最後のラグビートップリーグ開幕!東芝リーチが挑む「新たな強敵」

2022年1月から新リーグ移行するため、今季がラストシーズン

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昨季のトップリーグ開幕節でサントリーSH流大を吹き飛ばしたリーチ(中央)。日本代表のチームメートにも容赦なかった(写真:アフロ)

国内ラグビートップリーグの開幕節では希少な豪華共演が見られる。トヨタ自動車と東芝との一戦で、2019年のワールドカップ(W杯)日本大会で8強入りしたチームの主将が3人揃ってメンバー入りした。ニュージーランド代表だったキアラン・リード、オーストラリアを引っ張るマイケル・フーパー、そして日本の象徴たるリーチ・マイケルの対決に注目だ。

下北沢のライブハウスでボン・ジョヴィ、KISS、X JAPANが演奏するようなものか。

2021年2月20日。会場である愛知・パロマ瑞穂スタジアムは最大で約1万人収容と中小規模。新型コロナウイルスの感染拡大下とあり、客入りは5000人程度に限られうる。

その舞台でそろい踏みするのが、世界を代表するリーダーたちなのだ。

東芝は日本代表で68キャップ(代表戦出場数)を持つリーチを先発に、トヨタ自動車はオールブラックスことニュージーランド代表で127キャップ獲得のリードをスターター、ワラビーズことオーストラリア代表で105キャップを掴んだマイケル・フーパーをリザーブに並べる。

三者とも激しくぶつかり合うバックロー(フランカー、ナンバーエイト)が定位置だ。直接のマッチアップも期待される。

W杯2大会連続で日本代表の主将を張ったリーチは、身長189センチ、体重113キロの33歳。機動力と強靭さを活かし、突破、タックルを重ねる。日本全土が自粛を強いられた昨春には、身体の「あちこち」を手術。勤続疲労を回復させている。

東芝では選手会長を務める。

ニュージーランドで生まれ、15歳で来日し、25歳になる2013年に日本国籍をとったリーチは、日本大会前の日本代表では「潜在意識を強くしたい」と「日本ラグビー界の留学生の歴史」や「第二次世界大戦」などについて多国籍のメンバーたちへ講義。無形の結束力を醸成し、史上初の8強入りを促した。

件の選手会長としての取り組みも、どうやらそれに似通っているようだ。リーチと同期入団の森太志は証言する。

「マイケルは選手会の選手たちと、月に約1~2回は『うちのチームはこういうチームだよね』と再確認するための活動をしてくれている。それで雰囲気がよくなっていると感じます」

2015年、イングランドW杯前に行われた代表戦。オールブラックスのリード(左)の突破を豪州代表のフーパー(中央、7番)が阻止(写真:アフロ)

リーチが芝の外で仲間を束ねる一方、元オールブラックス主将のリードは芝の上での仲間を引っ張る。

2016年からの約4年間、W杯3連覇を目指す常勝集団で主将を任された。2019年の日本大会こそ3位に終わるも、加入2年目となる極東のチームでも共同主将を任される。

「試合中のハドル(円陣)では、長々と話をすると選手の耳にも入ってこず、次の行動に切り替えるのは難しい。そこでリードはキーポイントだけを伝えます。正確なパスのためにハンズアップ(両手を胸の前で揃える動作)をしようとか、点を取られた後なら次のキックオフで何をするかとか、チームが同じ絵を見られるように持って行くやり方をしています」

リードと並ぶ共同主将の茂野海人がこう感心する傍ら、身長193センチ、体重110キロで空中戦にも強い35歳は聡明に微笑む。

「(チームをまとめるには)選手ひとりひとりを理解するのが大事。(気持ちの)スイッチの入れ方はそれぞれに違います。こちら側へ引き寄せるようにしたほうがいい選手もいれば、引き離すほうがいい選手もいる。その判断においては、自分の経験が糧になっていると感じます」

身体の大きいリーチやリードに対し、フーパーは身長182センチ、体重101キロと世界的には小柄。それでも「ラグビーは体格に関係なく全員ができるもの。だからこそグレート」とフーパー。タフなタックルとジャッカル(相手の球へ絡むプレー)で地上戦を支える。

W杯の日本大会では8強入りに終わるも、イングランドでの2015年大会ではニュージーランド代表に17―34と迫って準優勝。思えば、そのファイナルの直前にリーチが両軍バックローについて語っていたものだ。

日本代表が歴史的3勝を挙げてブームを巻き起こしていた折、無料通話アプリの「LINE」による取材で決勝でのニュージーランド代表勝利を予想。その一因にリードら「バックローの動き」を掲げた。自分のするポジションが勝負を左右しうると、無意識的に伝えているような。

「(リードらバックローは)予選プールではタックルミス、被ターンオーバーが多かったのですが、決勝トーナメントではタックル、ボールキャリーで(試合の)流れを変えた。観ていて楽しかったです」

かたやオーストラリア代表のバックローについては、フーパーら仕事人が並んだ点に注目。自国へも視線を向けた。

「彼ら(フーパーのような選手)を見ていると、日本人は(身体が)小さいからできない(世界で戦えない)という言い訳は成り立たなくなる」

昨年12月、オールブラックス戦で突進するフーパー。現役バリバリの代表だ(写真:アフロ)

リードとフーパーは、毎年、ブレディスローカップやラグビーチャンピオンシップという大会でしのぎを削ってきた。

トヨタ自動車は2020年のシーズンから、日本大会までオールブラックスを指揮したスティーブ・ハンセンをディレクター・オブ・ラグビーに、フーパーがいたワラターズで指導歴のあるサイモン・クロンをヘッドコーチに据えていた。

いずれも指導陣との関係性、W杯を通して感じた日本のラグビー熱や人の温かみに影響され、それぞれのタイミングで来日したのである。

そのためリーチを含めた三者の関係について聞かれれば、リードはフーパーへの、フーパーはリードへの談話に多くのボリュームを割く。

「2人はもともと敵だったから、トヨタ自動車の日本人選手からもその点をよくいじられます! フーパーはプロフェッショナルで、トヨタ自動車にたくさんの価値を与えてくれる。残念なのは、コロナ禍のために彼とチームバブル以外で接することができないことです。本来ならお酒やご飯の会などでキャッチアップしたかった。もっとも、いまの段階でもいい関係を築けています」(リード)

「リーチに関してはあまりよく知らないが、ワールドカップのパフォーマンスを見ればとてもいい選手だとわかります。リード相手には、たくさんの負けを経験しています。今回、味方同士という立場でプレーできるのは楽しみです」(フーパー)

同じ時代を生きる世界的なバックローが競演する機会は今後、そう何度もないだろう。というのもフーパーは1年契約。翌年以降は母国で代表入りを目指す可能性が高い。ましてこの国では、海外で代表歴のある選手の同時出場は1チームあたり原則2名までとなっている。3人が同じ瞬間、同じフィールドに並ぶとしたらそれだけで希少な瞬間だ。

「ファーストラウンドはタフなゲームになりそう」とフーパー。14時に始まるその一戦は「J SPORTS」や「ABEMA TV」が放映する(文中敬称略)。

  • 取材・文向風見也

    (むかいふみや)スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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