月商500万円超も続出!いま、「唐揚げ専門店」が激増する理由

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「唐揚げ」の次のキラーコンテンツとして「フルーツサンド」も急浮上中!?

ここ一年余りで、唐揚げ専門店が増えている。コロナ禍で営業時間の短縮や、席間を開けた営業を強いられ、多くの飲食店が十分な売上を確保できていない。そこでイートインで減少した売上をデリバリーとテイクアウトで補填しようと、外食各社がしのぎを削っている。 

しかし、コロナ禍前までイートイン一本で勝負していた店は、テイクアウトやデリバリーのノウハウがない。一方で、減少した売上を補填し、事業を継続するには新たな挑戦をせざるを得ない。こうした背景を受けて、存在感を高めたのが「唐揚げ」だ。 

今、「唐揚げ」が熱い!(写真はイメージ)

多くの飲食店が唐揚げ専門店を選択する理由は3つある。それが「幅広い層への人気」「原価率の低さ」「初期投資の安さ」だ。

まず唐揚げはお弁当の定番おかずになるほど、幅広い世代に人気だ。「好きなお弁当のおかず」のランキングでは必ずといっていいほど3位以内に入ってくる。他方で、共働き世代の増加や後片付けの面倒臭さもあって、揚げ物をしない家庭が増えてきた。一人暮らしだと、一度も家で揚げ物をしたことがないという人も少なくない。つまり、唐揚げは需要が高いのに、供給は少ない商品なのだ。

二点目は、鶏肉の原価率の低さが挙げられる。牛肉と豚肉に比べて、鶏肉の仕入れ価格は安い。それは販売価格にも反映されている。農林水産省が行った「食品価格動向調査(令和3年2月/2月8日~2月10日)」という、牛肉、豚肉、鶏肉の価格を100gで比べたデータがある。それによると、国産牛肉(冷凍ロース)が812円、豚肉(ロース)が261円に対して、鶏肉(もも肉)は130円と格段に安い。

その傾向は、業務用の仕入れでも同じだ。飲食店の重要な指標に「FLRコスト」がある。Fはfood(材料費)で、Lはlabor(人件費)、Rはrent(家賃)で、飲食店の三大コストとも呼ばれている。現在、コロナ禍で売上が減少したこともあり、固定費の家賃と人件費の負担が重い。だからこそ、材料費を抑えることができる鶏肉は魅力的だ。 

最後は、初期投資の安さだ。唐揚げはフライヤーがあればつくることができる。しかし、揚げ物の専門店でもない限り、フライヤーはあるものの稼働率はそこまで高くはない。そのため隙間時間を活用するだけでも、唐揚げを揚げることができる。しかも唐揚げはグルメ化されていない。銘柄や製法で選ぶ人もほとんどいないので、未経験でも手が出しやすいビジネスなのだ。

このような状況を踏まえて、現在、唐揚げ専門店が激増している。その特徴を分けると、大きく「高収益のフランチャイズモデル」と「既存リソースの活用」の2パターンにカテコライズされる。それぞれについて、さらに詳しくみていこう。 

出店費用を999万円に抑えたフランチャイズモデルを開発した「から揚げの天才」。写真は、2020年9月、埼玉県上尾市にオープンした第1号店

高収益のフランチャイズモデル「から揚げの天才」「からやま」 

高収益のフランチャイズモデルの代表は、ワタミ株式会社が展開する「から揚げの天才」と、「かつや」などを展開するアークランドサービスホールディングス株式会社傘下のエバーアクション株式会社が運営する「からやま」などだ。

特にから揚げの天才の収益性は高い。2018年11月の誕生以来、フランチャイズを中心に展開を広げ、2021年2月現在、首都圏を中心に70店舗以上を展開している。同ブランドの強さの秘密は、投資回収の速さだ。2020年9月には出店費用を999万円に抑えたフランチャイズモデルも開発し、さらに勢いを増している。同モデルなら、投資回収はなんと2年で済む。飲食店の投資回収率は20%が目安で、それを超えてくると繁盛店の仲間入りを果たす。から揚げの天才の場合、投資回収率50%なので“超”が付く繁盛店となる。 

なぜ、こうした数字が可能かというと、コストを抑えながら高い売上を叩き出せるからだ。現在、から揚げの天才は10坪で月商500万円を超える店が続出している。一方で、FLRコストはいずれの数字もかなり小さい。まずFのfood(材料費)は、スケールメリットを生かした仕入れで安く抑えることができる。また、10坪もあれば店ができるので家賃が安い。加えて、スタッフも2人いれば問題なく回せるのでlabor(人件費)とrent(家賃)も低く抑えることができる。つまり、損益分岐点を低くし、成功確率の高いビジネスを行えるのだ。

なお、コスト面でいうと、から揚げの天才はフードデリバリーサービスを活用しないで済むように、自社でデリバリー網を設けている点も見逃せない。昨今、フードデリバリーサービスが存在感を高めているが、それを活用すると加盟店は30%から40%の手数料が取られてしまう。利益の多くを持っていかれてしまうため、デリバリーでたくさん売れたとしてもなかなか儲からないのだ。しかし、から揚げの天才なら、自社サイトで注文を受けて配達までできるので手数料が掛からない。その分、利益を確保できることもビジネスの成功を後押ししている。

