中村剛也、中田翔、浅村栄斗…数字で見る大阪桐蔭出身選手の未来 | FRIDAYデジタル

中村剛也、中田翔、浅村栄斗…数字で見る大阪桐蔭出身選手の未来

「セイバーメトリクス」では評価されない打点だが、実は重要な指標!

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2020年6月27日のソフトバンク戦で2ランホームランを放った中村剛也(西武)。中村の通算ホームランは現役最多の424本
2020年6月27日のソフトバンク戦で2ランホームランを放った中村剛也(西武)。中村の通算ホームランは現役最多の424本

MLBは、21世紀以降「データ野球」によって大きく変わった。その「元祖」と言えるのが1990年代に創始されたセイバーメトリクスだ。

初期のセイバーメトリクスは、従来の記録である安打、本塁打、盗塁、三振、四死球、長打率、出塁率などを組み合わせて新たな指標を次々と考案した。しかし打撃成績では唯一、使われなかった指標がある。「打点」だ。

「打点(RBI=Run batted in)」は、打者が塁上の走者を打撃で返した回数のことだ。しかし打点は、打者が打席に立った時点での塁上の走者の数で大きく変わってくる。満塁の走者で本塁打を打てば4打点がつくが、走者がいなければ1打点だけだ。

「運」が絡む要素が非常に強いので、「打点」は実力を反映した客観的なデータとみなされていないのだ。

しかし野球は相手よりも1点でも多くの点を取ることを争うゲームだ。「打点」が多い打者は貢献度が高い中心打者であることは間違いない。だから打者の究極の目標とされる「三冠王」にも、本塁打、打率と並んで打点が加えられているのだ。

塁上に走者がいるときに安打、本塁打が打てる打者は「勝負強い」強打者であるのは今も昔も変わりがないのだ。

NPBで複数回打点王を獲得した選手 ※は現役

13回 王貞治
7回 野村克也
5回 藤村富美男、長嶋茂雄、落合博満、
4回 中島治康、山内一弘、ブーマー、ラミレス、中村剛也※
3回 川上哲治、中西太、長池徳士、加藤英司、山本浩二、松井秀喜、松中信彦、T・ローズ、中田翔※
2回 景浦将、青田昇、大杉勝男、バース、門田博光、デストラーデ、浅村栄斗※

1936年のプロ野球草創期から現在までの錚々たる強打者が並んでいる。
王貞治、野村克也、中島治康、落合博満、ブーマー、バース、松中信彦と歴代の三冠王は全員、複数回打点王を獲得している。

セイバーメトリクス的にはあまり評価されていなくても「打点」は「強打者の証」と言っても良い重要な指標なのだ。

現役選手で打点王を複数回獲得した選手は、西武の中村剛也(4回)、日本ハムの中田翔(3回)、楽天の浅村栄斗(2回)の3人だ

この3選手には共通項がある。いずれも大阪桐蔭高校から高卒でプロ入りしているのだ。

中村剛也は今年8月で38歳。甲子園出場はなかったが、高校屈指の強打者として2001年のドラフトで西武に入団。高校の同級生には阪神の岩田稔がいる。175㎝102㎏というずんぐりした体格だが、ボールをバットに乗せて運ぶ技術は当代屈指。本塁打王を王貞治の15回、野村克也の9回に次ぐ史上3位の6回獲得。本塁打を連発する姿から「おかわり君」のニックネームがついた。

2011年、反発係数が低い「統一球」の導入によってセ・パ両リーグの本塁打数が激減する中、48本塁打で3回目の本塁打王。この本塁打数は、この年ロッテがチーム全体で打った46本塁打を上回っている。2019年には36歳で4回目の打点王を獲得した。中村剛也は一度も3割を打ったことがなく、打率ベスト10にも顔を出したことがない。打席に立てばひたすら長打を狙う打者なのだ。

中田翔は4月で32歳。大阪桐蔭時代は投手と打者の二刀流で1年生から試合に出場。2005年夏の甲子園のベスト4に貢献した。2007年のドラフトでは仙台育英の佐藤由規、成田の唐川侑己と並んで「高校ビッグ3」と呼ばれた。2007年高校1巡目で日本ハム入り。打者一本になり2014年を皮切りに2016年、2020年と打点王を獲得している。100打点以上は通算5回。

しかし中田は、本塁打は2020年の31本が最高。一度も本塁打王にはなっていない。打率3割も1回だけ。安打数や本塁打数はそれほど多くないが、打点が多い。MLBではこういうタイプの打者を「RBIイーター(打点食い)」と言うが、勝負強さが際立っているのだ。

浅村栄斗は中田翔の1学年下、今年11月で31歳。高校時代には中田翔とともに中軸を打ったこともある。3年の夏の甲子園の優勝にも貢献した。ドラフト3位で西武に入団。当初は中距離打者とみなされていたが、次第に長打力をつけ、2013年に27本塁打を打ち110打点で初の打点王。2018年には127打点で2度目のタイトルを取った。2019年にはFAで楽天に移籍。昨年は1年先輩の中田翔と激しい打点王争いを繰り広げたが、4点差で中田に敗れた。

しかし本塁打では中田翔を1本上回り、初の本塁打王に輝いた。中田と浅村の先輩後輩は、今後もライバルとして鎬を削ることだろう。

中村剛也、中田翔は「バランスの取れた好打者」ではない。一振りにかける中村と、とにかく勝負強い中田は「クセが強い」打者だと言えよう。

それに比べて浅村は、3割を3回。中距離打者から長距離打者へ、そして三冠王も狙える強打者へと成長してきた。

同じ大阪桐蔭出身の強打者と言っても、個性は三者三様だ。

大阪桐蔭出身では、首位打者1回の西武・森友哉がいる。また昨年後半に売り出したロッテの藤原恭大も大阪桐蔭だ。いずれも高卒でプロ入り。近い将来、20代の彼らが打点王争いに絡む可能性もあるだろう。

2021年の開幕も近い。今季は誰が「打点王」のタイトルを獲得するだろうか。

  • 広尾 晃(ひろおこう)

    1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイーストプレス)、『球数制限 野球の未来が危ない!』(ビジネス社)など。Number Webでコラム「酒の肴に野球の記録」を執筆、東洋経済オンライン等で執筆活動を展開している。

  • 写真共同通信社

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