『ゴッドタン』「腐り芸人セラピー」がお笑いファンの胸打つワケ

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コロナ禍に急増中!? 心に闇を抱えた芸人たちの救済企画 

数々の名物企画を生み出してきた『ゴッドタン』(テレビ東京系)の「腐り芸人」が人気だ。斬新な企画や無名タレントの発掘などで、業界視聴率が高いことでも有名なこの番組、その『ゴッドタン』の代名詞と言えるのが「マジ歌選手権」なのだが、実は「腐り芸人セラピー」も裏代名詞と言えるくらいの人気企画。  

回を重ねるごとにセラピーを受ける芸人たちの抱える闇や腐り具合もヒドくなり、見ている方もヒヤヒヤする。しかし、最終的にはきちんと笑いに昇華され、腐り芸人たちを見る目が変わっているから不思議だ。  

また、2月11日(木)に配信された、『ゴッドタン 腐り芸人オンラインセラピー~絶対にピー音が入らないオンラインライブ~』では、販売されたチケット数が約15000枚を上回り、16000人が同時リアルタイム視聴していたそう。これらの数字からも、「腐り芸人セラピー」の人気の高さがうかがえる。 

多くの人を引き付ける「腐り芸人セラピー」の魅力とは一体何なのかと考えたとき、「面白い」以外の理由が見えてきた。

テレビ東京 「ゴッドタン」公式サイトより

相談者に愛ある強烈なムチを打つ“腐り芸人三銃士” 

かつて、お笑いコンビは仲が悪いものだと思われていた。しかし時代は流れ、近年のお笑いコンビは「仲の良さ」が売れる条件のひとつになってきた。そんな中、時代を逆走するように生まれたのが「腐り芸人」という言葉だ。  

「腐り芸人」とは、現代のバラエティー番組やお笑いに対応できず、心に闇を抱えるようになり、やがて孤独の中で腐ってしまった芸人たちのこと。そんな「腐り芸人」たちを救済するために立ち上げられたのが、「腐り芸人セラピー」という企画だ。 

このコーナーに欠かせないのは、“腐り芸人三銃士”と言われているインパルス・板倉俊之、平成ノブシコブシ・徳井健太、ハライチ・岩井勇気の3名。彼らがセラピストとなって、相談にやってくる腐り芸人たちに、独自のダメ出しやアドバイスを送るというもの。

お笑いとストイックに向き合っているがゆえの正論という名の毒舌を乱射するのが、ハライチ岩井。「マジ歌選手権」で「お笑い風」という言葉を生み出した、腐り芸人の走りとも言える存在だ。3人のカウンセラーの中で一番後輩に当たるが、先輩相談者にもひるむことなく、容赦ない正論を浴びせる。

たとえば、第5回目セラピーのゲストのうしろシティの金子が、「過去に他の芸人のラジオ番組に乱入を試みたが失敗に終わった」と語ると、「今まで、女性人気を得るようなやりかたをしてきたのに、急に『芸人魂あります』という感じを出して乱入した所で、身の程に合っていないからすぐにバレる」と指摘。相談者が抱える独りよがりな悩みにスパっとメスを入れて解決した。これ以外にも、たくさんの相談者たちを論破していく様には、清々しささえ感じる。

インパルス板倉は、深い闇を歩く中で気づいた不条理ややるせなさを受け入れ、それを現実世界に落とす天才。ニヒルで辛辣なイメージが強く、シビアな現状分析と辛口なアドバイスを送ると思われがちだが、意外に救いの言葉を送ることもある。というのも、板倉は唯一「腐り芸人セラピー」内で、セラピーを受ける側としても参加しているのだ。

インパルスとしての活動再開後、相談者となってセラピーを受けた際に、板倉が腐りの世界にハマっていたことがコンビの真の問題だったと発覚。岩井から「インパルスの癌は板倉さんなんじゃないか」、徳井からは「堤下さんは板倉さんの前だとビビって半分くらいしか出せてない」といわれ、最終的には自分に非があると認めた。

こういった経緯もあり、第6回目のセラピーでは、ゲストのザ・ギースが、近年のお笑い第6世代と第7世代の活躍の歴史を紐解きながら、「第7世代の勢いに飲まれて自信喪失している」と吐露すると、「『第7世代』というワードが生み出された時点で、(その上の世代は)すでにやられてるんだから、『第7世代』の言葉は使わない方がいい」という、誰もが納得するアドバイスを送った。

平成ノブシコブシ徳井は、“腐り芸人三銃士”の中で人格者とも呼べる、よきアドバイザー。悟りの境地に達していると言っても過言ではなく、すべてを優しく包み込むようなあたたかいアドバイスで、注目を浴びることが多い。また、「腐り芸人セラピー」で見せた心優しい分析キャラをきかっけに、ネタ番組にゲストで呼ばれたり、若手のネタバトルライブの審査員をつとめたり、週刊誌系のニュースサイトで連載記事も持っている。

