「R-1には出れないけれど」芸歴22年の新王者の苦悶と野望 | FRIDAYデジタル

「R-1には出れないけれど」芸歴22年の新王者の苦悶と野望

芸歴22年の45歳! 『Be-1グランプリ』チャンピオン「野田ちゃん」インタビュー

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年末の風物詩番組ともいえる『おもしろ荘2021新年SP』(日本テレビ系)に芸歴22年の45歳で最年長出場。そこで披露した、明るい中年芸人感が満載の吹っ切れた自虐ネタで注目を浴び、『さんま御殿』『そろそろ にちようチャップリン』などに立て続けに出演して、徐々に人気を集めているピン芸人の野田ちゃん。

そんな彼が、2月21日に行われた「Be-1グランプリ」で初代チャンピオンに輝いた。

Be-1グランプリとは、2021年のR-1グランプリのルール変更によって、出場できなくなってしまった芸歴11年を超えたピン芸人の中から頂点を決めるべく行われた大会のこと。漫才協会に所属する双子コンビ「うすくら屋」の兄・シュースケが個人で主催した手作り賞レースだ。

R-1出場不可となってから、前代未聞の手作り賞レースで優勝を飾るまでの間、何を想い何を考えていたのか。当時の心境や今後の野望についてうかがった。

(撮影:大西基)
(撮影:大西基)

突然の出場不可! 今年のR-1で優勝する気マンマンだった…

――Be-1グランプリ優勝おめでとうございます! 翌日に新聞に掲載されたり、Webニュースにもなったりしましたが、反響はいかがでしたか?

「ありがとうございます! 東スポさんと日刊スポーツさんに報じていただいたんですが、家族や親戚からお祝いの連絡が来てビックリしました。僕が知らないだけで、実は応援してくれていたみたいです。弟は会社の人から『お前の兄ちゃん優勝したみたいだな』と言われて知ったらしくて、新聞効果って侮れないなと思いました。

バイト先の人にも喜んでもらえたのも良かったですね。今はシフトの数もどんどん少なくなっていますが、月1回でもいいならずっとやり続けて、30年目を目指したいです(ネタにもなっている水道検針のバイトを長年続けており、勤続20年目で表彰されている)」

Be-1の優勝トロフィーとバイト先からの感謝状
Be-1の優勝トロフィーとバイト先からの感謝状

――R-1に出場できなくなってからのBe-1優勝なので、喜びも大きいのでは?

「確かに、R-1の件は本当に驚きましたね。発表されるその日までR-1のことだけを考えて生活していたので。今年はピンになって3年目なんですが、1年目は準々決勝、2年目は準決勝ときていたので、今年は優勝する気満々だったんです。あの頃は、まわりの芸人にネタの相談をしたり、予選に向けた調整の時期に入っていて、あとはエントリーするだけの状態でした」

――では、R-1に出られなくなったショックは相当大きかったのでは?

「それが……。すごくショックは受けたんですが、その日のうちに『じゃあ、自分がやりたいネタをやろう』と、さっそく次のことを考えていました(笑)。白スーツにこだわらなくてもよくなったな、YouTubeで好きなことやるのもいいなとか、いろいろなアイデアが浮かんでました。ネタにも出てるように、僕めちゃくちゃ前向きなんで(笑)。

R-1の発表があった日に、だーりんずの小田から連絡が来て、慰め会みたいなのを開いてくれたんですが、その場で次にやりたいことをどんどん話していたら『全然ヘコんでないじゃん』と言われました(笑)」

――ほかのR-1に出られなくなったピン芸人たちはどうだったんでしょうか?

「ほとんどの人がショックを受けてました。なかには、ショックのあまり芸人を辞めた人もいます。僕らくらいの年齢だと、賞レースで優勝しないとテレビに出られないんで、『賞レースに出られない=売れるチャンスがなくなった』も同然なので、別の道を選んだんでしょう」

びーちぶの仲間と一緒に挑んだBe-1予選

ロビンフットのおぐは、自分も決勝に残ってるのに、すごく親身になって直前までアドバイスをくれました
ロビンフットのおぐは、自分も決勝に残ってるのに、すごく親身になって直前までアドバイスをくれました

――今回は2回戦から参加されたんですよね。(R-1決勝経験アリなのでシード扱い)

「はい。2回戦では、しっかりと手ごたえを感じました。でも、準決勝では5位くらいだったんです。とりあえずファイナリストに残ってよかったなと。この時に、決勝ではネタを2本すると知りました。

僕たちが所属するびーちぶ(Beach V)では、芸人仲間にネタを見てもらってダメ出しし合う文化があります。そこで、R-1決勝用の2本目にする隠し玉を作っていたので、決勝で通常のネタと隠し玉と両方できるとわかってラッキーって思いましたね! これが決勝でできたら、絶対に優勝すると確信があったんで(笑)」

――コロナ禍での決勝戦の裏舞台は、どうでしたか?

「決勝戦は、舞台裏の控室で出場者が全員集まって、モニターで会場の様子を見ていました。エントリーのときから優勝する気満々だったんですが、全員がウケていたので、誰が最終決戦に行くか全く予想がつかなかったですね。もう、やるだけはやったし、あとは審査員のみぞ知るっていう感じです。

最終決戦の発表は最下位から言われたんですが、個人的にウケてたと思う人の順位が予想外に低かったのでビックリしました。でも、勢いやウケ具合だけじゃなくて、ネタの構成や発想力とか新鮮さとか、R-1と同じようにしっかり審査されているんだなと思いました。そんな中での1位通過だったんで、本当に嬉しかったですね」

――審査員のコメントもあたたかかったですよね。

「審査員にR-1の歴代チャンピオンが3人(中山功太、やまもとまさみ、じゅんいちダビッドソン)もいましたからね。その方たちに高得点をつけてもらえて、めちゃくちゃ嬉しかったです! 特に、やまもとまさみさんからは、『野田ちゃんは自分から自虐は言ってないから、ただの自虐ネタじゃないこと』というようなことを言っていただけたのには感動しました。実際、僕も自分のネタを自虐ネタだと思っていないので(笑)」

――優勝が決まった時はどうでしたか?

