父から性的虐待受けた女子に浴びせられた「ゆるしがたい質問」

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千葉地裁 写真:共同通信

「ちゃんと前提を聞いてくださいよ! 露骨に中身を言わなくとも聞けるでしょう!!」

弁護人からの質問に裁判長が声を荒げ、注意を促す。義理の娘に長年、性的虐待を行なってきたとして起訴されている男性の公判での一幕だ。

現在、千葉地裁(前田巌裁判長)で開かれているこの公判では、先頃ビデオリンク方式で証人尋問が行われ、被害者とされる義理の娘が証言した。

監護者性交等や監護者わいせつ、児童ポルノ禁止法違反で起訴されている被告人はグレーのジャージを身につけ、メガネをかけた40〜50代らしき男性。大きく鋭い目で時折、傍聴席に座る傍聴人の顔ぶれを確認したり、被害者の証言を聞いて不満そうに体を動かしたり、隣に座る弁護人に耳打ちするような仕草をみせたり…。

家庭内の性的虐待事件は、被害者秘匿の観点から、被告人名が伏せられる。逮捕時の報道もないため、公判からその詳細を得るしかない。

尋問内容によれば被告は、現在わかっているだけでも、被害者とされるAさんに対し2017年8月27日の夜、自宅で性交や口腔性交のほか裸の姿を撮影。さらに2019年5月9日にも関東近郊の駐車場においてAさんに対し性交したとされ、その翌日Aさんが警察に相談して起訴された。

尋問でAさんは、それ以前、彼女が小学校高学年の頃から高校生の間まで、長期的に性的虐待が行われていたと証言した。最初に被告から性的虐待を受けたのは小学校5年生の頃だという。

「『殴られるか、しゃぶるか選べ』と言われ、最初はどちらか選ばずに拒否していたら、何度も殴られたので最終的にはしゃぶることを選びました」

以降も、その背景には暴力があったことを淡々と語る。

検察官 「平成26年(2016年)にも母親がいないときに性交されていますね。わいせつなことをさせられていた頻度はどのぐらいですか?」
Aさん 「……数えていたわけではないので、わかりませんが、週に……2回以上」
検察官 「性交では、膣内射精されることも?」
Aさん 「ありました」
検察官 「拒絶したことは?」
Aさん 「ありました」
検察官 「拒絶できましたか?」
Aさん 「できませんでした。拒絶すると叩かれたり、暴力を振るわれたりしたからです」

数年にわたる性的虐待を母親に相談しようと考えたこともあったというが、できないままに日々は過ぎていた。「誰にも相談できず、諦めの気持ちがあった」と、ぽつりぽつり述べる。

Aさんによれば被告からは、膣内射精を伴う性交を求められるだけでなく、中学生の頃から「裸を撮影されていた」とも証言した。

検察官 「今回の事件の中には、裸の画像を携帯電話で撮影されたというものもありますが、最初の頃は、どのように撮影されたんでしょうか?」
Aさん 「それが一番最初かは分かりませんが、記憶に残っているのは、部活から帰って来た後、制服のまま写真を撮るからと言われて……写真を撮られました。ポーズは指示されて……やったと思います」
検察官 「制服は着たままでしたか?」
Aさん 「着たままじゃなかったです。脱いだりするよう言われました」

部活から帰宅したAさんに対し被告は、下着を脱ぎ、ポーズを撮るよう求め、写真を撮影したのだという。Aさんの証言によれば、こうした撮影は一度だけではなく、警察に相談する直前まで続いていたようだ。

被告はAさんに「わいせつな自撮り動画」の撮影も要求していたともいう。Aさんは被告のことを「あの人」と呼びながら、時に声を詰まらせながらも証言を続けた。

「私は自撮りする……やり方がわからなかったんですよ。私が、わからないとか言うと、あの人は、メールで、お手本の画像を送りつけてきたんですよ。大人の女性が、下着姿で(自慰行為を)やってる画像……私がそれをお手本にして撮ってました。セリフは……夜にあの人と電話した時、こう言え、とか、私がやりたくないと思わせないような口調で……セリフの指示をしてきたんですよ……」(Aさん)

それだけではない。被告はさらに「他人の盗撮」もAさんに要求したという。警察に相談する前日の事件の際に「女性のスカートの中を撮影」するように命じたのだそうだ。断れなかった背景には、被告による“脅し”があったと、Aさんは言う。

裁判長 「それができなかったら、どうしろと被告は言ったんですか?」
Aさん 「………私の、裸の写真を、LINEグループ……クラスのLINEグループに、そこに送るって言われました」

Aさんの証言によれば、撮影には被告の要求や脅迫があったという。ところが、被告のほうはこうした撮影行為を“Aさんが自主的に行った”と認めさせかったようだ。

弁護人はしつこく、次のような質問を続けた。

弁護人 「あなたこの動画は、自分ですすんで撮ったんじゃないですか?」
Aさん 「……違います」
弁護人 「被告人に指示されて撮影したんですか?」
Aさん 「指示されたのか、撮らなければいけないという約束をしていたのか……私はそのとき……自撮りすることに慣れてきていたのもあって……指示されたのもありますが、こうしないと、あとで、もっとひどいことになるって思っていたので……」
弁護人 「本当に被告人から撮影するように言われてたんですか?」

弁護人はこう聞いたのちに、この動画の内容を説明し始めた。“お手本”を基にしてAさんがセリフを言わされているものだったようだ。

ここで裁判長が冒頭のように、弁護人に対して強く注意を促した。

「露骨に中身を言わなくとも聞けるでしょう!!」

裁判長の注意はこれ一回だけではなかった。弁護人は性交も“二人で示し合わせて行った”と印象付けたかったようだ。Aさんに次のような質問を行い、幾度も注意を受けた。

「本当に事件があったのであれば、お母さんが知らなかったのは変ではないですか?」
「事件になればあなたは、お母さんを頼りに生きていかないといけないじゃないですか? お母さんに相談したら、このような事件にならず、家族はバラバラにならずにすんだんじゃないですか?」
「母やきょうだいにもあなたと被告とのことを知られていなかったのは、あなたと父親が二人で示し合わせてセックスしてたからではないですか?」

最後の質問にAさんはゆっくり、はっきりとした口調でこう答えた。

「示し合わせてという意識、私にはないです。あの人が……私以外の家族がいないタイミングを見計らって、私を……。二人で、決めてとか、ないです!」

今後行われる被告人質問で、被告がどのような主張を繰り広げるのか。引き続き取材を行う予定だ。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

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