情にあふれるアドバイスがウリの徳井が、意見の違いから板倉とやりあったのが、先ほども出てきたザ・ギースがゲストの第6回目のセラピーだ。中堅芸人エールを送る板倉に対して、「客観的に見て、中堅より若手を応援したくなるのは普通」と相反する持論を展開。相談者そっちのけで、お笑い好きゆえの火花を飛ばし合った。

言うまでもなく、「腐り芸人セラピー」の見どころは相談者への辛口悩み解決劇だ。ただし、それはセラピストたちのガチ加減の上に成り立っているということが条件。どの回においても、セラピストたちは自分を隠さずに、真正面から相談者に向き合っているから、毎回ちがうドラマが生まれるのだろう。そして私たちは、無意識のうちにそれを知っているから、彼らに新たな期待を持つのだろう。

このコーナーに欠かせないのが、“腐り芸人三銃士”と言われているインパルス・板倉俊之、平成ノブシコブシ・徳井健太、ハライチ・岩井勇気の3名(イラスト:まつもとりえこ)

最新回では解散の危機が迫る「流れ星」を救った

そんな厳しくも愛情あふれるセラピストたちが苦戦したのが、昨年11月に放送された流れ星がゲストの回。通常は1回の放送内に複数のコンビがセラピーを受けるのだが(例外あり)、流れ星の場合は闇が深すぎるために、急遽2週にわたって放送された神回だ。

流れ星は、「THE MANZAI」で一躍人気となったが、今となっては解散の危機が噂されるような不仲コンビとして知られるように。「ネタやギャグを作っているのは自分なのに、ちゅうえいばかりが注目される」と、いわゆるじゃない方のTAKIUEが苦情を呈する形ではじまった。しかし、詳しい話を聞いてみると、すべてのネタやギャグをTAKIUEが一人で作っているわけではない上に、コンビにとってマイナスに繋がる言動を度々行っていたことが発覚。TAKIUEが抱える不平不満は、自らが招いてしまっている節もあり、次から次へとTAKIUEが不満を吐く度に、ちゅうえいが論破していった。

セラピストたちは隙を見て間に入ろうとするも、プロレスではなくマジの言い合いをする2人の勢いに負けて、ほとんどセラピストらしいことができず、番組は流れ星の独壇場に。“腐る”を通り越して“憎しみ合う”域に足を踏み入れていた。最終的に、岩井・板倉・徳井が、それぞれのコンビのスタンスやルールを紹介していく流れになり、無事にセラピストとしての仕事をやり遂げた。

アドバイスにスカッとしつつ裏では相談者に自分を投影 

どんなに明るく元気いっぱいなお笑い芸人でも、実際には弱肉強食な世界に身を置き、明日をも知れぬ毎日を過ごしていることが多いのだろう。その上、売れる確率は実力に比例するとは限らない。目には見えない運や人脈によって左右される部分もおおいにあるようだ。 

夢や希望を持つことは大切だが、キレイごとだけでは生きていけない。「腐り芸人セラピー」は、そんなリアルを私たちに教えてくれる。 

個人でメディアを持ち、コンテンツを作れるようになったいま、表舞台と裏舞台との間に大きなギャップが存在することへの理解も浸透していき、表舞台以上に裏舞台が注目されるようになってきた。だからこそ、明るく楽しそうに見える芸人たちが、裏でどんな悩みを持っていて、どんな問題を抱えているのかを知りたいのだ。

セラピストたちの辛口アドバイスにぐうの音も出なくなっている相談者を見て、どこかスカッとした気分になりつつも、現状に満足できなかったり、不満を抱えていたりする人は、意外と多いのだと胸をなでおろしている自分もいる。 

恵まれた立場にいるとは言い切れない3人が放つ、「正しいと思うこと」、「間違っていると思うこと」には、矛盾や打算といったものがない。彼らの愛の鞭を受ける相談者が自分と重なる部分もあるから、面白いだけじゃなく納得感も味わえる。そんな「お得な番組」だから、たくさんの人が「腐り芸人セラピー」放送回を待ってしまうのだろう。 

  • 安倍川モチ子

    webを中心にフリーライターとして活動。現在は、「withnews(ウィズニュース)」「Business Jounal(ビジネスジャーナル)」などで執筆中。また、書籍や企業PR誌の制作にも携わっている。専門分野は持たずに、歴史・お笑い・健康・美容・旅行・グルメ・介護など、興味のそそられるものを幅広く手掛ける。

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