発売50年「いつもの味」のカップヌードルがホッとする本当の理由
だれにも「忘れられないあのときの味」がある。かもしれない
カップヌードルが、今年で発売50周年を迎える。日本中の誰もが知っている味。50年間、変わらず愛されている。おめでとう、50周年!
50年間、「いつもの味」を作り続ける
カップヌードルは、1971年9月に発売された世界で初めてのカップ麺だ。お湯を注いで3分待つと、熱々のラーメンが食べられる。今では当たり前のことだけれど、発売当初は衝撃だった。
この味は、発売以来ずっと、同じなんだという。
「カップヌードルの味はいっさい変えていません。食品の味というのは、最初に食べたときの記憶がずっと残って、その味をいつまでもおいしく感じるもの。なので、つねに同じ味わいを提供し続けることが重要だと思っています」(日清食品カップヌードルブランドマネジャー・白澤勉さん)
50年目の「カップヌードル(レギュラー)」を筆頭に、1973年発売の「カレー」、1982年発売の「チリトマト」、1984年発売の「シーフード」が、ロングセラーの定番商品。たいていの人は「お気に入りの味」があるだろう。食べると「ああ、この味」と、なんだかホッとする。この「ホッとする感」、じつは気のせいではなかったのだ。
「海外から戻ってきてカップヌードルを食べると「ああ、帰ってきた」と実感します。長期の海外出張には持って行っちゃいますね。現地にもカップヌードルはあるのですが、国によって味が違いますから。日本の味、いつもの味が食べたくなるんです。一番好きなのは『シーフードヌードル』です!」(白澤さん)
シーズンごとに「新しい味」に挑戦する
しかし、同じ味のものだけを作り続けているわけではない。スポット商品、新商品も続々と発売されている。新製品は年間10品、「スポット」と呼ばれているだけあって、2~3か月で入れ替わるものもあるし、今の時期なら「北海道濃厚ミルクシーフー道ヌードル」のように、毎年登場するものもある。
「次はどんな味が登場するか、お客様にワクワクしてもらえる商品をつねに考えています。新しい味を求める一方、心がけているのは、どんな商品を作るにしても『カップヌードルらしさ』は失わないこと。味噌味のものを作るにしても、ふつうの味噌ラーメンにならないように、カップヌードルらしさを追求しています」(白澤さん)
販売期間が短かったり店舗限定だったり、なかなか手に入らないレアものもある。
被災地に温かい食べ物を届ける
NHKの朝ドラにもなった、創業者安藤百福さんが残した言葉に「食足世平」(食足りて世は平らか)がある。「おなかいっぱいになることが平和への第一歩、幸せへの入り口」という。日清食品は、1995年の阪神淡路大震災以来、被災地にキッチンカーで赴き、カップ麺を提供している。お弁当など冷えた食品中心になってしまう避難所生活のなかで、カップヌードルの温かさが喜ばれたことは「誇り」だという。
2011年の東日本大震災のとき、ある中学生は、合宿先から急遽バスで東京に戻る途中、明け方のSAで、自販機にあったカップヌードルを食べた。
「あのときの美味しさは、忘れられない。チリトマト味は神」という。
だれにも、忘れらない「あのときの味」がある。インスタントで手軽、安価な食品だけれども、50年のなかでいくつもの「思い」を受け止めてきたのだ。
気になる「カップヌードル」7点、食べてみた!
これまで50年、レギュラーサイズだけで約150種類も発売されてきたカップヌードル。数量限定品など、なかなか手に入らないものもある。だから、いま出ているものがこの先もあるとは限らない。そこで、現在販売中の限定商品と新製品、人気のエスニックシリーズなどを食べて、紹介しておこう。
カップヌードル 海老の濃厚トマトクリーム
蓋を開けたとたん、海老の香り。濃厚なトマトクリームが麺にからんで、トロトロの食感。毎冬、これを楽しみにして「販売期間に買いだめておく」という女性ファンも。
カップヌードル 味噌
3種の味噌を合わせた濃厚味噌スープ、イメージしている味噌ラーメンとはまったく違う味わい。味噌&ガーリックの圧倒的存在感にひれ伏す強烈な味。
カップヌードル 旨辛豚骨
こってり背油が浮いているようなスープをイメージしたが、これはいい意味であっさり。付属の特製旨辛ラー油を加えるとピリッと辛く、隠し味の花椒の辛みがきいて、まさに「旨辛」が味わえる。
カップヌードル 北海道濃厚ミルクシーフー道ヌードル
ミルクスープの中にシーフードのエキスが感じられ、シーフードシチューのような味わい。キャベツが驚くほどシャキシャキしていて、キャベツだけ取り出して食べてしまったほど。今年はそろそろ販売が終わり、来冬再登場の予定。
カップヌードル ピリッと生姜のグリーンカレー
カップヌードルでグリーンカレー…?? たしかにグリーンカレーそのものの味。ココナッツミルクと生姜と青唐辛子のスープが麺にからんで、グリーンカレー好きにはぜひおすすめしたい。
カップヌードル パクチー香るトムヤムクン
専門店で食べるトムヤムクンそのままの味。独特の香りと独特のすっぱ辛いスープがあとをひく。タイの現地法人と共同開発という本格味。熱狂的なファンが多いのもうなずける。
カップヌードル 欧風チーズカレー
粉末のチーズを溶かし入れるタイプにリニューアルして再登場した。「いちばん混ぜにくいやつ」といわれている。糸をひくほどのトロリ感はないが、たしかに混ぜにくい。けど、おいしい。
日本から世界へ、そして宇宙へ。カップヌードルの挑戦は
今や世界100カ国で販売され、ブランド全体の国内年間の売り上げは1000億円というカップヌードル。宇宙食に採用され、スペースシャトルにも乗った。
「今年で50周年を迎えますが、さらにその先、100年ブランド
「変わらない味」と、進化を重ねるカップヌードル。あなたの「お気に入り」はどの味だろう。
- 取材・文:中川いづみ
ライター
東京都生まれ。フリーライターとして講談社、小学館、PHP研究所などの雑誌や書籍を手がける。携わった書籍は『近藤典子の片づく』寸法図鑑』(講談社)、『片付けが生んだ奇跡』(小学館)、『車いすのダンサー』(PHP研究所)など。