旭川医大「パワハラ疑惑学長」退任求め立ち上がった教授たちの決意 | FRIDAYデジタル
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旭川医大「パワハラ疑惑学長」退任求め立ち上がった教授たちの決意

「署名活動」を始めた教授たちの怒りと悔恨

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旭川医科大に14年間「君臨」する吉田晃敏学長。眼科教授の座を奪取したときに学内に貼り出された「二冠」ポスターをFRIDAYデジタルは入手
旭川医科大に14年間「君臨」する吉田晃敏学長。眼科教授の座を奪取したときに学内に貼り出された「二冠」ポスターをFRIDAYデジタルは入手

不祥事連発の「旭川医科大学を立て直す」

学長のパワハラ疑惑や、病院長の解任に揺れる「日本最北の医療の砦」で、ついに教授たちが立ち上がった。

2020年11月に旭川市内で新型コロナのクラスターが発生した際、患者受け入れを打診された吉田晃敏学長は「ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅとコロナをまき散らして」と暴言を吐き、さらに古川博之病院長に対して「お前が辞めろ」とパワハラの疑いのある発言をし、これをきっかけに、学内の混乱が明るみになった。

明けて1月25日に、病院長だった古川氏を一方的に解任。29日には、吉田学長の「勤務実態を伴わない不適切な収入」が報道された。

「過熱する報道を見ながら、自分の居場所である大学の評判がどんどん貶(おとしめ)められていくのが悲しかったです。以前から、学長の言動は問題視されていて、このままでいいわけがないと思っていたのですが、声をあげる勇気がなかった」

というのは、今回の署名活動に参加している旭川医科大の阿部泰之緩和ケア診療部准教授。

「古川元病院長から発起人にとお声がけがあり、この問題にまっとうに向きあいたいと覚悟が決まりました」(阿部准教授)

発起人には、旭川医科大名誉教授の葛西眞一氏、菊池健次郎氏、笹嶋唯博氏、谷本光穂氏はじめ、22名の現職教授・准教授が名を連ねる。もちろん、病院長を解任された古川氏もそのひとりだ。署名は学内限定で、2月末までに教職員の過半数、1000人の署名を目指すという。

「まともな大学にしたい」という思いから

「古川元院長の肩を持つとか、吉田学長をやっつけたいというのではありません。学長の解任を求めていますが、目標はその先です。吉田学長が作り上げてしまった組織の、異様な部分を正したい。

署名運動の名称は『旭川医科大学の正常化を求める会』です。いい名前だなと思いました。これをきっかけに、組織のあり方が変わることを期待します」(阿部准教授)

学内の教職員に向けた「旭川医科大学の正常化を求める会」の趣意書。2月9日、発起人の教授たちの連名で発信された
学内の教職員に向けた「旭川医科大学の正常化を求める会」の趣意書。2月9日、発起人の教授たちの連名で発信された

活動の「趣意書」によると、求めているのは2点。

1.吉田晃敏学長に対し、ただちに本学学長を辞職すること

2. 本学学長選考会議に対し、吉田晃敏学長が速やかに本学学長を辞職しない場合は、学長たるに適しないものとして、文部科学大臣に対する本学学長解任の申出を行うこと

理由として、一連の不祥事と「長期政権による大学の私物化、ガバナンスの崩壊」をあげている。

「もともと旭川医大の学則は『学長は1期4年を任期とし再任を1回だけ認め再任後の任期は2年とする』でした。それを吉田学長が『再任は無限』と改定したんです。

また、学長をはじめ大学内の運営に関与する役員は教授職等は返上して執務にあたるのが通例ですが、吉田学長は昨年10月に自らが眼科学講座の主任教授に就任しました。現在学長と教授を兼任しています。通常は65歳で教授職も定年になりますが、学長は現在68歳。大学のガバナンスはめちゃくちゃです」(大学職員)

意に沿わない者は容赦なくクビにする恐怖政治

昨年10月の「暴挙」で、学長と主任教授の「二冠」を手にした吉田学長。その「二冠」を誇るポスター画像は大きな反響をよんだ。

「前の眼科教授もそうでしたが、少しでも意見をしたり意に沿わないことを言うと、追い落とされるんです。みんなの前で暴言を吐いたり、役職を奪って異動させたりもする。功績を挙げていたにもかかわらず病院を去ることになった医師は、眼科だけでも、この4年間で4人います」(病院に勤務していた医師)

吉田学長は14年にわたり大学に君臨し「王国」を築き上げてきた。しかしその責任は自分たちにもあった、と阿部准教授は言う。

「私たちのなかにも、権力や脅迫で組織をまとめようとする『吉田的なもの』に従ってしまう弱さがあったと思うんです。

意見を言うとハラスメントを受けたり、クビになったりするおそれがある。だから今まで、おかしいと思っていても声をあげられなかった。声のあげ方、どうやって抗議すればいいのか…その戦い方もわからなかった。

結果、吉田学長が作り上げた組織を容認してきた私たちにも責任があるんです。

僕自身、パワハラの相談をされたこともあるのですが、うまく応えられず、その医師は辞めてしまった。今回、発起人を引き受けたのは、その償いの気持ちもあります」

発起人のひとり、第一内科の長谷部直幸教授は、こう言う。

「これまで問題があっても、学内にその『受け皿』がなかった。今回ようやくそれを作ることができました。学長にはこれが『最後のチャンス』。進退をお考えいただきたいです」

反省と勇気をもって「改革」に

学内の体質にも疑問の声があがっている。

「全学説明会が開催されるとき、その情報を『外部に流出した場合は、すべて懲戒処分の適用になります』というメールが大学事務や広報を通して送られてきました。2月1日に行われた学長選考会議は非公開で、内容はまったくわかりません。情報漏洩はするな、というのですが、そもそもその情報もほとんど入ってこないのです」(大学職員)

「署名の用紙を前にして『医局としてどうするか、上に聞いてからにする』と言った医師がいました。内容に同意しても、名前を書くのに『上の意見』をうかがうんです」(署名をした関係者)

まさに「白い巨塔」の世界のようだが、国立大学の経営がここまで歪むものなのだろうかと驚きを禁じ得ない。

「旭川医大に限らず、ほかの医療機関でも多かれ少なかれ同じような空気があるのではないでしょうか。学長には辞任することで『改革の象徴』となっていただき、医療界の組織を変えるきっかけになったら思います」(阿部准教授)

反省と勇気をもって声を上げた22人の教授たちに、旭川医科大の関係者2000人はどう応えるのか。発起人のなかに「眼科」関係者はいない。署名開始から1日目の2月10日時点で、署名数は「143」だ。

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