大河『青天を衝け』好発進 「渋沢栄一銘柄」は買いか否か | FRIDAYデジタル

大河『青天を衝け』好発進 「渋沢栄一銘柄」は買いか否か

新1万円札の顔にもなる「日本資本主義の父」が関わった企業はいま……

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NHK大河ドラマ『青天を衝(つ)け』の主人公として、また’24年度から流通する新1万円札の顔として渋沢栄一翁に注目が集まっている。渋沢翁が91年の生涯で関わったとされる企業は500社以上。今も多くが上場企業として商いを続けている。

1929年12月19日、昭和天皇と食事をするため、皇居を訪れる渋沢栄一子爵。左は兼子夫人(写真:共同通信)
1929年12月19日、昭和天皇と食事をするため、皇居を訪れる渋沢栄一子爵。左は兼子夫人(写真:共同通信)

「現在の清水建設やサッポロビール、みずほ銀行、王子製紙、東洋紡、IHI、帝国ホテルなど、渋沢が経営に関わった会社は枚挙に暇(いとま)がありません。渋沢とほとんど同世代で、三菱グループの基礎を築いた岩崎弥太郎が自分の富を囲い込んで財閥を作ったのに対して、渋沢は自らの財閥を作りませんでした。

たしかに渋沢は大資産家ではありましたが、自分の富を追求するよりも、日本の近代資本主義を推進するプロデューサーの立場を選んだのです。その姿勢こそが今も語り継がれる魅力につながっていると思います」(近現代の企業史に詳しい経済ジャーナリストの國貞文隆氏)

渋沢翁の哲学は著書『論語と算盤(そろばん)』に描かれているように、道徳(=論語)と経済活動(=算盤)を両立させることにある。國貞氏が続ける。

「渋沢はあくまで国益や公益に重きを置きました。さらに正しい事業を行えば、公益と私利は一致するという『道徳経済合一説』を唱えることで、政財官界から幅広い支持を集めたのです」

渋沢が設立に携わった数々の企業にはこの哲学が脈々と受け継がれている。たとえば、最近話題のSDGs(持続可能な開発目標)の実現やESG(環境・社会・企業統治)への取り組みに積極的な企業が、『渋沢銘柄』には多い。

フィスコの企業リサーチレポーターの馬渕磨理子氏が注目銘柄を挙げる。

「海上土木大手の東亜建設工業は、実業家・浅野総一郎が渋沢らの支援を受けて始めた港湾開発が祖業です。昨年5月に発表した中期経営計画では、ESG経営について言及。洋上風力発電を通じた再生可能エネルギーの普及や、災害から暮らしを守るためのインフラ整備、海洋マイクロプラスチックの分離・回収など、その取り組みは多岐にわたります。

同じく浅野総一郎が渋沢らの紹介で国から払い下げてもらったセメント工場をルーツに持つセメント国内最大手の太平洋セメントは、再生可能エネルギー関連銘柄としても注目されています。同社はセメント製造の過程で発生する排ガスから二酸化炭素を分離・回収する実証実験を行っており、’30年度までの実用化を目指しています」

株式アナリストの鈴木一之氏は、狙い目の『渋沢銘柄』として、株価のわりに配当金が多く、配当利回りが高い企業に注目する。

「5大ゼネコンの一角を占める清水建設は、新型コロナの影響で民間工事の受注減が業績に響いていますが、官公庁からの受注は安定的に推移しています。コロナ禍が徐々に落ち着けば、業績も復調するでしょう。将来的には非建築分野である再生可能エネルギーのプラント建設に力を入れていくはずです。

東洋紡は、渋沢の命名で『東洋一の大紡績(会社)に』との期待が込められています。今では世界有数の紡績会社になったのみならず、プラスチックやフィルム、バイオなど総合化学会社へと発展しました。大きな株価上昇が期待できるわけではありませんが、配当利回りは約3%と魅力的。長期保有にふさわしい銘柄と言えるでしょう」

渋沢の名を冠した企業

渋沢翁は日本最古の銀行である第一国立銀行や日本初の公的な証券取引機関である東京株式取引所(現・東京証券取引所)の設立にも尽力。日本の金融業界の立て役者でもある。第一国立銀行をルーツに持つ総合金融グループのみずほフィナンシャルグループや、東証を傘下に持つ日本取引所グループにも注目だ。

「みずほフィナンシャルグループはメガバンクの一角ですから、経営的にも安定しています。一方で、PBR(株価純資産倍率)は0.45倍と超割安。ここからの値下がりリスクは低いにもかかわらず、配当利回りは5%弱と非常に高い。みずほ銀行に預金している余裕資金があるなら、みずほフィナンシャルグループの株を買ってもいいのではないでしょうか。

また日本取引所グループの配当利回りも約2%と悪くありません。同社が傘下に持つ東証は渋沢の私邸跡の隣にあり、兜町はまさに渋沢のお膝元。その意味でも同社は『渋沢銘柄』の代表格と言っていいでしょう。株の取引のみならず、さまざまな金融商品に取引分野が広がることで、同社のビジネスも拡大が期待できます」(証券アナリストの松下律氏)

唯一、渋沢翁の名前を冠した企業が倉庫準大手の澁澤倉庫である。代表的な『渋沢銘柄』として同社を挙げる識者も多い。証券アナリストでフェアトレード代表の西村剛氏はこう話す。

「倉庫・物流企業なので、コロナ禍の中でも業績は安定しています。PBRも0.8倍と割安で、出遅れ銘柄として手堅いと見ています。首都圏を中心にオフィスビルを手がけていますが、コロナの影響も限定的でした。中長期の保有におすすめの銘柄です」

大河ドラマ『青天を衝け』は初回視聴率が20%と好発進した。ドラマが進展するにつれ、ますます、渋沢翁に注目が集まりそうだ。

「今回の大河ドラマはマーケットに影響すると思いますよ。時代劇だと影響は限定的ですが、今回の舞台は近代です。加えて渋沢の手がけた企業が今でも数多く残っています。ドラマが終わっても、新1万円札の発行は3年後。渋沢ブームは長期にわたって続きそうです」(西村氏)

大河ドラマの内容だけでなく、関連銘柄の値動きも楽しめそうである。

『FRIDAY』2021年3月5日号より

  • 写真共同通信

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