実の娘に性交を強要した父に「懲役6年」判決の妥当性 | FRIDAYデジタル

実の娘に性交を強要した父に「懲役6年」判決の妥当性

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福島地裁 写真:共同通信

当時16歳だった実の娘と性交したとして、監護者性交等罪に問われた男性(40代)の差し戻し審判決が1月15日に福島地裁で開かれ、柴田雅司裁判長は男性被告に懲役6年の判決を言い渡した。

性犯罪被害者支援を主に行う、らめーん弁護士は、監護者性交等罪についてこう解説する。

「監護者性交等罪は、平成29(2017)年7月に新設された犯罪です。新設前は、監護者が、13歳以上18歳未満の子を性交した場合は、暴行脅迫要件を満たさないことが多く、児童福祉法違反で起訴されることが多かったのですが、児童淫行罪の法定刑は、強姦罪と比べ、非常に軽いという問題がありました。

監護者性交等罪が新設されてからは、法定刑の下限は、強制性交等罪と同じく、懲役5年なので、ずいぶん重く評価されるようになりました」

娘の証言を「ウソ」と無罪主張した父親

判決によると被告は2018年8月3日、父親の立場に乗じて、自宅で同居する娘・Aさんと性交したという。公判では「Aが意図的に虚偽の被害申告をした」として無罪を主張していた。

差し戻し前の一審、福島地裁郡山支部は2019年3月「Aの証言は信用でき、被告人が監護者としての影響力に乗じて娘と性交等をしたと認められる」として、被告に対し懲役6年の判決を言い渡したが、被告が控訴。仙台高裁が同年12月「審理が尽くされていない」ことを理由に、一審判決を破棄し審理を地裁に差し戻していた。

争点となっていたのは犯行時刻をめぐるAさんの証言だった。被告による「明日の午前中にな」という発言がいつなされたのか、そして犯行時刻がいつだったのかということに関してだ。差し戻し審判決では、それらについて、Aさんの証言が事実と整合しないと認め、それはAさんのが記憶が曖昧なまま、証言の重要性を認識せずに供述したためだと指摘。またそうなった原因に「差し戻し前の公判を担当した検察官の不十分な訴訟活動」があると述べた。

さらに犯行時刻についてのAさんの証言が曖昧であっても、根幹部分である「Aさんが本件被害に到るまでの経緯や8月3日の午前中に本件被害に遭ったこと、および本件被害の内容についての発言」は信用できると認めた。

判決によると、被告は事件当日の午前中、自宅でAさんと口腔性交および性交を行った。

その日Aさんは、起床してから居間の被告人のもとへ行ったところ、被告から「一緒にお風呂に入るぞ」と言われたという。これまでも説教をされながら胸を触られたり膣に指を入れられたりしたことがあったため「このときも自分が悪いことをしたと理解させるために風呂で胸を触ったりするのだ」と思ったのだそうだ。ところが風呂で体を触られたのちに、風呂から出て居間に行くと被告から「服を脱げ」と命じられ、性交されたという。

常習的な性的虐待では日時の記憶が曖昧になりがち

前出のらめーん弁護士は、Aさんによる犯行時刻に関する証言について次のように分析する。

「刑事訴訟法上、全ての犯罪は、犯行の日時・場所・態様を特定して起訴することが必要です。しかしながら、監護者性交等罪は、継続的・常習的な性的虐待の末になされるものが多く、性的虐待自体が日常の中に溶け込んでしまい、日時の記憶が曖昧なことが非常に多いのです。

この件は事件の日がたまたまお祭りの日だったことから、日にちの特定はできたのですが、性交に至るまでの経緯は、普段の性的虐待と同じような流れをたどったことから、時間に関する供述が曖昧になったのだと考えられます」

Aさんは被害にあったのち、周囲にそれを告白していた。まず友人のCさんに対して、事件直後とされる時間帯に送ったLINEは次のようなものだった。

「ついにね」
「やりましたよね」
「おやと」
「フェラもしましたさ」
「なまですよ」

これに対してCさんが「中出し?」と返信したことに対しAさんは、次のように返信した。

「出してないね」
「途中でやめました」
「処女がおやっていうね」
「おわったよね」
「いやもう男子が無理な希ガス」
「彼氏なんて一生いらないわ」

続いて、高校の同級生で同じ部活のBさんは、差し戻し前の公判に証人出廷し、尋問にこう語っていた。

「事件前日の8月2日、Aさんが『被告人から説教を受けるときに胸を揉まれるなどの性的被害にあっている』ことを相談するメッセージを送ってきた。
事件当日の昼過ぎごろ、Aさんは、部室にいた私を部室の外の木陰に呼び出して話をしようとしたが、泣き出してしまって、しばらく話をすることができなかった。

そのあと『お父さんに入れられた』『服を脱げなどと言われ、これは教育の一環だなどと性的暴力をされた』などと、被害を告白した」

また、Bさんは、この日の夜9時過ぎごろ、Aさんから次のようなLINEのメッセージを受け取った。

「家に入ったやん その時のこと蘇るやん まじでおかしくなるよね」
「気持ち悪すぎて」

こうした告白を受けてBさんは、Aさんに対して、警察や母親に相談した方がいいと伝え、Aさんは事件から2週間後の8月17日に警察署を訪れ被害を申告した。母親に被害を打ち明けたのは、そのあとだった。

「周りに迷惑をかけたくなかったし、卒業まで我慢すればいいと思ったので、すぐに警察にはいかなかったが、最終的にこれ以上我慢できないと思って警察に行った」

Aさんは差し戻し前の公判でこう証言しており、郡山支部も「被害申告までに時間を要した理由を合理的に説明できている」と、Aさんの証言の信用性を認めていた。そして今回の差し戻し審でも同様に、Aさんの証言の信用性が認められた。

被告は判決言い渡しの終盤、あらためて懲役6年という主文を伝えられているなか、大声で「なんでもありなのかよ!」と怒鳴った。閉廷後も、「おかしいだろ! なんでもありなのかよ!」と言いながら証言台を右手で殴りつけ怒りをあらわにし、のちに控訴している。

これまで児童福祉法違反として軽微に扱われてきた親による性虐待。「監護者性交等罪」新設により、今後もしかるべき量刑が下されるようになるはずだ。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

  • 写真共同通信

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