作品重視の日テレvs若者重視のTBS「ドラマ頂上決戦」の行方
『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』『君と世界が終わる日に』『レッドアイズ 監視捜査班』…見るべき「1月ドラマ」はこれだ
テレビ業界が今クール注目しているのが、日テレとTBSというドラマ強者の戦いだ。
ドラマウォッチャーの北川昌弘氏は、『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』に「TBSの目指す方向性が見て取れる」と分析する。
「上白石萌音(かみしらいしもね)(23)がドジなヒロインを好演していますが、実は彼女、昨年の同時期に同じTBSの同じ放送枠(火曜夜10時)のドラマ『恋はつづくよどこまでも』でもドジなヒロインを演じているのです。同じ路線で輝ける上白石も、彼女を起用したTBSも凄い」
TBS関係者が続ける。
「火曜夜10時は視聴率が取れない、厳しい枠でした。試行錯誤の末、辿(たど)り着いたのがティーンを意識した恋愛もの。前クールの『この恋あたためますか』にも通じますが、キュンとくる作品です。5年ぐらい前から視聴習慣が定着してきて、とくに若年層から数字を稼げる枠に成長してきました」
『TVer』などの見逃し配信が新たな収益になっていることが「作品ファースト」路線に繋(つな)がったのだという。
「作品のクオリティが高ければ、仮に視聴率はふるわなくともSNSやネットニュースで話題になり、見逃し配信の再生回数が伸びることがわかった。これまで、ジャニーズタレントなど、数字が取れる演者のスケジュールを押さえてから作品を決めるのが慣例でしたが、TBSは作品に合うキャスティングに舵(かじ)を切った。上白石がその好例です」(制作会社幹部)
今クールのTBSドラマは3作ともオリジナル脚本だ。クオリティ重視路線により、現場が活気づいているという。
「3作とも滑り出しは上々。オリジナルゆえ、関連商品の発売や海外への売り込みなどコンテンツビジネスもできる。いい流れが来ている」(TBS関係者)
他局に先駆け、数字度外視で若い視聴者の獲得に注力してきた日テレはその路線をさらに強化している。
「竹内涼真(27)主演の『君と世界が終わる日に』はゾンビとの闘いを描くサバイバルドラマ。海外のゾンビ作品と違って予算も撮影場所も限られているため、作りは実にチープなんですが、人気作のオマージュやゾンビあるあるネタを入れて、若者たちが話題にできるよう工夫が凝らしてある。シーズン2を『Hulu』で配信するというのも面白い試み。
月曜深夜放送の『でっけぇ風呂場で待ってます』は脚本を『ハナコ』の秋山寛貴(29)、『かが屋』の賀屋壮也(27)ら若手実力派のコント師らが務めています。ブレイクしたら囲い込むのが日テレの十八番。ここから出た才能が日テレに貢献してくれるでしょう」(制作会社ディレクター)
作品重視か若者重視か――作り手の意図を感じながらドラマを観れば、また違った楽しみが見つかるはずだ。
『FRIDAY』2021年2月26日号より
- 撮影:近藤裕介(2枚目)