TBSがゴールデンで「衝撃映像」特番を乱発する4つの哀しい理由 | FRIDAYデジタル

TBSがゴールデンで「衝撃映像」特番を乱発する4つの哀しい理由

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12日に放送された『衝撃“神”映像かわいすぎる犬&ネコ&赤ちゃん』でMCを務めた山里亮太。パネラーの多くはYouTuberが出演していた(写真:アフロ)
12日に放送された『衝撃“神”映像かわいすぎる犬&ネコ&赤ちゃん』でMCを務めた山里亮太。パネラーの多くはYouTuberが出演していた(写真:アフロ)

2月は2週間弱で4本を放送

「どうしたTBS?」と言いたくなるほど、このところTBSが「衝撃映像」特番を連発している。

2月はここまでゴールデンタイムだけで、7日(日)18時30分~20時54分に『笑える!泣ける!動物スクープ100連発』、8日(月)19~21時に『世界衝撃映像100連発 何度見てもスゴい!SP』、12日(金)19時~20時57分に『衝撃“神”映像かわいすぎる犬&ネコ&赤ちゃん』(TBS系)、17日(水)19時~21時57分に『笑える!泣ける!動物スクープ100連発』と、2週間弱で4本を放送。

しかも、日、月、水、金と放送曜日がバラバラなところに依存度の高さを感じてしまう。

他局に目を向けると、3日(水)18時45分~20時54分に『世界フシギ動画祭り』(テレビ朝日系)、7日(日)19時~21時54分に『超絶!THE空中サバイバル』(フジテレビ系)があった程度で、もう少しさかのぼっても1月24日(日)20時~21時54分に『アンタッチャブルのおバカワいい映像バトル』(フジテレビ系)が放送された程度だった。

なぜこれほどTBSの「衝撃映像」特番が続き、ど真ん中のゴールデンタイムで放送されているのか。その理由を掘り下げるべく、各局のテレビマンや制作会社スタッフなどへの取材を進めていくと、哀しい現実が見えてきた。

もちろんコロナ禍でロケなどの撮影が難しいという理由はあるが、ここまで多いのはそれだけではないからだろう。

TBSはドラマこそ民放他局の追随を許さないほど絶好調だが、バラエティは不調続き。実際、2月1日以降にゴールデン・プライム帯で放送されたバラエティの視聴率で、及第点と言われる個人6%・世帯10%に到達した番組は、『プレバト』のみに留まっている(4日が個人7.4%・世帯13.1%、11日が個人7.9%・世帯13.6%)。しかし、同番組はMBSの制作でありTBSではない。

それどころか、『有田プレビュールーム』『CDTVライブ!ライブ!』『この差って何ですか?』のような個人3%以下・世帯5%以下の超低視聴率に沈む番組もある。また、かつては「TBSの独壇場」と言われた金曜夜も、『爆報THEフライデー』『ぴったんこカン・カン』『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』が個人3~5%・世帯5~8%程度までダウン。「衝撃映像」特番に頼りたくなる気持ちはそれなりに理解できる。

メリットがあるからこそ…

では、「衝撃映像」特番を放送するメリットは何なのか。各局のテレビマンや制作会社のディレクターなどに話を聞いていくと、主に「予算」「安定」「ネット動画」「動物」の4つが浮かび上がってきた。

まず「予算」のメリットは相当大きいという。ネット上の動画は無料か低額で済むものが多く、視聴者投稿を募集してもいいし、海外の映像も低価格のものだけ選んで使えばいい。スタジオのセットは最小限でよく、ゲストはギャラの安いメンバーか番宣俳優がほとんどで、それほどかからない。

次に「安定」の意味は、経費や労力の少なさに対する視聴率のコスパがいいこと。笑い、驚き、感動などの多彩な要素を詰め込める番組のため、固定ファン層がいる上にファミリー層にもリーチしやすい。

事実、『世界衝撃映像100連発』の視聴率は、個人5%前後・世帯9%前後を獲得するなど、レギュラーバラエティをやや上回っている。また、短い動画を次々に見せていく構成のためザッピングされにくく、「毎分視聴率が下がりにくい」というメリットも見逃せない。

工夫も必要

3つ目の「ネット動画」は、素材としての数が多い上にリサーチがしやすく、数年前の動画でも古さを感じにくいなどメリットだらけ。また、「テレビ番組よりYouTubeやSNSを見るほうが多い若年層を取り込みたい」という期待もあるようだ。

4つ目の「動物」は、もともと視聴率を稼ぐ上でのキラーコンテンツである上に、ネット動画の数も多く、使用許可のハードルも低く、一般人のものは「やりすぎ」「虐待」などのクレームを受けにくい。加えてTBSには、『I LOVE みんなのどうぶつ園』(日本テレビ系)、『坂上どうぶつ王国』(フジテレビ系)、『どうぶつピース!!』(テレビ東京系)のような「レギュラー番組がないため、動物の動画を使いやすい」という背景もある。

つまり、「レギュラーバラエティの不振」「コロナ禍による収入減で制作費がない」「低予算と低労力で最低限の数字が取れる」などの事情が「衝撃映像」特番の放送につながっているのだろう。決して前向きな理由ではなく、ローリスクローリターンの策に過ぎないが、「それでも、ときどきは仕方ない」というのが本音なのだ。

バラエティに携わる人々は「衝撃映像」特番を作りたくて入社したわけではないからか、「試合放棄みたいなもの」と自虐するテレビマンもいた。実際、「衝撃映像」特番は、「テレビがつまらなくなった」という声の戦犯にされることも多く、喜んで制作しているわけではないだろう。

ただ、そんな哀しい状況だからこそ、「普通の『衝撃映像』特番ではなく、工夫を凝らしたものを作ろう」という動きもある。

昨年9月と12月に放送された『あなたはこの衝撃に耐えられる?ワールドドキドキビデオ』(日本テレビ系)は、「動画を見るタレントが、笑い、驚き、泣きを我慢して耐えなければいけない」というコンセプトの「衝撃映像」特番。“衝撃映像vs人気タレントのにらめっこ”という図式は新鮮さを感じさせ、ジャニーズや坂道グループのアイドルを起用することで若年層視聴者にも訴求できていた。

TBSはレギュラーのバラエティを立て直すことからはじめなければいけないが、それと並行して日本テレビのように「衝撃映像」特番の新たな形も模索していくべきではないか。

  • 木村隆志

    コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

  • 写真アフロ

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