アディダスとリーボックだけじゃない…あのブランドの意外な関係 | FRIDAYデジタル

アディダスとリーボックだけじゃない…あのブランドの意外な関係

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先日、ドイツのアディダス本社が傘下にあるリーボックの売却を正式に発表しました。理由は業績不振で売却先はまだ決まっていません。とりあえず売却するということだけを発表したところです。 

売却が発表されるとSNSやYahoo!ニュースのコメント欄には「リーボックがアディダス傘下にあったとは知らなかった」「アディダスがリーボックを買収していたことを知らなかった」というコメントが多数寄せられましたが、アディダスがリーボックを買収したのは今から15年も前の2006年であることから、アパレル業界では長い間の常識でした。

アパレル業界に限らず「業界の常識は世間の非常識」という事柄が多く存在します。今回は、アパレル業界では常識とされていますが、世間的にはあまり知られていないと考えられる「ブランドの意外な関係」をご紹介したいと思います。 

アメリカ本国では2003年にナイキがコンバースを買収。写真は2018年に海外でのみ発売されたFear of God Essentials x CONVERSE(写真:アフロ)
アメリカ本国では2003年にナイキがコンバースを買収。写真は2018年に海外でのみ発売されたFear of God Essentials x CONVERSE(写真:アフロ)

本国アメリカで、「コンバース」は「ナイキ」の傘下

まず、アディダス&リーボックに匹敵する意外な関係といえば、ナイキ傘下のコンバースが挙げられるでしょう。どちらもアメリカが本社で多くのファンを持つスポーツブランドですね。しかし、米コンバースは2001年に米連邦倒産法第11章の適用を申請して倒産しました。今から20年前のことです。その後、伊藤忠商事も資本参加してのコンバース再建が始まります。

日本では2002年に伊藤忠商事が全額出資したコンバースジャパンが設立されました。一方、アメリカ本国では2003年にナイキがコンバースを買収します。今の20代の皆さんが親しんでいるコンバース商品はナイキに買収された後のコンバースだということです。ナイキとコンバースの関係は今のところ良好そうで、リーボックとは異なり、売却の噂は全く出ていません。仲良きことは美しきかな、ですね。

ダイアナ妃はピンクのコンバース・オールスターを愛用
ダイアナ妃はピンクのコンバース・オールスターを愛用

セレブに人気の「バーニーズニューヨーク(日本)」は「セブンアイ」が運営

続いてはセブンアイホールディングスとバーニーズジャパンです。セブンアイといえばイトーヨーカドーやセブンイレブンの会社として知られていますが、アメリカの高級百貨店「バーニーズニューヨーク」を日本で運営するバーニーズジャパンを2015年に買収しました。当時のセブンアイは、なぜか百貨店に執着しており、そごう西武も子会社化しています。

しかし、実際のところ百貨店運営はあまり上手く行っておらず、そごう西武もパッとしませんし、バーニーズニューヨークもイマイチです。今年2月末にはバーニーズニューヨーク新宿店が閉店します。

一方、本国のアメリカでもバーニーズは厳しい状況が続き、2019年に経営破綻してしまいました。その後、ブランド管理会社オーセンティック・ブランズ・グループに買収されて存続しています。日米ともに百貨店運営は厳しい状況にあるということです。

本国のアメリカでは2019年に経営破綻
本国のアメリカでは2019年に経営破綻

あの「GTホーキンス」の商標は、「ABCマート」が所有

店がありすぎてわけがわからないABCマートですが、単なる安売りのスニーカー店ではありません。結構ブランドを所有しているのです。例えば、GTホーキンス。95年にABCマートがブランドを買い取っています。GTホーキンスといえば、おじさん世代には懐かしい90年代前半に大人気だったワークブーツブランドですが、ABCマートの自社ブランドとなってからすでに25年が経過しています。

またVANSのスニーカーもABCマートがライセンス生産しています。VANSというブランドはアメリカのVFコーポレーションが所有するブランドで、日本ではABCマートがライセンス生産で展開しています。VFコーポレーションというのは多数の有名ブランドを所有している会社で、VANSのほかにもザ・ノースフェイスやディッキーズを所有しているばかりでなく、昨年晩秋にはあの超人気ブランドであるシュプリームも買収しました。

結構ブランドを所有しているABCマート。単なる安売りのスニーカー店ではありません
結構ブランドを所有しているABCマート。単なる安売りのスニーカー店ではありません

ポロシャツで有名な「フレッドペリー」の親会社は日本の「ヒットユニオン」 

ポロシャツの有名ブランドといえば「ラコステ」と「フレッドペリー」が両巨頭ではないかと思いますが、このフレッドペリー」は実は日本のスポーツウェアメーカー、ヒットユニオンの傘下にあります。おじさん世代だとヒットユニオンというメーカー名をご存知の方も多いのではないかと思いますが、90年代からフレッドペリーが主力商品となっていました。

95年にヒットユニオンがフレッドペリーを買収しているので、もう25年も展開しています。ヒットユニオンは売り上げ規模こそそれほど大きくありませんが、ブランドの買収や誘致には積極的で、プーマアパレルジャパンにも出資しています。2013年にはラベンハムを買収し、2018年には人気の帽子ブランド「CA4LA(カシラ)」も買収しています。

創業者のフレッドペリーは、1934年にイギリス人で初めてウインブルドン大会でシングルス優勝したのち、前人未到のウインブルドン3連覇を達成。その時代のファッションリーダーとしても人気だった。写真は、ウインブルドンにある銅像
創業者のフレッドペリーは、1934年にイギリス人で初めてウインブルドン大会でシングルス優勝したのち、前人未到のウインブルドン3連覇を達成。その時代のファッションリーダーとしても人気だった。写真は、ウインブルドンにある銅像

「アディダス」と「プーマ」の創業者は兄弟だった 

最後になりますが、傘下という形ではありませんが、業界では広く知られていますが一般消費者には知られていない関係というと、アディダスとプーマの創業者が兄弟だったということでしょう。アドルフ・ダスラーとルドルフ・ダスラーという兄弟はスポーツ用品メーカーを創業しました。

しかし、兄弟は仲たがいで決裂し、アドルフ・ダスラーは自身の名前を略して「アディダス」という社名にし、ルドルフ・ダスラーは「プーマ」を創業しました。両ブランドとも今ではダスラー家の手から離れていますが、この逸話は業界では非常に有名です。

日本でも似たような会社があります。ジーンズメーカーのビッグジョンとボブソンは創業者が兄弟でした。ビッグジョンを創業したのは長兄の尾崎小太郎氏、ボブソンの創業者は次兄の尾崎利春氏と三弟・尾崎宗次郎氏でした。

90年代後半から2000年代前半にかけて両社を取材したことがありますが、その時にはもう親戚づきあいはないとのことでした。ちなみにビッグジョンは創業家の手を離れ、ボブソンは紆余曲折を経てまた創業家の手に戻って来ています。

  • 南充浩(みなみみつひろ)

    1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。

  • 写真アフロ

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