脅威は車だけじゃない…?中国製の電気バスが日本で急増中の背景 | FRIDAYデジタル

脅威は車だけじゃない…?中国製の電気バスが日本で急増中の背景

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京都ではすっかり馴染みとなったBYDバス。京都女子大のスクールバスと間違われることもあったが、一般の路線バスだ(撮影:加藤博人)

マスクでその名を知らしめた「BYDブランド」

中国第一汽車の最高級車「紅旗H9」の注目度が高まっているが、実は中国製の電気バスが6年前から日本の道路を走り始めていることをご存知だろうか。

その名は「BYD製電気バス」。中国・深センを本拠地とする比亜迪(BYD)グループには「BYD電子」(BYD Electronic)と自動車を製造する「BYD汽車」(BYD Auto)の2部門があり、BYD電子はマスクも製造。コロナ禍によるマスク不足で、医療用N95と一般用合計で5億枚以上のBYD製マスクを日本に輸出したため、昨年初めてマスクでブランド名を知った人も少なくないはずだ。

そのBYD製「K9」という大型の電気バスは京都市内の路線バスとして2015年に初めて5台が導入された。どんな特徴を持っているのか。BYDジャパン副社長花田晋作氏はこう明かす。

「K9は一充電あたり250km 以上の走行性能を持っています。走行時に CO2 を排出しないため、環境負荷の軽減はもちろんのこと、走行時の騒音や振動を大幅に軽減する効果もあり、乗客や沿線住民の快適性向上にも貢献します。324kWhの大型バッテリーを搭載しているので、災害時の電源供給や避難場所としての活用も可能です」

BYDの電気バスが他と違うのは、バスの設計段階からEV(Electric Vehicle)であることを前提に企画されているので非常にエネルギー効率が良く一充電あたりの走行距離が長い。一方、日本には量産の電気バスは存在せず、バスメーカーはディーゼルバスのエンジンを降ろして、モーターとバッテリーを載せる改造を施した電気バスが主流となっているため、コストもかかる。

日本製の電気バスとの価格差は実に大きい。東京都建設局の電子入札経過調書における入札価格は、ビーワイディージャパン株式会社が18,529,250円(税抜き)であるのに対して、2位のバスメーカーは82,558,160円(同)。約4.6倍もの価格差がある。

2020年より日本市場に導入されている小型の「J6」は1950万円(税抜き)、同じく2021年より導入の「K8」は3850万円(同)。日本製電気バスが軒並み1億円前後の価格となる中、BYDバスは1/3~1/4という低価格だ。

「電気バスネイティブ」を育てたい

また、BYD製電気バスの大きな特長のひとつにメンテナンスのしやすさがある。車両部品やバッテリーをモジュール化することで、不具合が出た場合、その部分だけを入れ替えて修理すればよい。整備性も各段にアップすることになる。

一充電当たりの走行距離も長く、性能も良く、整備性も良くて価格も大幅に安い。日本国内では、いまだに中国車や中国製EV製に対してネガティブなイメージを持つ人は少なくないが、これだけメリットがあれば、今後、BYD製電気バスのシェアは電動化を積極的に進めたい日本においても急速な勢いで広がっていくはずだ。

BYD製電気バスは日本のみならず、アメリカでもニューヨークやロサンゼルスの街でも市民の足として走っている。あの有名な2階建てのロンドンバスにもBYD製電気バスの採用が始まっている。これまで6大陸50ヵ国、300の地域で6万台以上が販売され、電気バスとしてもちろん、世界トップシェアを誇る。

日本の道路で同社製のバスが定期運行をするようになって今年で6年目となるが、最初に導入されたのは東京ではなく京都だ。今では京都駅、四条河原町、京都女子大を結ぶ3ルートにて電気バスが運行されている。

かねてから京都駅~東山七条間のバス路線は非常に混雑する路線として有名だったが、その混雑を緩和するために、大阪・寝屋川市のバス会社プリンセスラインが2003年から計画し、国土交通省近畿運輸局の指導のもとに新規路線として許可された。BYDはなぜここを最初に選んだのか。前出の花田副社長は意外な理由を語った。

