ゴミ屋敷の明るい「片付け動画」が200万再生を叩き出すワケ

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作業を終えて帰ってきたスタッフが「今日は物足りんかった~!」と残念そうにしていたことから「物足りんハイツ」と名付けられた部屋

玄関先から奥の部屋まで、床を埋め尽くすだけでなく、時には天井近くまで積み上げられたモノやゴミ…。いわゆる「ゴミ屋敷」と呼ばれる状態の部屋を、明るくサクサクと片付ける黄色いシャツのスタッフたち。そんな動画をアップしているユーチューブチャンネル「片付けトントン」が話題だ。

潔癖な人向けであれば、「閲覧注意」と但し書きを入れなければならないほどの家の実態を詳細に伝えながら、悲壮感は微塵も感じさせず、常に前向きなムードが流れている。「物足りんハイツ」「膝下アパート」などユニークなタイトルをつけられた動画は、今や100万〜200万再生を叩き出すほど人気だ。

「片付け動画」という一大ジャンルの中でも、その明るさと前向きさで頭角を現すこのチャンネルを運営しているのは、愛知県で資源リサイクル事業や産業廃棄物の収集、処理を行う株式会社中西。今回、「片付けトントン」開設の経緯や、撮影秘話を聞いた。

ーー「片付けトントン」の動画チャンネルを開設したきっかけをお聞かせください。

2015年の夏にYouTube集客のセミナーを受講したのがきっかけです。「スマホで撮影し、編集にあまり手間をかけず、どんどんアップしよう」という内容で、その手軽さから、まずはやってみようということになりました。

動画配信を始めたのは同年9月で、最初の約半年間は、片付けや掃除の小技を紹介するコント動画を約30本アップしましたが、まったく結果は出ず。

今考えると、片付け業者がコントで問い合わせを増やそうって、「何の問い合わせだよ」と突っ込みたくなりますが、その当時は「このギャグはつまらない、そこはこうでしょ」などと真剣そのものでした。まったく会社ぐるみでどうかしていたに違いありません。

方向性の間違いに気づいたのは、2016年12月頃のことです。実際の片付けの様子にシフトしてからは、視聴回数が徐々に増えていきました。2017年5月にアップした「5年分の生活ゴミ!ゴミ屋敷を大掃除【片付け編】」が、最大の転機になったと思います。

 

ーーYouTube上に数多ある「片付け動画」の中でも、深刻なゴミ屋敷を扱っているにも関わらず悲壮感がなく、前向きなムードが溢れているのですが、動画作成に際してのモットーはありますか?

ゴミ屋敷になってしまって悩んでいる方が、自力で片付けるにしろ、業者に頼むにしろ、第一歩を踏み出すには相当な勇気がいるはずです。なんとかしなければと思っている時に、悲壮感が漂う動画を見てしまったら、せっかくの気持ちに水を差してしまうかもしれません。それに、ゴミ屋敷の背景は時として深刻かもしれませんが、「片付ける」という行為そのものはポジティブなはずです。

なので、私たちは動画でゴミ屋敷を深刻に取り扱うのではなく、むしろ、スタッフが明るくテキパキと片付けている様子をご覧いただくことを解決の糸口にしたい、というスタンスでいます。

「汚部屋の私にやる気スイッチを押させてくれた動画がこれでした」「どんなに汚くても綺麗になるのだということがわかり、なんだか掃除をする勇気をいただきました」というコメントもいただいていて、今のやり方にはある程度の手ごたえを感じています。

片付けられなかったり捨てられなかったりするのは、誰にでも起こり得ることです。これからも、そういった方にできるだけ寄り添った優しい動画を発信していきたいと思います。

ーー「物足りんハイツ」「カサカサカレーハウス」「天井が近い家」「膝下アパート」など、ユニークなタイトルが光っているのですが、ネーミングの意図とこだわりポイントは何ですか?

なるべくネガティブにならないよう、キャッチーで覚えやすいタイトルにするよう心がけています。

たとえば、「カサカサ」「ねとねと」などの擬音を使ったり、「だんぼーるーむ。」「玄米茶♡ワンルーム」のように部屋にたくさんあるモノの名前をそのまま使ったり、「天井が近い家」「膝下アパート」などと、モノの量を表したり…。「物足りんハイツ」は、作業を終えて帰ってきたスタッフが「今日は物足りんかった~!」と残念そうにしていたことからタイトルに採用しました。

ーー片付けのプロセスを撮影するにあたり、お客様がたの反応にはどのような傾向がありますか?

撮影許可をいただけるのは、すでにそこに住んでいらっしゃらなかったり、引っ越すことが決まっていて、作業立ち合いもされないというケースがほとんどです。リセットするから部屋の様子を動画で公開してもいい、とお考えになっている感じです。

さらには、YouTubeで過去の動画をご覧になり、個人情報の取り扱いには信頼を寄せてくださっているとも思います。

引っ越したものの、片付けられずに家賃を払い続けていたなど、ずいぶんお悩みになっていた方が多く、片付け後には「スッキリした。頼んでよかった」というお言葉もたくさんいただいています。

ーー天井近くまで、明らかに「ゴミ」でしかないものを溜め込んでいるお宅の例が多いですが、部屋の奥に行くことが困難になる程ゴミを溜めてしまうまでに、皆さんどのような葛藤を抱えているとお考えですか?

