池脇千鶴『その女、ジルバ』で国民的女優をかなぐり捨てた女優魂 | FRIDAYデジタル

池脇千鶴『その女、ジルバ』で国民的女優をかなぐり捨てた女優魂

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女優としてますます演技に磨きをかける池脇千鶴。『その女、ジルバ』では、冴えない40オンナを熱演(‘13年)

今やドラマの激戦区となりつつある土曜深夜。その中でも異彩を放つのが、手塚治虫文化賞マンガ大賞に輝いた有間しのぶによる同名漫画を実写化したドラマ『その女、ジルバ』(フジテレビ系)ではないか。

「アパレル会社に就職したものの、今は倉庫勤務に回された笛吹新(池脇千鶴)は、夢なし、貯金なし、恋人なし。お先真っ暗な状態で40歳の誕生日を迎えます。しかし神様はそんな新を見捨てません。誰からも祝福されることのないその日に、”未経験者大歓迎 40歳以上”の張り紙に誘われてノックしたのが、超熟女バー『OLD JACK&ROSE』。

この扉を開いたことで、新のまったく新しい人生が始まります。池脇はこのドラマで、笛吹新役と『OLD JACK&ROSE』の先代のママ・ジルバの一人二役に挑戦。‘16年4月からスタートした”大人の土ドラ”シリーズの初回最高視聴率を獲得。回を重ねるごとに大きな反響を呼んでいます」(ワイドショー関係者)

特に”ラス前”となった第9話(3月6日放送)。くじらママ(草笛光子)が、今まで誰にも話さなかった70年以上前の哀しい出来事を、アララ(新の源氏名)に打ち明ける場面には心を奪われた。

「回想シーンの中で、出会ったばかりのくじらママに『辛い過去は忘れて生まれ変わればいい。私は生まれ変わってジルバになった』と菩薩のような神々しさで呟く、若き日のジルバママ。以来、哀しい過去を自分の胸の中にしまい込んで来たくじらママは『これは懺悔かしらね。だって私今まで、まわりのみんなを騙して来たのよ』と苦しい胸の内を告白すると、『ママは何にも悪くない。だから、苦しまないで』と言って、くじらママを抱きしめるアララの渾身の演技に心を掴まれた視聴者からのコメントがネットに殺到。一人二役を演じる、池脇の演技力に圧倒される”神回”となりました」(制作会社ディレクター)

そもそも池脇は、16歳の時、『ASAYAN』(テレビ東京系)で募集された「三井のリハウス」のオーディションで8000人の中から選ばれたシンデレラガール。二年後の‘99年には市川準監督の映画『大阪物語』に出演して日本アカデミー賞新人俳優賞を始め、数々の映画コンクールの新人賞を獲得。‘01年の朝ドラ『ほんまもん』(NHK)のヒロインに抜擢され、国民的女優の仲間入りを果たす。しかし、池脇の立ち位置は他の女優とは一線を画す。

「他の国民的な女優ならば、知名度が上がると民放GP帯に挑戦。視聴率女王を目指すところですが、池脇はひと味もふた味も違う。朝ドラの翌年、滝沢秀明主演の日曜劇場『太陽の季節』(TBS系)でヒロインを演じた後、アイドル的な作品を卒業。‘03年の映画『ジョゼと虎と魚たち』では足の不自由なジョゼ役を演じ妻夫木聡との濡場にも挑み、演技派女優への転身を図りました」(前出・ワイドショー関係者)

この辺りから活動の軸足を映画に移した池脇は、‘14年代表作とも言える映画『そこのみにて光輝く』で女優魂を見せつける。

「池脇が演じたのは、昼間は水産加工場で働き、夜はバーの一室で男に体を売って生活費を稼ぐ主人公・千夏。貧乏なために食事は炭水化物ばかり。おかげで太ってしまったポッチャリ体型を作り上げ、絡みのシーンでもリアルな濡れ場を演じて見せる池脇を見て、呉美保監督は『知名度があるのにここまで体を張れる女優は、彼女くらい』と絶賛。この作品で、池脇は日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞しています」(制作会社プロデューサー)

今回のドラマで新(アララ)を演じる際も、池脇は「いけてないシジュー女」の役作りにこだわった。その結果、第1話の3日前に放送された番宣特番『クイズ!ドレミファドン! 冬ドラマ豪華俳優陣が激突!新春SP』(フジテレビ系)を観た視聴者からは「劣化がヤバイ」「老けすぎ」といったコメントが、ネット上でも炎上している。

「まぶたも腫れぼったく、目の下にはクマのようなたるみが目立ち、顔の表情も乏しく猫背気味の新は、人生を諦めてしまった”シジュー女”そのもの。そんな彼女が『OLD JACK&ROSE』でバイトを始めると、見違えるように輝きだす。

衣装合わせで緑色のドレスを試着した池脇の姿を見て思わず『アララだ!』といって、その変貌ぶりに涙するスタッフもいたと聞いています。その後、回を追うごとに美しさと輝きを取り戻す新。これは、どう見ても役作りとしか思えません」(前出・制作会社ディレクター)

しかも『その女、ジルバ』は、アラフォー女子の成長物語を描く一方で、今の時代も決して忘れてはいない。家族が東日本大震災で被災。震災から10年経つ”今”についても、複雑な胸の内をくじらママのエピソードに重ねて、こう語る。

《言葉が見つからない。この10年、故郷の街でたくさんの痛手を見て来た。傷が大きいほど、人は自分を責め続ける。そして打ち明け話をした後、その傷が蘇り辛くなる。ママは、もしかしたら過去を知った私を、疎ましく思うかもしれない。それでもいい、覚悟しよう。告白を聞くというのは、そういうことなんだ》

新(アララ)の独白シーンを繰り返し観る内に、池脇千鶴はこのドラマを演じるために女優になったのではないか、とすら思えてくる。

いよいよ今夜が最終回。『さくらの親子丼』のように第二弾、第三弾を期待するのは、私だけではあるまい。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • PHOTO原 一平

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