今世紀最高のスタート 朝ドラ『まんぷく』に大ヒット作の予感 | FRIDAYデジタル

今世紀最高のスタート 朝ドラ『まんぷく』に大ヒット作の予感

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安藤サクラ主演『まんぷく』(月~土曜前8:00)の第1週平均視聴率は21.9%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)だった。初日の23.8%は、今世紀の朝ドラ史上最高だ。初週21.9%も、2010年代でトップとなっている。数字だけ見ると好調なスタートを切ったように見えるが、実力や今後の可能性はどうだろうか。各種データから分析してみた。

『半分、青い。』が作った視聴習慣

今回の『まんぷく』は朝ドラ99作目、大阪制作では42作目となる。インスタントラーメンを世に送り出した実業家・安藤百福(ももふく)さんとその妻・仁子(まさこ)さんの半生がモデルで、安藤サクラはヒロインの福子役だ。

第1週の視聴率の高さを見て、今作を絶賛する記事が多いが、実はその数字は前作との関係で見ないと、正しい評価は出来ない。例えば『まんぷく』の第1週平均21.9%は確かに高いが、前作『半分、青い。』最終週は22.8%だった(図1)。『まんぷく』初日の23.8%は今世紀史上最高だが、『半分、青い。』最終回は23.5%だった。つまり前作が作り上げてくれた視聴習慣のお陰で、好スタートを切った可能性もある。

過去の例を見てみよう。『ごちそうさん』『花子とアン』『マッサン』は、いずれも初週が21%と高いが、前作の最終週が全て22%台と高い。『とと姉ちゃん』も21.7%と高いが、前作最終週は24.7%もあった。『まんぷく』も、追い風を受けての船出だった可能性は拭えない。

ただし前作最終週が高くても、第1週が低迷した例もある。『純と愛』『まれ』『わろてんか』などだ。いずれも2%以上率を落としているが、『純と愛』に至っては5%も下落させてしまった。これらはシリーズ平均も今一つに終わっている。前作最終週から第1週が大きく下落するパターンだと、シリーズ全体があまり期待できない傾向にある。

逆に前作最終週から第1週が、上昇しているケースがある。『あまちゃん』『あさが来た』『半分、青い。』であり、ほぼ横ばいが『ひよっこ』だった。これらは全て第1週より最終週が2%以上あがっており、平均視聴率も前作より高い。これら4作は、前作が失った視聴習慣を回復させた、朝ドラ枠に貢献した作品と位置付けられよう。

では『まんぷく』のように、2%未満の下落はどう見たら良いのか。『梅ちゃん先生』は1.4%、『ごちそうさん』は1.9%、『花子とアン』は0.7%の下落だった。これら3作は、いずれも最終週の視聴率が上昇し、シリーズ平均も前作より上がった。唯一の例外は、1.6%の下落から最終週を上げたが、平均は1.5%落としてしまった『マッサン』だ。それでも平均は21.1%と及第点。その意味では、0.9%の下落で始まった『まんぷく』には、今後の可能性があると言えよう。

図1)朝ドラ第1週・最終週・期間平均視聴率の関係
図1)朝ドラ第1週・最終週・期間平均視聴率の関係

朝ドラ本来の視聴者を取り戻す

実は朝ドラは、年齢層別に視聴習慣が異なっている。高齢層はオーソドックスな朝ドラに反応するが、現代的なドラマでは逃げる傾向にある。逆に“下の世代”(30~65歳)では、現代モノに反応するが、オーソドックス路線が続くと、徐々に逃げていく。よって多くの人々に見てもらうためには、朝ドラは両タイプをうまく組み合わせる必要がある。

そもそも朝ドラは、60~70年代には頻繁に40%台を超えていたが、時代とともに下がって来た(図2)。この流れを断ち切ったのが2010年。朝ドラの開始時刻を15分繰り上げ、8時スタートとしたことだった。これで次第に数字は戻り始め、20%台となるものが多くなった。

次の追い風は、2013年上期の『あまちゃん』。宮藤官九郎がNHKで初めて脚本を担当したドラマだったが、当初は従来と比べ特に突出していなかった。ところが中盤から視聴率が上昇し始め、最終週には23%まで上がった。その牽引役は“下の世代”だった。斬新な物語と演出に、朝ドラを見る習慣のなかった人々が見始めたのである。 ただしオーソドックスな朝ドラファンは、一定程度逃げていた。そのプラスとマイナスにより、前半の視聴率は平凡な数字に留まった。

この『あまちゃん』の後、『ごちそうさん』『花子とアン』『マッサン』と3作連続で高視聴率となった。『あまちゃん』による新たな視聴者に加えて、オーソドックス路線のファンが戻ってきたからである。

ところが『あまちゃん』の二匹目のドジョウ狙いとなった『まれ』は、オーソドックス層に想定以上に逃げられ、視聴率は低迷した。それでも若干の新視聴者はとれたようで、オーソドックス路線に戻した『あさが来た』『とと姉ちゃん』で、再び数字は大きく上がる。

この現代モノからオーソドックス路線のパターンにならうと、『半分、青い。』は現代モノにも関わらず21%台に乗せた。その後を受けたオーソドックス路線『まんぷく』は、一段と数字を積み上げる可能性がある。

図2)朝ドラ期間平均視聴率の推移
図2)朝ドラ期間平均視聴率の推移

近年最高の話題性

『まんぷく』は話題性という点でも期待できる。

Google Trendsの検索データを見ると、前作より視聴率が上がる朝ドラは、回を追うごとに検索数が増える傾向にある(図3)。途中で話題となる展開をみせ急伸する場合が多い。逆に検索数が尻つぼみの朝ドラは、視聴率も振るわない。どうやら話題性と視聴率には相関関係がありそうだ。

この実績を振り返ると、『あまちゃん』は後半に検索数が突出し、ここ2~3年では最高の『半分、青い。』のさらに倍の量を誇っていた。その『あまちゃん』の後を受けた『ごちそうさん』も、『まれ』の後の『あさが来た』も、当初から高い検索数を誇りつつ、勢いは後半も落ちなかった。高視聴率と重なる。この流れから類推すると、近年最高だった『半分、青い。』の後を受けた『まんぷく』は、当初の検索数では『半分、青い。』も『あまちゃん』も凌駕している。この状態を維持できれば、大ヒットとなる可能性がある。

安藤サクラの笑顔やしぐさ、芦田愛菜のナレーション、長谷川博己のチャレンジ精神など、『まんぷく』には幾つか話題性がある。しかもインスタントラーメンを世に送り出す物語が後に控えている。作りはオーソドックスだが、ベンチャー企業に関心を持つ人の多い現代、同ドラマが次第に関心を集めていく可能性は十分あるだろう。幾つかのデータがその萌芽を示している。今後の飛躍に期待したい。

図3)朝ドラ5作の検索状況
図3)朝ドラ5作の検索状況
  • 鈴木祐司

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

  • 写真AFP/アフロ

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