高収益のフランチャイズモデルでいうと、株式会社グロブリッジの「東京からあげ専門店あげたて」も昨今注目度を高めている。同ブランドは実店舗がない。フードデリバリーサービス上だけの展開で店舗数を増やしている。同ブランドの最大のメリットは二毛作ができることだ。極論をいうと、フライヤーさえあれば出店できるため、本業の営業をしながら対応できる。コロナ禍では飲食店だけでなく、カラオケ店の経営も苦しい。そうした店舗が厨房を使って同ブランの展開をするケースも増えているそうだ。

お馴染みのピザレストラン「シェーキーズ」の新業態、テイクアウトのカラアゲ専門店『カラアゲシェーキーズ』。写真は、吉祥寺の1号店

既存のリソースの活用「から好し」「カラアゲシェーキーズ」

既存リソースをフル活用したケースの代表例は、株式会社すかいらーくホールディングスが展開する「から好し」に他ならない。から好しは2017年10月に誕生したブランドだ。コロナ禍では同社のメインブランドの「ガスト」に併設しながら店舗を拡大。既存のリソースを有効に活用し、一つのタッチポイントで複数のニーズを拾い上げるモデルで存在感を高めている。この戦略が好調で、2021年4月までにガスト全店にから好しを拡大していく。

同社は2月12日に行った決算説明会において、20年12月期の最終損益が172億円の赤字となり、10年ぶりの通期赤字に陥ったと発表した。同席上でレストランチェーンから「食の総合型企業」への変革を掲げた意欲的なビジョンも発表。その実現に向けた第一フェーズを「高収益体制の確立」とし、デリバリー・テイクアウトの強化を目指す。

とはいえ、目下、同社のデリバリーとテイクアウトはかなり好調だ。デリバリー売上高は332億円で前年比139%の伸びを見せる一方、テイクアウト売上は172億円で前年比2.1倍の規模となった。同社もワタミと同様に、自社でデリバリーとテイクアウトのオーダーを受け付けるサイトを持っているだけでなく、自分たちで配達もできるため収益性が高い。2021年12月期は4億円の黒字になると予想しているが、そこに向けてデリバリーとテイクアウトが果たす役割は大きい。

また、ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を展開するロイヤルホールディングス株式会社も、2020年12月に「カラアゲシェーキーズ」をオープンさせ、唐揚げ業態の展開を始めた。一号店の吉祥寺は、既存の「シェーキーズ」にテイクアウト専用窓口を付けて唐揚げを販売するなど、今あるリソースを最大限に活用している。

コロナ禍でファミレス各社は苦しい経営を強いられている。しかし、ファミレスはメニュー提案力が高い。グルメ化がまだあまり進んでいない唐揚げがどう進化するか。唐揚げの今後の動向を占う上で、ファミレスは無視できないプレイヤーだ。

最近何かと話題の「フルーツサンド」。背景には、そんな理由が…(写真はイメージ)

唐揚げの次のコンテンツは「フルーツサンド」!?

富士経済の発表によると、2020年の唐揚げ市場は、前年比123.1%の伸びを見せ、1050億円となった。しかし、市場規模が大きくなるということは、ライバルが増えることと同義だ。しかも大手チェーンの参入も相次ぎ、競争環境が厳しくなっている。そうした状況を受けて、ここ最近、人気が上昇しているのがフルーツサンドの専門店だ。

フルーツの原価はそれほど安くはない。そのため値段も通常のサンドイッチに比べて高く、最低でも一個600円はする。それでも人気が高まっている背景には巣篭もりに彩りを与えてくれたり、フルーツが持つ免疫力を期待できたり、フルーツなので甘くても罪悪感が少なかったりといったことが考えられる。

一方で飲食店側も原価は高いものの、一度商品を決めてしまえば、アルバイトスタッフだけでもオペレーションが回せたり、小さな店でも始められたりとメリットが大きい。FLRコストを抑えることで、損益分岐を下げることもできるだろう。つまり、ある程度、計算が立ちやすいビジネスなのだ。

また、味の決め手は果物そのものの旨みとなる。 仕入れ力がないと、そうした果物を手にすることができない。自店のレベルをしっかりと表現できるビジネスという点も、出店が増えている背景にある。

コロナ禍で唐揚げ、フルーツサンドと新たな専門店が増えている。コロナの終息まで、まだしばらく厳しい経営が続く。その状況下で、収益性が高く消費者からも受け入れられるような、新しいビジネスが生まれる可能性は高い。その中で唐揚げ業態の進化も続いていくだろう。

  • 取材・文三輪大輔

    フードジャーナリスト。1982年生まれ、福岡県出身。2007年法政大学経済学部卒業。歓楽街情報誌や放射線技師専門誌、歯科衛生士求人誌などを経て、2014年に独立。外食業界を中心に取材活動を行い、2019年7月からは「月刊飲食店経営」の副編集長を務める。

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