専門医たちも驚く証拠写真! 「ゲーム依存症」は脳が破壊される | FRIDAYデジタル

専門医たちも驚く証拠写真! 「ゲーム依存症」は脳が破壊される

最先端メディカルレポート 潜在患者数421万人の新国民病

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いまやゲーム障害は世界的な問題。ネットカフェに入り浸り、オンラインゲームをして過ごす人が続出している
いまやゲーム障害は世界的な問題。ネットカフェに入り浸り、オンラインゲームをして過ごす人が続出している

「インターネットやスマホによる『ゲーム依存症』は、年々深刻な問題になっています。オンラインゲームを長い時間やり続けると、実際に脳が破壊されることがわかってきたのです」

そう語るのは、日本でいち早く「ネット依存症外来」を立ち上げ、最先端の治療を行っている久里浜医療センター(横須賀市)の院長・樋口進医師(64)だ。

スマホやパソコンを通じてのオンラインゲームにのめり込み過ぎるあまり、まともな生活が送れなくなる――。

いま、ゲーム依存症が”新国民病”として日本を蝕(むしば)んでいる。

8月末、厚生労働省から発表された「中高生のネット依存の実態調査」では、衝撃的なデータが示された。調査によると、病的なインターネット依存が疑われる中高生の数は全国推計93万人。この5年間で倍増している。さらに依存までは至らないものの、過剰使用の疑いがある段階の人は161万人近くとされ、潜在的には実に250万人以上に問題があることが明らかになったばかりだ。

しかもこれは、中高生だけの調査結果。厚労省の’13年の調査では、ネット依存の傾向がある20歳以上の男女は推計421万人。この5年間で、さらに増えていることが予想されている。

「ゲーム依存症は、アルコールや薬物など特定の物質を摂ることで身体が侵されていく依存症とは違います。ゲームをやり続けることで依存が進み、抜け出せなくなってしまう。それが恐ろしいところです。中国や韓国から出版された論文では、依存症にかかっている人の脳を調べると、『前頭前野』という部位の機能が下がる(2枚目写真)という報告も複数出てきています。前頭前野の機能低下は、理性のコントロールが鈍ることを意味する、依存によくみられる特徴」(樋口医師)

つまり、ネットゲームをするほど、人間に備わっている衝動を抑えるブレーキが効かなくなってしまう。好きなことを好きなだけする”暴走脳”に変わってしまうのだ。スマホゲームのやり過ぎで病院に行くなんて大げさな! と思っている人も、この脳写真を見れば、ゲーム依存がいかに強烈なのかがわかるだろう。

もともと、ゲーム依存を含むネット依存症は、10代の子どもに多いことが報告されてきた。樋口医師によると、これには理由があると言う。

「脳の前頭前野は、成長過程においてとくに発育が遅い部位なんです。だから大人に比べると、10代の子どもは自分の感情をコントロールする力が弱い。その分、ゲーム依存にもなりやすい傾向があります。さらに、10代のゲーム依存症の子を診療する際には、その背後にある要因を探ることも重要です。学校でのいじめや友人関係、家庭環境の問題などからゲームに逃げ込み、悪循環に陥ってしまうケースも多いんです」

あわや警察沙汰

8月、久里浜医療センターで開催された「ネット依存家族ワークショップ」に参加した親からは、子どものゲーム依存についてこのような声が上がった。

「息子が一日中ゲームをしていて、学校へ行かなくなってしまったんです。食事も摂らずにゲームに熱中し、部屋にこもりきりになってしまう。どんどん暴力的になって、強く注意すると、キレて暴言を吐いたり、ときには包丁を持ち出すことさえあります。もう、どうしていいのかわからなくて……」

このように、ゲーム依存症は家庭を崩壊させかねない危険なものだ。さらに、ゲーム依存症は10代だけのものではない。働き盛りにあたる30~40代の患者も激増しているのだ。現在、久里浜医療センターで治療を受けている患者の佐藤幸也さん(42=仮名)は、ゲーム依存のドロ沼の日々をこう振り返る。

「僕がゲームにのめり込んだのは、進学した大学に馴染めなくて、2年で中退してから。もともとゲームは学生時代から趣味程度にやっていたので、大人になって急に始めたわけではありませんでした。大学中退をキッカケに実家に帰り、そこからゲーム漬けの日々が始まりました。いまの時代はオンラインが全盛で、ゲームを通じて遠くに住む人や会ったことのない人とつながれる。それが新鮮でした。当時は月額制で、月に1万2000円を払えばゲームのやり放題。僕の実家は地方の田舎町で、とにかく刺激がない。その分、家賃はかからないし、食事は母がすべて用意してくれるので、引きこもるには最適な環境だったんです」

