「ジョーカー」「パンイチ政見放送」…千葉県知事選候補のホンネ
3・21千葉県知事選挙 誰が泡沫候補だよ! と本人たちは大マジメ
「ママ! あの人、怖い!」
白塗りの顔に口裂けメイク、真っ赤なジャケットを羽織った『ジョーカー』を目の当たりにして、ゴッサム・シティ――ならぬJR市川駅にいた幼児が悲鳴を上げた。両手で頬杖をつきながら階段に腰掛けていたジョーカーは、一瞬顔を曇らせたあと、ポツリとつぶやいた。
「千葉を”夢と魔法の国”にしたいだけなんだけどな……」
3月4日に始まった千葉県知事選挙。新人が8人も立候補したことで話題だが、なかでも注目を集めているのが映画『JOKER』の主人公を思わせるピエロメイクの河合悠祐(ゆうすけ)氏(『千葉県全体を夢と魔法の国にする党』代表)、後藤輝樹氏(『ベーシックインカム党』代表)、平塚正幸氏(『国民主権党』党首)の3候補だ。本誌は独特すぎる3人を直撃した。
まずはジョーカーこと河合悠祐氏(40)。京大出身で人材派遣会社社長として働くかたわら、ユーチューバーとしても活動する。
「千葉県の課題は『少子化』による税収減少です。実際に合計特殊出生率は全国平均を下回る1.3しかありません。今取り組まないとジリ貧になっていくばかり。そこで外房地域まで『ディズニーシー』を拡張し財源を増やします。とにかく千葉をカッコよくしたいんです!」
――ちなみに千葉県とはどんなつながりがあるのでしょうか?
「千葉には縁もゆかりもありません」
――なぜジョーカー姿に?
「海外では普通なことが日本では認められていない。そんな偏見へのメッセージです。今後は化粧をもっと上達させ、最終的にはYOSHIKIさんのような男になりたい。曲も準備済み。タイトルは『いっちゃいやSHOW TIME!!』です!」
……取材後、次の街頭演説へ向かうべく、ジョーカーは雑踏へと消えていった。
次は後藤輝樹氏(38)。名前を聞いてピンとくる読者諸君も多かろう。昨年の都知事選でオムツ姿で政見放送を行い、自慰行為による世界平和を訴えたあの男だ。
「コロナ禍での新生活様式としてキャッシュレスの促進、ベーシックインカム導入による収入の安定を行います」
ほぼ裸だった前回とは一変し、今回はスーツ姿。頭巾までかぶっている。聞けば講演会を終え、ゴミ拾いをしていたという。心を入れ替えたのか。
――今回は過激な選挙活動は行わない?
「前回でやり切ったつもりです。ただ、今でも日本はタブーが多すぎると思っています。たとえば正しい性教育のためにAVのモザイクはすべてなくすべき。もっと気軽に『チ〇ポ』と言える世の中になればいいな、と常に思っています」
……何も変わっていなそうだ。だがイケメンゆえ、若い女性に人気で記念撮影を求められていた。
最後に平塚正幸氏(39)が取材に応じた。
「マスクを外し、ワクチンの危険性を知ってほしい。そもそも厚生労働省はコロナウイルスの毒性の証拠を開示していません。その程度の危険性しかないんです。私が知事になったらさまざまな情報を提示し、多様性のある社会を作ります」
昨年の党結成時から「コロナは風邪」と連呼してきた。今回もその姿勢を貫く。
――具体的な政策を教えてください。
「政策ですか……。とにかく判断材料を増やし、情報の偏向性を正します」
――コロナ収束後は知事としてどんな活動を行いますか。
「それはまだ先の話です。まず理解を深め、一人でも多くの命を救うこと。それは当選以上の価値があると思います」
……なぜ今回の千葉県知事選にはこんなに個性派が集まったのか。政治ジャーナリストの角谷浩一氏が解説する。
「名前を広めるための”ツール”と考えているようです。供託金300万円も『NHKの政見放送に出て、街頭で活動するための広告費』と割り切っている。3人ともユーチューバーという共通点がありますからね。名前が広まれば収入も増える。千葉県民の悩みに寄り添えなければ、有権者はソッポを向くでしょうが……」
角谷氏によると、現時点で熊谷俊人元千葉市長(43)が圧倒的にリード。投開票は3月21日――千葉県民が選ぶ未来は?
- 撮影:結束武郎