私たちは、ただの片付け業者ですから、こちらからお客様に「どうしてこのようになったのか」をお聞きすることはありません。しかし、お客様の方から事情をお話しくださることもあります。

圧倒的に多いのは、やはりお忙しいということでしょう。家に帰ってきて、食事をして寝るのが精一杯で、「また今度片付けよう」と思っているうちに、どんどん溜まっていって一人ではどうしようもないレベルになってしまったという感じです。

また、体調が悪くなってしまったり、辛いことが起こったり、仕事が不規則でゴミ出しがしにくかったりといったケースもあります。

ーー「捨てられない」ことが悩みの方は多いと思うのですが、お客様の中で、一度片付けた後にリバウンドしてしまった例などはあるのでしょうか?

再度ゴミ屋敷になってしまったため、2回目のご依頼をいただいたのは、ここ数年で5件ありました。いずれも、初回の片付けから1~2年後のことです。

うち3件は一人暮らしの独身男性で、極端にお仕事が忙しかったり、ストレスで心が不安定になったりで、片付けられなくなってしまったそうです。一人暮らしの場合は助けてくれる人がいないので、リバウンドしやすいのかもしれません。

残り2件は、ご高齢の方のご家族からのご依頼でした。お体の調子が悪い方と、草や石などをお部屋に持ち帰ってきてしまう方で、年を取ると、やはり片付けも難しくなるようです。

ーー数ある「片付け動画」の中でもかなりの再生数だと思うのですが、どのような目的で観ている視聴者が多いと思われますか?

当初、ゴミ屋敷の片付け動画を見るのは、なんとなく男性が多いだろうと思い込んでいたのですが、私たちの動画をご視聴いただいた方をYouTubeのツールで調べてみると、女性が75% 、男性が25% と、圧倒的に女性が多いことがわかりました。

「スッキリする」「片付いていく様子が気持ちいい」「頑張った自分へのご褒美動画」といったコメントから推測すると、ストレス解消、家事に対する共感のようなものが、ご視聴の理由かなと感じています。

ーー視聴者からのコメントで目立つもの、印象的なものなどございましたらお聞かせください。

嬉しかったコメントを、ほんの少しご紹介します。

「片付けトントンさんの動画を見てから、少しずつでもいいからこまめに掃除しようと思えるようになりました」

「YouTubeのオススメに、トントンさんの動画があり、本当に興味本位で私には無縁のことと、ただただ、動画を楽しませて頂いておりました。動画を拝見しているうちに、私にも出来るかも? と思うようになりました」

「片付けやお掃除は辛くて面倒、というイメージを変えてくださってありがとうございます」

ーーYouTubeの再生回数は、お仕事依頼の件数にどれくらい影響していますでしょうか?

ここ数年のデータを見る限りでは、YouTubeの再生回数と仕事の依頼件数との間には、それほど強い相関はありませんでした。

これは、動画をご覧になったとしても、ご依頼に結びつくまでにある程度のタイムラグがある、私どものサービスエリアではない、あるいはご自身で片付けようと思ったなどの要因があるからだと考えています。

ただし、YouTubeからのご依頼は、件数、金額ともに全体の5割強を占めていて、成約率が高いのが特徴です。

ーーコロナ禍で増えたケースなどはありますか?

片付けトントンでは、不用品回収のご依頼が増加し、ゴミ屋敷片付けのご依頼は減少傾向にあります。

これは、新型コロナの影響で家で過ごす時間が長くなり、ご自身で片付けるケースが増えているからではないかと推測しています。

ーーこれまでにお部屋を片付けたお客様の中で、特に印象に残ったケースなどをお聞かせください。

ゴミ屋敷のようになってしまった実家を片付けてほしいというご依頼をいただいた時のことです。一人暮らしのお母様の入院をキッカケに「玄関、風呂、トイレなど最低限の場所だけは片付けようね」ということで、やっと説得できたそうです。

片付けが進むうちに、お母様が大切にしていたものを見つけることができたり、家の中が綺麗になっていく様子を写真で入院中のお母様に見せていただいたり…

実家の片付けは親御さんに拒否されることが多く、とても難しいのですが、娘さんの説得の仕方がとても上手かったのだと思います。徐々に片付けエリアを増やしていき、最終的には、延べ8日間の長丁場で家全体の片付けを完了させることができました。

最後に、娘さんが私たちにかけてくださったお言葉が忘れられません。

「自分の住んでいた実家があのような状態である、という現実はとても受け止めることができず、長年にわたり、絶望と怒りと悲しみと恐怖と無力感の元でしかありませんでした。自分たちでは何年かかるか…くらいの状況だったのが変わっていくにつれて心にかかったモヤが晴れていきました。変化を一言でいうと絶望→希望です」

また、同じような状況になってしまった方に対して、こうもおっしゃってくださいました。

「とりあえず勇気を出して相談してみてください。助けてくれる人たちはちゃんといますよ、とお伝えしたいです」

片付けの仕事をしていて、また、動画を配信していて本当に良かったなと思います。

仕事や生活に追われ、身辺を整える余裕をなくしている人、精神的に不安定で物を溜め込まずにはいられない人、高齢一人暮らしでゴミを捨てる気力体力がない人…世の中に「片付けられない」人々は少なくない。親族や近隣住人にとって、怒り、絶望、諦めの対象となりがちな彼らに寄り添い、淡々と、軽やかに対処する姿に、視聴者は「希望」を見出しているのかもしれない。

「片付けトントン」でキレイになったゴミ屋敷のビフォーアフターはコチラ↓

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