24時間ゲーム漬けで20年

当時、幸也さんが熱中したのは、超有名なロールプレイングゲーム、『ファイナルファンタジーIV』や『ドラゴンクエストⅩ』だった。

「数ヵ月に一度バージョンアップされるので、ストーリーに終わりがない。初めのうちはあっという間に1日が過ぎて、寝るのすら忘れていました。食事は親と一緒に摂り、食べ終わると自分の部屋へ戻る。眠くなったらその場で寝て、起きたらすぐにゲーム。20代はその暮らしで過ぎていきました。このままじゃいけない、もうやめようと何度も思った。けれども、それができなかったんです。30代に入ってからは掲示板にニュースサイト、SNS、スマホと、ゲーム以外にも常にネットに触れている状態でした。兄から指摘されて、外出や読書、勉強にエネルギーを向けてみようと思ったこともありました。でも、以前に比べて集中力が続かず、どれもすぐにやめてしまった。その現実を受け止めるのがツラくて、またネットの世界へと戻っていったんです」

抜け出す出口のない日々を送っていた幸也さん。彼が現実と向き合うキッカケとなったのは、親の病だった。

「父に膵臓(すいぞう)がんが見つかり、家族の中で一番ヒマだった僕が毎回通院に付き添うことになったんです。闘病は1年半ほど続きましたが、がんに打ち勝てずに逝(い)ってしまった。父が他界して、当たり前に思っていた親がいなくなった。そこから少し落ち着いた頃にようやく冷静になれたんです。母も、もう70歳になる。ここで環境を変えなければ、生活が立ち行かなくなる。本格的に治療して、(ゲーム依存症を)きちんと治療しようと心に決めました」

幸也さんは過去に久里浜医療センターにネット依存症外来が新設されたというニュースを見たことを思い出し、自ら病院へ電話。現在は入院して1ヵ月半が経とうとしている。

「入院して痛感したのは、いかに自分が異常な状況で暮らしてきたかということ。毎日運動プログラムがあることには驚きました。また、ネットが使えない環境にいれば、意外と平気でいられるんだとわかりました。入院までは1ヵ月の猶予があったので、段階的にネットに触れる時間を減らして、ゲームのコンテンツは全部消してから久里浜医療センターに来ました。いまは朝5時半から6時に起床する生活です。6人部屋で、同室の他の患者はみんな10代の中高生。正直、集団生活は苦手なんですが、何とか変わりたいんです。もうゲーム漬けの日々には戻りたくありません」

課金で殺人事件まで

ゲーム依存で大きな社会問題となっているのが、課金による借金トラブル。ゲーム内で新たなアイテムを手に入れるため、次々にカネを投入してしまうのだ。クレジットカードで数百万円を使い込んでしまい、生活が破綻してしまうような人も少なくない。

その中には、取り返しのつかない事態に発展したケースもある。’14年、群馬県前橋市で26歳の男(犯行当時)が高齢者の住む住宅2軒に押し入り、93歳の女性と81歳の男性を殺害。現金や食料を奪うという連続強盗殺人事件が起きている(3枚目写真)。

当時の取り調べによると、男は失業中で、消費者金融に百数十万円の借金があった。その原因が毎月4万~5万円を使っていたスマホゲームの課金だったのだ。

「これまでゲーム依存症に効く内服薬はなかったのですが、来年早々にアルコール依存症の治療薬として発売される予定のナルメフェンが、ゲーム依存にも効果があるのではないかと期待されている。治療法も、日進月歩で進んでいるのです」(樋口医師)

現代人は常にスマホを持ち歩き、いつでもネットにつながる生活を送っている。もはや、ネットと無縁の生活を送ること自体が難しくなっている。言い換えれば、ネット依存で脳が破壊されるリスクに囲まれながら暮らしているのだ。もし日常生活に支障をきたすほどネット使用が増えているのならば、おそれずに治療を受けるのが賢明だろう。

ネット依存の子どもにオンラインゲームの画像や広告を見せた時の脳。画像や広告を見ただけでゲーム時の興奮がよみがえって前頭葉が活性化する(黄色い部分)。『Ko C.H.et al., J Psychiatr Res.2009』より
ネット依存の子どもにオンラインゲームの画像や広告を見せた時の脳。画像や広告を見ただけでゲーム時の興奮がよみがえって前頭葉が活性化する(黄色い部分)。『Ko C.H.et al., J Psychiatr Res.2009』より
ゲーム課金で多額の借金を抱えていた男が’14年に起こした、前橋連続強盗殺人事件。写真は被害者の自宅前
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国内でネット依存症の最先端治療を実施している久里浜医療センター。’11年にはネット依存症外来を開始した
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ネット依存症の患者が入院する病棟と外来は、院内の広い廊下で結ばれている。写真は樋口医師
ネット依存症の患者が入院する病棟と外来は、院内の広い廊下で結ばれている。写真は樋口医師

写真:Imaginechina/アフロ(1枚目写真) 共同通信社(3枚目) 撮影:浜村菜月(4~5枚目)

  • 取材・構成青木直美(医療ジャーナリスト)

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