「死ねって言ってます?」虐待とコロナ困窮を経験した女性の悲鳴 | FRIDAYデジタル

「死ねって言ってます?」虐待とコロナ困窮を経験した女性の悲鳴

「コロナ被害相談村」に訪れた40代女性の告白

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過去を振り返りながら、重い口を開いた冬月さん

新型コロナウイルス感染拡大防止のために事業所が営業自粛や閉鎖に追い込まれる中で、生活困窮する人が増えているため、2020年末から2021年の年始にかけて都内各所では相談会が実施された。

そのうち新宿区大久保公園の「年越し支援・コロナ被害相談村」には、344人が相談に訪れたが、女性はおよそ2割を占めた。2008年末、リーマンショック後に行われた年越し派遣村では505人の相談者のうち、女性はわずか5人だったことと比較すると女性の生活困窮者は明らかに急増している。コロナ被害相談村に訪れた女性の心の叫びを聞いた。

母親からの虐待、いじめで深まる孤独感…

2020年12月29日、冬月さん(仮名、40代)の姿は、都内・新宿区大久保公園にあった。両腕にカバンを下げ、うつむき加減で冬月さんは所持金が2万円を切っていることからポツポツと話し出した。夏に失職し、11月に失業保険も切れた。日払いの仕事を探し続けているがコロナ禍で望みがない。住宅確保給付金でアパートは追い出されずに済んでいたが、それも失効する直前だった。

相談村では自分の町で活動する支援者を紹介してもらい、年末に一緒に役所に出向いた。

「仕事さえあればなんとかやっていける」と最後まで渋っていたものの、まずは生活を安定させることを優先し申請に踏み切った。「1月に生活保護支給は無事開始されたけれど、今でも嫌でたまらない」と冬月さんは繰り返す。

冬月さんが実家を出て独立したのは20歳。小学校高学年頃から、母親が日常的に怒鳴るようになり、殴る蹴るを繰り返した。「お前を殺して私も死ぬ」と言いながらストッキングで首を絞められたこともあった。母親が錯乱すると父親は救済するのではなく、母親に加担した。今だからこそ、一般社団法人コラボのような支援団体はあるが、当時はどこに助けを求めていいかわからなかった。

「一人っ子だから味方をしてくれる人もいなかったんです。学校ではいじめられっ子でした。先生からも『変な人』扱いされていました。母親からも教師からも『お前は何もできない』と言われ続けてきました。助けを求めたくても、その情報を持っているのはこういう大人なんですよね。

児童相談所があることは知っていても、それがどこにあるのかもわからないし、当時は携帯電話もなかった。公衆電話からかけようと思っても電話する金もありませんでした」

成人になって友人と2人暮らしを始めた時は、やっと自由になれたと喜んだ。それも束の間、自炊も家計も全て自分でやりくりしなければならない。自立生活を甘く見ていたことに気づいた。

家賃の支払いが滞り実家に引き戻されたが、母親との同居に耐えられず友人宅を転々とした。寮も提供しているキャバクラの仕事を見つけて続けたが、光熱費や家賃といった名目で経費が給料から天引きされ、衣装やヘアメイクなど仕事で必要だと言われる物は全て自腹。店でのイベントではコスプレがあり、サンタクロースなどの服を着る。新人以外は衣装代の自己負担を迫られた。

化学物質過敏症で仕事に支障

派遣会社に登録して、シャンプーやカラーリング剤などを扱う倉庫業務や化粧箱の組み立て作業など、工場で日払いの仕事も日当6,7千円で続けた。その仕事が原因かどうかわからないが、2年前に化学物質過敏症と診断された。柔軟剤やアロマ、香水などの合成香料などで、体調が崩れるようになった。

当時働いていたコールセンターでは、そういった匂いが漂うと滑舌が悪くなり、喋れなくなった。次第に、目に痛みを感じるようになり、記憶力低下や仕事上で必要な会話の内容がまるで思い出せなくなった。

医者の診断書を提出すると会社は理解を示したように見えたが、冬月さんに研修を求めてきた。柔軟剤を使ったり、ハンドクリームを付けたりする人が隣に座らないように席替えくらいはできても、「使うのをやめてくれ」とは言えないとの対応だった。

化学物質過敏症の症状は回復に丸一日を要したため、1日とびに欠勤するようになった。2カ月更新だった派遣契約は病欠が増えたことで1カ月更新に短縮され、ついに雇い止めされた。

「死ねって言ってます?」

幸い、失業保険で3カ月は食いつなぐことことはできたが、月8万円の支給では生活はさらに厳しくなった。その失業保険も昨年11月に期限が来た。

「支給金を取りに行ったら、『今月で終わりですから』と言われ、目の前がさーっと真っ白になった。『死ねって言ってます?』と思わず言ってしまった」と冬月さんは苦笑いする。

その間、ツイッターでフォローしているれいわ新撰組代表の政治家、山本太郎さんが「生活に困ったらもやいに相談を」と書き込んでいたのを見て、自立生活支援センター・もやいにたどり着いた。年末の相談会については、作家・雨宮処凛さんのツイッターで知った。

明日の生活を心配することなくアパート住まいも続けられることで少しだけ心と時間に余裕ができ、職業訓練という選択肢も見えてきた。以前、イラストレーターを夢見て学校に行っていたことを思い出し、パソコン操作関連の授業を受けてみようかという気になっている。職業訓練に応募してコースを終了すれば、仕事を紹介してもらえると聞く。

ウェブ関係の仕事であれば在宅勤務も可能なため、他の人から漂う柔軟剤や合成洗剤の匂いに体調を崩すことなく働くことができるからだ。うつ病で障害者手帳を申請し、障害者枠での雇用も目指す。

呪縛からの解放

年末には、「私ってなんてダメなやつなんだ」と暗澹たる気持ちに染められていたが、自分の良い面を引き出してくれたキャバクラ時代の友人が「いいところあるじゃん」と繰り返してくれたことを思い出す。

「彼女が前向きな言葉をかけてくれたからこそ、『私もそこまでダメなやつじゃないかもしれない』と思えるようになったんです」と冬月さんは言う。

母親や教師の言葉の呪縛から解放してくれた彼女とは、いまも時々、電話でおしゃべりをする仲だ。そんな友人のように、自分も他の女性たちの力になるのであればと、3月中旬に予定されている女性のための相談会には足を運ぼうと考えている。

  • 取材・文松元千枝

    ジャーナリスト。人権や労働など社会的正義に関する問題を主に取材する。共著に『マスコミ・セクハラ白書』(文藝春秋)、『マンガでわかるブラック企業』(合同出版)など、共同翻訳には『ストする中国』(彩流社)があり、2021年1月に共同翻訳『世界を動かす変革の力——ブラック・ライブズ・マター共同代表からのメッセージ』(明石書店)を出版

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