原田マジック』ともてはやされました」
だが、評価の高い時期は長くなかった。11年3月の東日本大震災以降は業績が悪化。14年4月に通信教育大手『ベネッセ』に転じると、思わぬトラブルに巻き込まれる。
「約2000万人分の個人情報漏洩が発覚したんです。社長就任直後のトラブルで、決して原田さんのせいではありませんでしたが、トップとして対応に苦慮しました。主力サービスの『進研ゼミ』の会員数は、14年4月の365万人から15年4月の271万人に激減。責任をとる形で、就任からわずか2年後の16年5月に社長を辞任したんです。
皮肉なことに原田さんの辞職後、ベネッセの業績は徐々に回復します。原田さんが取り組んだ紙からデジタルへの移行が、功を奏したんです。原田さんとしては、忸怩たる思いがあるでしょう。自分に責任のないトラブルで辞職に追い込まれ、実績はほとんど評価されなかったんですから」(前出・松崎氏)
原田容疑者の評価が一変した要因に、自身の経営スタイルがある。松崎氏が続ける。
「原田さんは、落ち目の企業の業績を回復させる再生型のトップです。つまりリストラ中心。店舗や人員を削減し、ムダを省いて利益を出すやり方です。当然リストラされた側は反発し、原田さんは強引過ぎると考えるでしょう。原田さんとしては目的達成のためには、反対意見を聞いていられない。実際、アップルやマクドナルドでは結果を出していますから。
マイナス要因は、ワンマン経営者だったこと。アップルではCEOのスティーブ・ジョブズ氏が理解者として、原田さんをフォローし成功しました。その後、サポート役が身近にいなかったことが反発を大きくしたと思います。実績を残しているのに、評価されない……。そんな鬱屈した思いが、募っていたのかもしれません」
原田容疑者の経営者としての悩みは、相当深かっただろう。だが、トップに結果責任がともなうのは当然。仕事と家庭の問題も別で、暴力は決して許されるものではない。原田容疑者は容疑を否認しているが、警察は長年にわたり悪質なDVがあった可能性について慎重に調べを進めている。
- 写真:共同通信社