SB柳田悠岐 球界最強のスイングに「我ながらエゲつない!」
独占密着インタビュー ニッポン最強のスイングを見よ
「うわっ! 我ながらエゲつないスイングですね。ヘッドがものすごいスピードで走っているから、バットが逆側にしなって見えるのでしょう。『ボールをシバき倒す』という気持ちで振っています」
自分のスイング(上写真)を見て驚くのは、ソフトバンクホークスの主砲・柳田悠岐(29)だ。
リーグ優勝は逃したが、クライマックスシリーズから日本一を狙うホークスにとって欠かせない存在の柳田。10月1日現在、打率は12球団トップの3割5分4厘、34本塁打、99打点と、”トリプル3″を達成した’15年を上回るハイペースで成績を伸ばしている。持ち味は、ニッポン最強のスイングだ。
「ヘルメットが吹っ飛ぶぐらい、思い切り振ります。インパクトの瞬間は『ガッシャーン』ではなく、最初に『グ』。『グアッシャーン!』。今季は春のキャンプから、”逆さティー”を導入しました。普通のティースタンドにボールを置くと、自分のスイングでは根元のゴムの部分に当たってしまう。ボールを遠くに飛ばすためには、ボールにバックスピンをかけなければなりません。そのために、ボールの下っ面を思い切り振り抜きたい。だから、上からボールを吊るした逆さティーで練習しているんです」
4年連続打率3割を記録する柳田が、アクシデントに見舞われたのは今年9月16日のことだ。試合前の練習中、西武の栗山巧の打球が左側頭部を直撃。救急車が呼ばれ球場は騒然となる。
「一塁側ブルペン横でストレッチをしていたら、『打球が来た』と思った次の瞬間『ガーン!』です。死ぬかと思いました。意識はありましたが、しばらくは頭がガンガン痛くてね。病院の診断は単なる打撲。こんなに痛いのに、ホンマかいなという思いでした。これで選手生命も終わったと、覚悟するほどの激痛でしたから。頭に刺激を与えないように慎重にリハビリを続け、ようやく痛みが治まり始めたのは1週間ほどしてからです。大事に至らず一番ホッとしているのは、栗山さんじゃないですか。『大丈夫か。悪かった』と、3回も謝りに来てくれましたから」
柳田は、早くも9月23日の日本ハム戦から復帰。いきなり2安打を放つなど、その後もケガの影響をまったく感じさせないフルスイングを続けている。
マンガを読んでリラックス
今季は打撃3部門で自己最高の成績を残しそうな柳田だが、実は入団当初まったく無名の選手だった。フルスイングの原点は、この低迷期にある。
「一軍の投手の球が、かすりもしなかったんです。ヒットがほしくてバットを当てにいくと、ボールを追いかける形になり体勢が崩れる。1年目はノーヒットで本気でクビを覚悟しました。目を覚ましてくれたのは王貞治会長でした。2年目の春のキャンプでこう話しかけてもらったんです。『君の持ち味はなんだ? 当てにいってどうする。結果を気にせずフルスイングしろ』と。この言葉で吹っ切れました。常にフルスイングという自分の打撃スタイルが固まると、体勢を崩されることもなくなった。少しずつ結果を残せるようになったんです」
常に全力の柳田の息抜きはマンガだ。
「高校(広島商)時代から『マガジン』『ジャンプ』『ヤングジャンプ』と、主要なマンガ雑誌はすべて読んでいますよ。プロに入ってから何が良かったかって、懐具合を気にせずマンガ雑誌を買えるようになったこと。大学(広島経済大)時代まではおカネがなくて、泣く泣く立ち読みですませることもありましたから。野球のことを忘れ、自宅の部屋でゆっくりマンガを読むのが至福の時です」
柳田の私生活は、’15年に結婚した夫人の影響を大きく受けている。とくに変わったのは食事だ。
「独身時代は試合が終わると、コンビニでカロリーの高い唐揚げ弁当などを買って、テレビを見ながらビールをグビグビ。とてもアスリートとは思えない食生活でしたね。妻には感謝しています。毎日バランスのとれた料理を作ってもらっているおかげで、独身時代とは疲れの取れ方がまったく違いますから」
トリプル3を達成した柳田の次の目標は、前人未到の”ダブル40″だという。
「40本塁打、40盗塁です。かなり難しい数字だと思いますが、目標は高ければ高いほど挑戦しがいがありますから。メジャーリーグ? ボクなんかが行くにはまだまだ……。日本でダブル40を実現できたら考えます」
ボールをシバき倒す柳田のフルスイングが、ファンを魅了し続ける。






撮影/繁昌良司