「最終決戦に残ったのは、僕、ギャバホイ、ふみつけ大将軍小仲の3人。方向性はバラバラで、2人とも面白いのは間違いないのですが、僕には2本目の隠し玉があったので、3人の中に選ばれたら、絶対に優勝すると思っていました。

それなのに、いざ優勝と言われると、嬉しすぎて何も言葉が思いつきませんでしたね。大会が終わってからも、あまり余韻に浸ることはなく、次は何をしようかとか、相談に乗ってくれた芸人仲間や家族にどんな恩返しをしようかといったことを考えていました」

両方出たからわかるR-1とBe-1の違い

カップラーメンは全部で3個いただきました(笑)
カップラーメンは全部で3個いただきました(笑)

――R-1とBe-1どちらも出場されていますが、違いはありましたか?

「けっこう似ている部分が多いんですが……あえて言うなら会場の規模でしょうね。まあ、今年は初めての開催ですし、コロナというのもあるんですが、R-1は決勝会場が大きいので、空気感が作りにくいというのがあります。大きい声や顔の表情とか勢いで笑いが生まれることが少ないんです。でも、小さい会場だとしぐさや顔の表情がよく見えるし、いい意味で一体感が生まれやすいので、勢いや派手さのあるネタがウケやすくなるんです。

やはり、ウケたら会場の空気感は変わりますし、審査員の評価もよくなるかもしれない。それに対する怖さや不安はありましたね。

そのほかの部分はちゃんとしていて、手作りの賞レースとは思えなかったですね。ネタの制限時間とかのルール設定、審査員のメンバーは誰もが納得する方々ばかり。しっかりとネタで評価してもらえた点にも信頼感を持てました。あと、各予選ごとにカップラーメンをもらえたのは嬉しかったです。ここはR-1よりもいい点ですね(笑)」

――ほかに、手作りならではの良さはありましたか?

「1位以外にも審査員賞が用意されていたことですね。過去のチャンピオンの方や大御所作家さんに『面白い』と認めてもらえるのは、芸人としてめちゃくちゃ嬉しいことなんです。賞レースというと賞金に目が行きがちで、確かにそれも大事です。でも、人によっては同じ芸人や業界の人に認められたいという気持ちの方が大きかったりします。審査員賞をもらった芸人は、『また面白いネタを作ろう』とやる気が出たと思います」

――Be-1が終わって、まわりのピン芸人からはどんな話を聞きましたか?

「『来年はエントリーする人が増えるだろうね』『もっと規模が大きくなるだろうね』みたいな、いい話ばかり聞きました。僕のまわりのピン芸人はほとんど出てますし、来年も出ると思います。

個人的には、初代チャンピオンになったんだから、がんばらないといけないなと思いました。僕ががんばったらBe-1に箔がつくし、Be-1が大きな大会になれば、その初代チャンピオンの僕も注目される。大会と二人三脚しながら成長していければいいですね。

ちなみに、今回の優勝は、芸人人生で初めてのことです。バトルなどではあるけど、賞レースではとったことがありませんでした。もっと早くピンになればよかったかもしれないなと思いました(笑)」

R-1チャンピオンに宣戦布告!「オレと戦え!」

体を張ったロケで「スーツ汚さないでくれー!」とか言いたい
体を張ったロケで「スーツ汚さないでくれー!」とか言いたい

――優勝賞金50万円の使い道は?

「新しく白スーツを新調しました。全部で3着になったので、破られても泥で汚されても大丈夫です。翌日の仕事で困らなくなったので、泥だらけロケOKです(笑)。残りは親やお世話になった人への恩返しに使う予定です」

――今後の目標ややりたいことはありますか?

「とりあえず、Be-1優勝を武器に宣伝活動に力を入れてテレビに出たいと思っています。今はネットの時代と言うのはわかってはいるんですが、僕たちの世代はやっぱりテレビに出たくて芸人をしているというのが強いんですよね。ネタ番組・バラエティー番組で体を張ったロケとかやりたいです。あと、今はコロナでライブが休止になっていますが、再開したらライブにも出て新しいネタをやりたいですね。

それと、R-1チャンピオンに宣戦布告します! まわりのみんなが統一戦してほしいって言ってるし、俺はいつでも受けて立つ! 2021年R-1チャンピオン、一度戦ってくれ!」

「名は体を表す」ならぬ、「ネタは体を表す」を地で行くような、底抜けに明るくて前向きな人物だった野田ちゃん。彼にとってBe-1優勝は、既定路線の上にあったようだ。希望とワクワクに溢れる野田ちゃんが、次は何に挑戦して、どんな笑いを生んでくれるのか。果たして、R-1チャンピオンとの対決は叶うのか? 今後の活躍に期待したい。

  • 取材・文安倍川モチ子

    webを中心にフリーライターとして活動。現在は、「withnews(ウィズニュース)」「Business Jounal(ビジネスジャーナル)」などで執筆中。また、書籍や企業PR誌の制作にも携わっている。専門分野は持たずに、歴史・お笑い・健康・美容・旅行・グルメ・介護など、興味のそそられるものを幅広く手掛ける。
    野田ちゃんさん、本当にめちゃくちゃ明るくて前向きな方で、インタビュー中に「R-1の新チャンピオンに宣戦布告して統一戦したい!」って何度もおっしゃっていました(笑)

  • 撮影大西基

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