「京都は重要な文化財が多数存在しています。京都の市街地こそ、文化財の保全のため、排ガスが出ない、振動や騒音がほぼ出ないクリーンな電気バスを走らせるべきではないかと考えました。

もうひとつは、『電気バスネイティブ』を作りたいという思いも強くありました。プリンセスラインは京都駅と京都女子大を結ぶ3種類の路線で構成されていますが、この路線はいずれも学校法人京都女子学園京都女子大を始点としています。小学校から中学・高校・大学・大学院まで若い人たちが主に乗る路線です。

子どもの時から電気バスに親しんでいただくことで、電気バスへの抵抗をなくしてもらって、電気バスはバッテリーが爆発するから怖い…などの間違った認識を最初から持たせないように。という狙いもあります」

なお、プリンセスラインの車庫は京都女子大前発着場のすぐ近くにあり、豊臣秀吉の墓所である「豊国廟」に隣接。充電もこの場所で行われる。路線バスとしての運行が終わった夜間~早朝(8-9時間)が充電タイムだ。

6年前に導入されたBYD製電気バス「K9」は一充電当たり250㎞走る。豊臣秀吉の墓所である「豊国廟」に隣接した場所にあるが、電気であれば文化財への悪影響はあまり考えなくていい

電気バス浸透を後押しする「脱炭素」政策

地球温暖化を避けるため、環境省が「2050年までに二酸化炭素を実質ゼロに」する「脱炭素」を自治体に働き掛けており、環境保全に動く世界的な流れも電気バスの需要を後押しする。

「東山区のご理解や協力もありがたかったですね。そして、災害時には電力の供給を行うことや、避難場所に急行して高齢者の方々を中心に、暖房や冷房で快適に過ごせるバス車内安全に快適に過ごしてもらうことなどを約束しています。」(同)

京都を皮切りに沖縄、会津、尾瀬…などで納入され、2020年1月には自動運転の実証実験用として羽田空港を走るシャトルバスに、3月に山梨・富士急バスが京都の路線バスと同様「K9」を納入した。

つい先日、2月24日には平和交通(千葉県千葉市)に⽇本国内初導入の量産型大型電気バス「K8」と「J6」の出発式を開催。同じ日に、京都ではビーワイディージャパン株式会社、京阪バス株式会社、関西電力株式会社の3社によって電気バス導入に関する協定書の締結が行われている。

下校時間に集まってきた「電気バスネイティブ」の学生たち

中国・BYD製の電気バスが国内で急増する中、日本の自動車メーカーはどう反応しているのか。しのぎを削るというよりは、業務提携が加速している状況だ。

2019年11月に電気自動車の研究開発に関する合弁会社『BYD TOYOTA EV TECHNOLOGYカンパニー有限会社』(本社広東省 深セン市)の設立に向けた契約をトヨタ自動車と締結して以降、両社で準備を進めてきたが、2020年4月2日に合弁会社の登記が完了し研究開発の事業が開始された。トヨタに続き、日野自動車も同年4月、商用EVの開発分野でBYDと戦略的パートナーシップ契約の締結を発表した。

日野とBYDによる新会社は2021年に中国国内での設立を予定しており、両社がそれぞれ50%ずつ出資する。両社の強みを掛け合わせて商用EVおよび電動ユニットの開発を行い、主にアジア向けの商品をスピーディに実用化するという。まずは2020年代前半に日野ブランド車の市場投入を計画している。

国は約9年後の2030年代半ばまでに純ガソリン車の新車販売を終了すると発表したばかり。排ガスゼロでたくさんの人を運ぶバスとしての役目だけではなく、災害等の緊急時には素早く電力供給もできる「未来のクルマ」は、じわじわと日本国内にも浸透してきているのだ。

天井が高いことも特徴のひとつ。カメラマンの加藤博人さんは身長が186㎝もあるが、一段のぼったところにある座席エリアにいっても余裕をもって立っていられる
脱出用のハンマー。事故のときに窓を割って外に出られるよう、バスのいたるところにはめこまれている。
2月に千葉県内で行われた平和交通の電気バス導入イベント。首都圏の路線バスでは初導入だ
  • 取材・文加藤久美子撮影加藤博人

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