貧乏は犯罪なの…?生活保護を受けられない人たちの「静かな悲鳴」 | FRIDAYデジタル

貧乏は犯罪なの…?生活保護を受けられない人たちの「静かな悲鳴」

申請時の「扶養照会」が困窮者から保護の機会を奪っている

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生活保護のハードルが高過ぎる。コロナ禍に景気の底が抜けて赤信号が灯った。命を落とす人が増えてしまった。生活保護バッシングをした議員たちは今、なにを思っているだろうか

安心して寝られる場所を…

生活困窮者を支援する「相談会」にきた、路上生活をしている男性が言った。

「生活保護は、嫌な話しか聞かない。保護はいらないから、雨をしのげる寝る場所が欲しい。火をつけられたり、花火を撃ち込まれたりしなくて済む安全な寝場所を提供してくれればいい。襲われる心配のない安心して寝られる場所が欲しい」

仕事を失い、所持金が数百円になり、今日食べるもの、今夜寝る場所がない人がいる。コロナ禍の経済苦が止まらない。

菅義偉首相は1月の国会で「最終的には生活保護がある」と言った。そう、お金に困ったら、生活保護を受けて暮らしを立て直せばいいのだ。

しかし。日本の生活保護捕捉率は20%、つまりあとの8割の人には届いていない。生活保護を受けられない、受けたくないという人が多いのは、なぜなのか。

「扶養照会が、大きなハードルになっています」

困窮者の支援活動をしている、つくろい東京ファンド代表の稲葉剛さんはきっぱり言う。

「生活保護の相談に行くと『水際作戦』とよばれる、申請を阻もうとする対応があります。すべての窓口ではありませんが、今でもあるんです。そして、次のハードルが扶養照会。申請に行った人の親族に連絡がいく仕組みです。

親族への『この方を養えますか?』という問い合わせですが、これはじつは法律に定められた手順ではないんです。けれども、多くの場合、役所は親、きょうだいなどに連絡をするので、何年も会っていない親族に窮状を知られることもあります。これが辛くて申請を諦める人も多いのです」(稲葉さん)

コロナ禍に「現役世代」の困窮が増えたことも影響している。そもそも「支え合える親族がいれば、とっくに頼っています」(申請経験者)というのに。

DVから逃げ出した母子に元夫が

夫からの暴力から逃れて離婚、子どもとふたり、自立した生活を立て直すために生活保護の申請をしたという、関東地方の女性はいう。

「生活保護の申請に行ったとき、『子どもの親』として、元夫に、扶養(子どもを養う)の義務があると言われました。DVで離婚したので…と事情を説明して、連絡しないでほしいとお願いしました。が、『扶養照会』が元夫に送られてしまい、今の居場所が伝わってしまったんです。

いつ、ここに押しかけてくるかわからない恐怖に怯えています」

現在、厚生労働省の通知では、DVや虐待がある場合は、連絡不要としている。それなのに、なぜ。

「これは完全に、役所のミスです。けれども、被害者が訴訟などに立ち上がるのは困難なので、これまで多くの被害が埋もれてきました。こういったケースに限らず、そもそも『扶養照会』自体が法律に則らない『通達』、いわば慣習なんです」(弁護士・小久保哲郎さん

じっさい「扶養照会」を行うことを控えている自治体もある。

東京・新宿区の実施率は32%、一方、静岡県浜松市や岐阜県、佐賀県の自治体では90%を超えている(2018年厚生労働省資料)。

「照会は親族がいる人に限られますから、90%という数字は親族が見つかったほぼ全員でしょう。私自身、役所で生活保護担当になった当初は『親族には照会するもの』と先輩から教えられ、それに従っていました。今思うと間違った、恥ずかしい過去です」(生活保護問題対策全国会議・田川英信さん)

高齢の親に心配をかけたくない気持ちも

年老いた裕福ではない親に問い合わせがいってしまうつらさ、父母の虐待から逃げ、隠れて暮らしている人の不安、何年も会っていないきょうだいに知られ、罵倒されたという人もいる。また、窓口で心を折られたケースも聞こえてくる。

「過労から鬱になり退職。再就職できずAVで凌いでいましたが、体調が悪化して生活保護相談に行きました。病気のこと、AVで自助努力していることなど話しましたが。親、兄弟、祖父母にまで問い合わせるといわれ、保護を諦めました」(福祉事務所に行った女性)

「出身学校の偏差値や、大学時代の友人関係まで根掘り葉掘り聞かれました。『没落したのが面白いから』と笑われ個人情報をもらされ」(関東地方の福祉事務所に行った男性)

こうした対応のひとつひとつが、困っている人の「最終的には生活保護」というセーフティネットを奪っている。

「私たちが福祉事務所の窓口に申請の同行をしているなかでも『親族への連絡は決まりですから』とか『生活保護は税金なので』などと言われます。それだけで申請を諦めてしまう人だっているのです。家族に頼れるなら、とっくに頼っているんです。生活保護は権利ということは厚生労働省も積極的に言っています。自治体の窓口の対応が大きく変わることを期待しています!」(つくろい東京ファンド・小林美穂子さん)

これまで誤魔化され、隠されていたこの国の貧困を噴出させた「コロナ」。緊急事態宣言下に支援を続けた小林さんらの著書『コロナ禍の東京を駆ける』(岩波書店)には、追い詰められた「普通の」人たちの姿とともに「一緒にやっていきましょう」という力強いメッセージも、記されている。

「扶養照会をやめてください」という要望に、現在までに5万5千筆の署名が集まった。会見する田川さん、小久保さん、稲葉さん、小林さん(左から)

安心して寝られる場所が欲しい

「お金と尊厳と取引させられるような、今の生活保護のあり方を変えなければ。2012年に『生活保護バッシング』がありましたが、日本の不正受給は、予算ベースでわずか0.5%程度です。困ったときに利用できる制度であるために、まず、本人の承諾なしに親族に照会をしないという運用に変えることが急がれます」(稲葉さん)

困っている「今」をしのげる使いやすい制度になれば、外で寝なくて済む。飢えて命を落としたり、経済苦によって自ら命を断つ人はいなくなるだろう。

相談窓口に行った経験のある男性は、こう言う。

「扶養照会を受けて、80代の母は震え上がって電話をかけてきました。窓口で、税金を納める余裕がないと相談したら、おまえには発言権も意思表示の権利もない!という態度をとられました。貧乏は犯罪なんですか?」

貧乏は罪ではない。

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