知りたい疑問にすべて答える「介護とおカネ」の基本のキ | FRIDAYデジタル

知りたい疑問にすべて答える「介護とおカネ」の基本のキ

親が突然倒れたら…一体いくらかかるのか、在宅か施設どちらがいいのか、仕事とどう両立させるのか

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写真:共同
写真:共同

介護はある日、突然始まる

介護が必要になったら「地域包括支援センター」

介護はいつ必要になるのか。自分の親の場合、これまでの元気な印象が強くてイメージしにくいが、多くの場合、介護は突然始まる。きっかけは、自宅の階段で転んで骨折、入院したが、歩けなくなって寝たきりになってしまった。風邪をこじらせ、肺炎となり入院が長期化して、認知症になってしまった、などだ。

介助がないと生活できない状態になってしまったら、まずは介護保険サービスの利用を検討しよう。そのためには、親の居住地の「地域包括支援センター」に連絡し、要介護認定を受ける必要がある。市区町村が設置主体の地域包括支援センターは、中学校の学区域程度の日常生活圏ごとに一つのセンターがあり、連絡先はネットで「自治体名+地域包括支援センター」と検索すれば簡単にわかる。

認定調査には家族が同席すること

要介護度を判定してもらうには、まず認定調査を受けなくてはいけない。地域包括支援センターへ連絡し状況を説明すると、認定調査員が状況を聞き取りに来る日程を調整してくれる。この調査や主治医の意見書などを元に判定が行われ、要介護度が決まる。

要介護度は右図の通り、最も軽度の要支援1から寝たきり状態の要介護5までの7段階に区分される。要支援は日常生活のほとんどは自分で行うことができるが、多少の生活支援が必要な状態。要介護は日常生活の基本動作を一人で行うことが困難で、必要な介助が多いほど重度と判定される。目安としては、日常生活全般に介助が必要で認知症の症状があると要介護3、寝たきりで意思疎通が困難なレベルだと要介護5と認定される。

介護保険サービスを利用するためには認定調査が必須だが、なかには介護という言葉を聞いただけで「私はまだボケていない!」などと言って、拒否する親もいる。こんなときも、迷わず地域包括支援センターに相談しよう。多くの高齢者の対応を経験しているので、適切な解決方法をアドバイスしてくれる。

また認定調査の際に、親が張り切ってしまうことがある。脳血管疾患や骨折といった、医師の意見書など医学的見地から介護度が判断できる場合はいいが、認知症や加齢による衰弱の場合は調査時に本人が日常の状態とは異なる頑張りを見せてしまい、実態より軽度と判断されるケースも珍しくない。調査時は必ず家族が同席し、本人の前で話しにくいことはメモを渡すなど、正しく状況を伝える工夫が必要だ。

要介護認定を申請してから判定が出るまでの期間は、原則として30日。ただし急な入院で退院まで時間がないといった緊急の場合は、認定される前であっても介護保険サービスを利用することは可能だ。困っていることは、遠慮せずに地域包括支援センターに相談するといい。

親が要介護になったらすぐに子ども世帯が同居して、食事や排せつの世話をしなければならないと思いがちだが、実際はそんなことはない。内閣府の「令和元年版高齢社会白書」によると、要介護者のいる世帯のうち28.3%は単独世帯で、22.2%は夫婦のみの世帯だ。主な介護者も同居する配偶者が25.2%で最も多い。

介護者と要介護者の組み合わせを年齢階級別にみると、要介護者が70~79歳の場合は介護者も70~79歳が最も多いが、要介護者が80~89歳になると50~59歳が最も多くなる。親が80代になったら介護を覚悟したほうがよさそうだ。

「介護のおカネ」は親の資産内でまかなうのが大原則

介護保険で自己負担は利用額の1割で済む

介護に対する不安の一つに「おカネ」があるが、介護保険を利用することで負担はかなり軽減されるはずだ。公的制度なので自己負担は利用額の1割(一定以上の所得がある場合は2割または3割)。さらに介護度に応じて一ヵ月の利用限度額が決められているので、一定範囲の金額に収まりやすい仕組みになっている。

たとえば、要支援1の場合は利用限度額が5万320円なので、自己負担額は最大でも5032円。最も上限が高い要介護5の利用限度額は36万2170円だから、自己負担額は最大3万6217円だ。思ったより費用がかからないと、安心した人も多いのではないだろうか。

ただし注意したいのは、かかる費用のすべてが介護保険の対象にはならないこと。訪問介護の際のケアは介護保険の対象だが、おむつやガーゼなどは対象外。デイサービスなどで施設に通う場合も、昼食やおやつ代、レクリエーションに出かけた際の費用は全額自己負担になる。ケアプランを作成する際に、ケアマネジャーに自己負担額も確認しよう。

