まだまだ騰がる…⁉「電気自動車」このEV銘柄がスゴイ!
電気ショックが株式市場を襲う 2035年にガソリン車はなくなるって本当?
’35年までに新車販売で電動車100%を実現する――。菅義偉総理が年初の施政方針演説でこう宣言したが、すでに一足早く世界は電気自動車(EV)の本格普及に向けて走り始めている。

「ガソリン車には約3万点の部品が使用されており、組み立てには専門性が欠かせません。そのため、部品メーカーとの密な連携が必要で、新規参入は難しいと言われてきました。他方、EVに使用する部品は約1万点と言われています。モーターで動くため、比較的シンプルな構造で、新規参入が容易とされています。
世界的に注目が集まる米アップル社のEV『アップルカー』だけでなく、アマゾンはすでに配送用EVの走行実験を始めました。ソニーも’20年にラスベガスで開催された家電・IT見本市で、自動運転EVのコンセプトカー『ビジョンS』を発表。市販はしないと言っていますが、ソニーの技術があればEVは簡単に作れるとアピールしたわけです」(マーケットアドバイザーの天野秀夫氏)
これまでガソリン車を大量生産してきた日本車メーカーは「電気ショック」に見舞われている。だが、ピンチはチャンス。これまでに培(つちか)った技術力で新しいマーケットに対応すれば、EVでもシェアを取れる可能性は十分にある。証券ジャーナリストの今野浩明氏がこう話す。
「これからは自動車を1台売っておしまいというビジネスモデルから、自動車をインターネットにつなげて他分野のサービスも提供するようになっていきます。インターネットという他産業が自動車業界に参入することで、国境を超えた自動車業界の再編が起こるでしょう。
ホンダ(本田技研工業)は’20年秋に結んだ米ゼネラルモーターズ(GM)との戦略的提携がどう結実するか見ものです。GMは『シボレー・ボルトEV』で復活を狙い、ホンダはそれにどう絡んでいくのか。ホンダ自身も昨秋に発売した『ホンダe』でEV市場に切り込みます」
ガソリン車のエンジンに代わって、EVの心臓部となるモーターの関連企業に注目するのは、絆アセットマネジメント代表の小沼正則氏だ。
「モーター関連の本命は世界的なモーター企業の日本電産ですが、明電舎とニチコンにも注目しています。明電舎は水処理関連設備など社会インフラに強みを持つ重電メーカーで、EV事業にも注力。’20年秋には山梨県甲府にEV用モーターの新工場が完成し、中国でも来年度に新工場で量産開始の予定です。ニチコンはEV用フィルムコンデンサーなどが世界的に採用されています」
EVはすべて電子的に制御され、「走るコンピューター」とも言われる。車内に使用されるパワー半導体はますます重要になっていく。経済ジャーナリストの和島英樹氏が解説する。
「パワー半導体は電源の制御や供給を行う半導体のことで、モーターを駆動させます。日本企業ではルネサス エレクトロニクスやローム、富士電機などが扱っており、生産能力を増強させています」
日本の技術力が不可欠
EVといえば米テスラが注目を集めるが、中国のメーカーも負けていない。そのため、中国に生産設備を納入する日本企業が恩恵を受けると指摘するのは、経済アナリストの田嶋智太郎氏である。
「国内外のどのメーカーがEVの覇権を握ろうと、ファクトリーオートメーション(生産工程の自動化)の分野で工場に製品を売り込む企業が強い。平田機工はEV向け製造設備を各社に納入し、ファナックはこのほどEV向け部品の工作機械を開発しました。安川電機は産業用ロボットで世界トップクラスです」
EV普及のポイントになるのが、走行距離を延ばす電池だ。現行のリチウムイオン電池の改良に加えて、液体を使わない次世代の全固体電池も注目を集める。
「田中化学研究所はEVがテーマになる際、最初に株価が反応する銘柄の代表的存在です。繰り返し使えるリチウムイオン二次電池の正極材を開発しています」(投資情報サービス会社ラカンリチェルカ代表の若杉篤史氏)
「オハラは光学ガラスのトップメーカーです。ガラスセラミック素材を利用した独自の添加剤を使って、全固体電池も開発しています」(資産運用サービスを展開するリーファス代表の西崎努氏)
石油元売りの出光興産もEV関連銘柄として名前が挙がる。フィスコのアナリスト・白幡玲美氏が言う。
「同社は石油化学に加えて、全固体電池の主要材料となる固体電解質も開発しています。そのうえ、出光興産は今年2月に日本の異業種としては初となる小型EV参入を発表したばかりです」
EVは充電に時間がかかることもネックだ。そこで走行しながらEVを充電する新技術も開発されている。
「日本精工や東亜道路工業といった企業が送電コイルを道路に埋め込み、給電ができる走行レーンを研究しています。実現すればEVでの長距離走行も可能になります」(株式アナリストの藤根靖晃氏)
EVの次の自動車として期待が集まるのが水素エネルギーで走る燃料電池自動車(FCV)だ。この分野で独走するトヨタ自動車は昨年末に2代目『ミライ』を発売している。
「将来的にFCVが普及するためには水素ステーションが必要不可欠です。この分野で注目度が高いのが、ガス専門商社の岩谷産業やパッケージ型水素ステーションを開発する大陽日酸を傘下に持つ日本酸素ホールディングスです」(株式ジャーナリストの天海源一郎氏)
株式市場は好況に沸くが、EV関連銘柄にはまだ高騰の余地がありそうだ。
『FRIDAY』2021年3月12日号より
写真:ZUMA press/アフロ(ソニー)、ロイター=共同(テスラ)