刃物でメッタ刺し…北朝鮮で若い女性の殺害事件が続発の背景

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中国と国境を接する北朝鮮・恵山の日常風景。人々の貧しい暮らしがうかがえる(画像:ロイター/アフロ)

警備員は部屋に入るなり、凄惨な光景に思わず悲鳴をあげた。壁に飛び散った血しぶき、目を見開き絶命した中年女性……。鈍器で殴られたのだろう。頭部は陥没し、簀巻きにされた布団からはどす黒い血が流れている。近くには若い3人の女性の姿が。室内の目ぼしい品物や現金を、大慌てで袋詰めしていたーー。

これは韓国のインターネット新聞『デイリーNK』が掴んだ、中国と国境を接する北朝鮮・両江道(リャンガンド)恵山で起きた殺害事件の概要だ。

事件が起きたのは、2月21日午前9時頃。携帯電話販売店を営む40代の女性Aさんが住むマンションを、3人の女性が訪れた。スマートフォンでも買いに来たのだろうと考え、警備員は疑うこともなく3人をマンション内へ通す。ところが、しばらくして警備員は冒頭のような恐ろしい光景を目にしたのだ。『デイリーNKジャパン』編集長の高英起氏が語る。

「40分ほどたっても女性たちが戻ってこないので、不審に思った警備員がAさんの部屋に向かったんです。するとAさんは刃物でメッタ刺しにされ、すでに事切れていた。3人の女性は、Aさんがある程度のカネを持っていることを知っていたのでしょう。強盗目的で、部屋に侵入したと思われます。

警備員が悲鳴を聞いて、近隣住民がいっせいに騒ぎ出しました。通報を受けた安全部(警察)が急行。逮捕されたのは、いずれも20代の女性でした」

犯行に走る若い女性たち

北朝鮮の地方、特に中国と国境を接する北部では、こうした強盗殺害事件が頻発しているという。影を落としているのが、新型コロナウイルスだ。高氏が続ける。

「2年ほど前まで、北部の街は中国との交易が盛んで活気がありました。しかしコロナ感染拡大により、国境は閉鎖。同地でたびたび出される封鎖令(ロックダウン)で、経済活動どころか外出すらままならなくなってしまいました。物流関係の仕事がなくなり、人々は困窮し食べ物も満足に確保できません。飢餓状態の人たちが、犯罪に走るようになったんです」

特に加害者として目立つのが、若い女性だ。

「男性は出稼ぎに行くことができますが、若い女性は街を離れられない。仕事がほとんどないんです。家族に頼ろうにも余裕がありません。カネを得るには、身体を売るぐらいしか選択肢がない。追い込まれた若い女性たちは、一人では反撃にあう可能性が高いので複数で犯行に及んでいるようです」(高氏)

北朝鮮では、90年代に大飢饉が起きた際にも犯罪が増加した。当局は「苦難の行軍」というスローガンで統制を強化。今回も指導者である金正恩氏は、対応に苦慮しているようだ。

「取り締まりを強めようにも、地方まではなかなか手が及びません。仮にすべての加害者を逮捕できたとしても、根本的な解決にはならない。貧困状態が続くかぎり、新たに事件が起きる訳ですから。

金正恩氏は10年近く前から、『生活を豊かにしなければならない』と言い続けてきました。一時期経済発展の兆しも見えましたが、現在は悪化の一途です。新型コロナに国境封鎖、海外からの経済制裁。こうした難題を解決しない限り、犯罪はなくなりません。不況のシワ寄せの影響をもっとも受けるのは、一般市民なのですから」(同前)

北朝鮮の指導層は、深刻化する貧困を打破する有効な解決策を考え出せないでいる。出口の見えない不況に、北朝鮮市民の不満は高まるばかりだ。

  • 写真ロイター/アフロ

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