期間や費用については調査データもあるが、介護の場合はケースバイケースの要素が多く、平均値はあくまで目安としてほしい。それよりも意識したいのは、費用は親の資産と年金の範囲内でまかなうということ。さらに自分が主な介護者で兄弟がいる場合は、介護についての情報を正確に共有し、おカネの管理を明確にしておくことも忘れずに。

また介護スタート時は、完璧に準備を整えようと思わないことも重要だ。要介護者の状態は変化するので、必要なものや適切なものはどんどん変わっていく。レンタルならばいつでも交換できるが、購入して使わないものはムダになるだけ。介護のおカネは「いつ」「いくら」必要になるかが見通せないだけに、財布のひもは最初からしっかり締めておいたほうが安心だ。

※介護保険の利用限度額は標準的な地域の例。地域によっては加算がある。

介護離職は絶対に避ける! サポート制度を使いこなそう

介護と仕事の両立を最優先に考えよう

親が要介護になったら仕事はどうすればいいだろうか……。まず頭をよぎる不安の一つだ。上図を見てもわかる通り、介護を理由に離職してしまうと、再就職はかなり厳しい。介護が始まっても、仕事と両立させることを目指したい。

国が「介護離職ゼロ」を掲げていることもあり、支援する仕組みは拡充が進んでいる。たとえば介護スタート時、態勢を整えるためにまとまった休みが必要ならば介護休業を利用しよう。育児休業と並んで労働者に認められた権利で、休業期間は最長3ヵ月(93日)、その間は賃金月額の67%が介護休業給付金として支給される。通院の付き添いなどで短時間の休みが必要なときは、時間単位で取得できる介護休暇という制度もある。まずはこれらを活用することを考えたい。

ほかにも介護者をサポートする制度として、各自治体が配食サービスや高齢者家事援助サービス、緊急一時介護人の派遣など独自のサービスを行っている。介護保険にも福祉用具レンタルや住宅改修工事費用の支給など、介護しやすい環境を整えるサービスがある。介護離職を考える前に、まずは公的制度を徹底的に使い倒して両立する方法を模索しよう。

「在宅」で介護を受ける際のポイント

様々な訪問介護をうまく活用しよう

介護保険は40歳以上の健康保険加入者全員が被保険者として保険料を払っている。それは70代、80代の高齢者も同様だ。

そのおかげで介護が必要になったら、65歳以上であれば誰でも介護保険サービスを利用できる。一般的な年金収入世帯であれば、利用料の自己負担割合は1割。要介護度によって利用限度額はあるが、たとえば訪問介護やデイサービス(通所介護)、配食サービスなどで月15万円の費用がかかっても、本人負担は1万5000円で済む。親が要介護になったら頼りになる制度だ。

要介護認定を受けた場合、どのように介護サービスを利用するのか。大きくは、「在宅サービス」を中心に生活するか、施設に入居し「施設サービス」を受けるかの2択だ。

現在、要介護または要支援認定を受けている65歳以上の人数は約658万人。そのうち、56%にあたる約374万人は居宅介護で生活している。もちろん、介護が必要になっても住み慣れた自宅で暮らしたいと希望する人は多い。

しかし、それ以外にも金銭面での理由が大きい。「生命保険に関する全国実態調査」(’18年度)によると、介護に要した費用は、住宅改修や介護用ベッドの購入など一時的にかかったもので平均69万円。毎月の介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用含む)は、平均で7.8万円となっている。

しかし、これを在宅と施設に分けてみると、前者が4.6万円、後者が11.8万円と2.5倍の開きがある。圧倒的に施設のほうがかかる費用が高い。それもあって、要介護度が低い人は在宅で、要介護度が「4」「5」と高くなると施設に移るといった傾向がある。

在宅介護というと、同居の家族が朝から晩まで世話をするイメージがあるが、実際はそんなことはない。

居宅介護支援の主なサービスとして、生活援助や入浴や排せつの世話をする「訪問介護」、リハビリ専門家による「訪問リハビリ」、自宅に浴槽を持ち込み入浴介助する「訪問入浴介護」などがある。家まで迎えが来て施設で1日過ごす「デイサービス」も定番だ。1~2泊の短期間宿泊するサービス「ショートステイ(短期入所生活介護)」も、1~2週間に一度、利用できることが多い。

年金の範囲でケアマネとプランを相談しよう

実際に在宅介護が始まると、同居家族や子供はどんなケアをすることが必要とされるのか。なかなかイメージできないかもしれない。

そこで、突然脳梗塞で倒れ、要介護4に認定されたAさんの父親の介護プラン例を紹介しよう。下表がケアマネジャーの作成したプランだ。

Aさんがもっとも心配したのは、同居の母親が一人で父親の面倒を見て、老老介護の末、倒れてしまうことだった。好きな生け花のおけいこも続け、友人に会うといった自由な時間を持ちつつ、グチを言う時間も持てるような態勢、とケアマネジャーに依頼した。

