「上尾のひょっこり男」が裁判で語った犯行のヤバイ動機
自転車で走行中に、乗用車の前に飛び出す危険な運転を繰り返したとして道路交通法違反(あおり運転)に問われた無職の男の初公判が2月16日、さいたま地裁(中桐圭一裁判官)で開かれた。
2020年6月の道路交通法改正により、車両等の妨害行為(あおり運転)に対する罰則が定められた。これは、あおり運転の規定が全国で初めて自転車に適用された事件となる。
成島明彦被告(33)は上尾市や桶川市などで近隣住民に『ひょっこり男』と呼ばれていたが、逮捕時にテレビ等で報じられたことから、その名が近隣だけでなく全国区に知れ渡った。
グレーのスウェットに黒のジャージを着て、髪をハーフアップにまとめた成島被告は、初公判で問われた3件の道路交通法違反について小さな声で「間違いありません」と認めた。起訴状によれば昨年3月や10月、桶川市や上尾市の道路で進行中の乗用車に対して、運転者に危険を生じさせるような運転をしたとされている。
冒頭陳述や証拠によれば、成島被告は以前から乗用車に自転車を接近させるなどの行為を繰り返しており、昨年2月には暴行や道路交通法違反などで有罪判決を言い渡されていた。事件当時は執行猶予期間中だったが、快感を味わいたいと、妨害行為を繰り返したという。
危険な“ひょっこり行為”の被害にあったドライバーたちは、一様に恐怖を味わった。
「危ない、飛び出したら衝突する、と急ブレーキを踏み、左にハンドルを切った。ギリギリで避けた。ブレーキを踏み込んだため、肩にシートベルトが食い込んだ」(被害を受けたドライバーの調書)
「自転車の男が突然、車をめがけて勢いよく進行してきた。うわっ、ぶつかってしまう、とびっくりしてブレーキを踏んだ」(同)
被告がこうした行為を続けていたのは、ドライバーへの一方的な苛立ちからだったという。
「自転車を運転するそばで、追い抜かすドライバーに腹を立てており、いい感情をもっていなかった。車線に侵入すれば、運転者はハンドルを切る。スッとする感覚を味わっていた」(成島被告の調書より)
背筋を曲げてふてくされたように座っていた成島被告。彼の起こした“ひょっこり行為”は今回の3件だけではない。今後、追起訴が予定されている。
取材・文:高橋ユキ撮影:蓮尾真司