「女性登用」掲げる橋本聖子新会長がいきなりピンチに陥る可能性 | FRIDAYデジタル

「女性登用」掲げる橋本聖子新会長がいきなりピンチに陥る可能性

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2月24日、オンラインで出席したIOC理事会を終え、記者の取材に応じる東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長。右はスポーツディレクターを務める小谷実可子氏(写真:共同通信)
2月24日、オンラインで出席したIOC理事会を終え、記者の取材に応じる東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長。右はスポーツディレクターを務める小谷実可子氏(写真:共同通信)

東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長(56)が新生・組織委へのスタートを切った。女性蔑視と受け取られる発言で会長職を辞任した森喜朗氏(83)を巡るトラブルを払拭しようと、就任受諾会見で「女性理事の比率を40%にして、多様性と調和をしっかり打ち出したい」という公約を掲げ、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長から「最適の人事」と歓迎をされ、男女平等への遅れを厳しく批判してきた海外メディアからも評価された。

トップ交代で五輪開催に弾みをつけようとしているものの、意外にも「女性の積極登用を公約に掲げたことで墓穴を掘るのでは」という見方がある。無論、女性の積極登用の理念に反対するものは誰もいないだろう。しかしそれは、実現するにはあまりにも高いハードルなのだ。

というのも、組織委の定款は理事を3人以上35人以内と定めている(第23条)。現在の理事は34人、男女の内訳は27対7、定数35人の40%といえば倍の14人。ということは男性理事6人のクビを切らなければならない計算になる。

男性理事に「お役御免」をお願いできれば話は簡単だが、五輪開幕まで100日余に迫っているなか、大号令の下とはいえ、今まで務めてきた男性理事にいきなりお引き取り願うことは困難だろう。「政治の父」と慕う森前会長をはじめ強力な応援団がいるとはいえ、橋本会長に大ナタを振るう度胸などないはずだ。

そこで、定款を変更して理事増枠が検討され、定数を35から45にして、女性11人を選ぶと、27対18となり、40%に達する。これは一見妙案にみえるが、長年、五輪関係を取材してきたベテラン記者は次のような疑問を投げかける。

「最初に結論ありき、定款まで変えての人数合わせでしょう。比率はそうなりますが、新たに増える理事への報酬はどうなるのでしょうか。五輪経費は3兆、いや4兆円にも膨らむといわれているのに、ここで枠を増やせば、さらに出費がかさみます」

組織委の規程は「当法人の常勤の理事の報酬額は別表『報酬額表』によるもののとし、各々の理事の報酬額は報酬額表のうちから、評議員会の決議により決定する」となっている。

PDFで公表されている「東京五輪パラリンピック組織委員会の役員及び評議員の報酬ならびに費用に関する規定」より一部抜粋。ただ、どの理事が何号に該当するかは一切明かされていないため、不透明な部分もある
PDFで公表されている「東京五輪パラリンピック組織委員会の役員及び評議員の報酬ならびに費用に関する規定」より一部抜粋。ただ、どの理事が何号に該当するかは一切明かされていないため、不透明な部分もある

月10万円から同200万円の20段階に分けられ、最高は年額2400万円になる。メディアは、どの理事が何号に該当するか、開示を求めているが、組織委はホームページ上に「報酬額表」を載せるのみで、具体的な回答を避けてきた。

森前会長は「ボランティアでやっている。無報酬だ」と繰り返し述べたが、本当にそうだったのか。また、今回理事に選ばれる人たちが〝ただ働き〟になるとは考えにくい。組織委は税制上の優遇を受けられる公益財団法人という大看板を背負っているのだから、一点の曇りもあってはならない。

IOCは2015年4月、透明性のある組織運営の手本を示そうと報酬額を公表した。バッハ会長は年額22万5000ユーロ(約2877万円)、IOC委員は年間7000㌦(約73万円)のほか会議の際の日当450㌦(約4万7000円)を受け取るという。飛行機はファーストクラス、ホテルは三ツ星とスポーツ貴族といわれるIOC委員は世界中、どこへ行こうがVIP待遇を受ける。バッハ会長は昨年10月、チャーター機で来日した。公表された報酬にプラスアルファがあるとはいえ、基本額が明らかにされた。スポーツライターで国士舘大非常勤講師の津田俊樹氏は次のように指摘する。

「組織委の理事は3人でもよかったはずなのに、自薦他薦でいつのまにか上限近くまでになってしまった。今回、女性登用を成し遂げるために45人に枠を広げれば、小さな政府どころか、大きな政府になり、招致段階のキャッチフレーズだった『コンパクト五輪』がお題目だったという証しが増えます」

新型コロナウイルス感染症の影響で大会が延期され、追加経費は2940億円に上る。組織委はそのうちの1030億円を負担する。延期に伴う損害保険やスポンサーの協賛金などで財源を確保するというが、多くは公費で賄われる。

組織委は「経費節減に努める」と低姿勢だが、今回の理事枠拡大案は言行不一致、本音と建て前の使い分けと言わざるを得ない。率先して、自分たちの身を削ることなく、図体がデカくなろうが、支出が増えようがお構いなし。ひたすら、イケイケドンドンの拡大路線を突き進もうとしている。

「そんな組織委のために血税が使われるとしたら、世論は五輪開催にますます距離をおくでしょう。追加経費の一部を負担するスポンサーがコロナ禍の影響で、経費節減に四苦八苦しているのに」(前出・津田氏)

組織委は理事候補をリストアップして、近日中に理事会、評議員会を開き、決定する運びだが、残された時間は少ない。なぜ急ぐかといえば、3月10日からギリシャのアテネで開かれるIOC総会に向けて、再出発をアピールしたいからだ。拙速な判断で道を誤れば、〝聖子フィーバー〟など、あっという間に雲散霧消してしまう。

「女性理事40%」は新聞の一面トップで大々的に報じられ、世論の支持も受けた。森失言で地に堕ちた組織委の信用をV字回復させようと政界、スポーツ界が援護射撃を放つものの、フィギュアスケートの高橋大輔選手(35)の唇を強引に奪ったセクハラ・スキャンダルもある。

財政が逼迫するなか、聖火リレー、五輪開催可否という重大決断を下さなければならない時が刻々と近づく。新体制は盤石でなく、橋本会長は薄氷を踏む思いでいるのではないか。

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