またAさんは姉と弟、親族にも母親のサポートを分担することを相談。結果、平日週3日は、父親はデイサービスで過ごし、昼食や入浴も済ませてくる。残りの2日は介護ヘルパーに訪問してもらい、母親をサポート。土日はAさん、Aさんの妻、近県在住の姉が介助につくこととした。週末は子供たちの誰かが母親と一緒にいることで、グチを聞いたり、両親に変化がないかなどを確認したりできる仕組みだ。

週3日のデイサービスと週2日の訪問介護などでかかる費用は、概算で月に17万6000円。父親は1割負担の対象なので、実際は1万7600円で済む。ケアマネジャーに親の年金の範囲でと依頼すると、その中でどういった介護サービスを活用できるか、様々なプランを提案してくれる。親が倒れた時に、もっとも大切なのは、子供たちがケアマネジャーと連携をとって、適切な態勢を作っていくこと。介護保険サービスは頼りになる仕組みなのだ。

「施設」で介護を受ける際のポイント

「老人ホーム」にも様々な種類がある

「介護施設がどこもいっぱいで入れない」という話をよく耳にする一方で、介護付き有料老人ホームの広告は毎日のように目にする。これはどういうことなのか。介護施設の種類と料金について、親が倒れる前に知っておく必要がある。

施設の種類は社会福祉法人や医療法人が運営する「公的施設」と、「ベネッセ」や「ニチイ学館」といった企業が運営する「民間施設」に分けられる。下表でもわかるとおり、公的施設のほうが割安、民間施設は種類によってかなり料金に差がある。

また、公的施設の特別養護老人ホーム(特養)は要介護3以上が入居の条件のうえ、空きがないことが多く、ハードルが高い。ケアハウスは独居生活に不安のある高齢者向けで、介護は施設に住みながら、在宅介護を利用することになる。

在宅での介護がむずかしくなったり、介護に携わる家族が病気になったりした場合、多くは公的施設ではなく民間施設を利用することになる。

民間施設の種類は大きく4種類。この中で、住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、本人が元気なうちに入居する老人向け住宅だ。そのため、介護度が重度になると転居を求められるケースもある。グループホームは認知症の人向けで、医療行為が必要になると退去しなくてはならない。

というわけで、要介護で入居する場合はほぼ「介護付き有料老人ホーム」を選択することになる。入居一時金を何千万円も支払う豪華施設から、地元で割安に運営するアットホームな施設まで選択肢は多種多様。公的施設の場合は、地域包括支援センターに情報があるが、広範囲に探すなら民間の老人ホーム紹介センターを利用しよう。「LIFULL介護」や「みんかい」など、インターネットサイトでも手軽に探すことができる。

介護施設選びは、家族がすることが多いが、費用面だけでなく、本人が快適にすごせるかを見極めることも大切だ。最低3ヵ所は見学し、短期のお試し入居なども利用するといいだろう。入居後もいざとなったら、住み替えることも念頭に入れて構わない。

施設介護は極力親の預貯金と年金で

下表は、東京近隣県の介護付き有料老人ホームで暮らすBさん(84歳)の月額利用料。子供が、何十軒も探して見つけた比較的割安な施設だという。Bさんの公的年金額は、夫の遺族年金を含めて月12万5000円。月額費用を払うのに、毎月10万円近くをBさんの預貯金から切り崩している。

在宅介護に比べ、施設費用が高くなってしまうのはなぜだろうか。❶の施設介護サービス負担額は、介護サービスを受けるためにかかる費用。24時間介助を受けていると思えば、この金額でも仕方がないだろう。目につくのは❷の居住費。公的施設の場合、介護保険の対象となり、個室やユニット型などタイプによって料金が決まっている。しかし、民間施設の場合、自由に設定されており、10万円のところもあれば、100万円のところもある。ただ、家賃と思えば仕方のない出費ともいえ、これが在宅介護でかかる費用との決定的な違いになっている。

その他、食費や管理費も徴収される。管理費に含まれるのは、水道・光熱費、施設維持費など。施設によっては、体操やお茶会など、定期的に開催されるイベント費を含んでいる場合もある。

❺~❿は、施設によってバラつきがある費用だ。ただ、上乗せ介護費やサービス加算は、介護保険のルールで決められている。24時間看護体制であれば、医療処置が必要でも入居可能ということになるし、職員体制が手厚いところはその分、上乗せ介護費も高くなる仕組みだ。

介護者が快適に暮らせる施設を選びたい半面、お財布との相談は欠かせない。足りないおカネを家族が負担するのは避けるように選ぶことが重要だ。

『FRIDAY』2021年2月26日号より

  • 取材・文酒井富士子(回遊舎)、鈴木弥生デザイン村上麻紀写真共同

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