近隣住民が見た「殺人の予行演習」夫の首をノコギリで切って殺害
神奈川県茅ヶ崎市 社交的な妻(76)と酒浸り夫(83)、不仲な熟年夫婦がたどり着いた果ては――
「あれは事件が起きる2~3日前でしたかねえ……奥さんがノコギリで庭の木を切っていたんですよ。あれが旦那さんを殺したのと同じノコギリだったらと思うと、背筋が凍ります」(近隣住民)
広い芝生の庭に、幹の部分からバッサリと切られた5~6本の木がまばらに生えている。枝や葉もすべて削(そ)ぎ落とされ、庭全体には何かが欠けたような異様な雰囲気が漂っている。閑静な住宅街にあってひときわ目立つこの一軒家で、事件は起こった――。
3月5日、神奈川県茅ヶ崎市で、丸壽雄(まるとしお)さん(83)がノコギリで首を切られた状態で亡くなった。殺人容疑で逮捕されたのは、妻の洋子容疑者(76)だった。
「容疑者は1階の寝室で横になっていた壽雄さんに馬乗りになり、喉仏(のどぼとけ)を切りつけました。彼女は馬乗りのまま2時間ほど、意識が薄れていく壽雄さんを見ていたようです。同居していた40代の息子は外出中だったため、神奈川県内に住む娘にメールを送り、犯行を知らせました。その後、娘に促されて110番通報をしたということです」(神奈川県警担当記者)
警察の調べに対し、「暴力や、生活費を入れてくれないなど長年の恨みがあった」と話しているという洋子容疑者。冒頭の近隣住民によると、外では明るく社交的な一面を見せていたという。
「昔は大型犬を飼っていて、賑(にぎ)やかなご家庭でした。嫁いでいった娘さんが孫を連れてくることもあり、反対に洋子さんが『これから孫のところに行くの』と嬉しそうに話していたこともあります。洋子さんは足が悪いのですが、こまめに庭の草刈りや木の手入れをしていて、大変そうだなと思っていました」
そんな洋子容疑者とは対照的に、殺害された壽雄さんは近所付き合いがほとんどなかったようだ。別の住民が語る。
「壽雄さんは一人で飲み屋に行くほどの酒好きでした。ただ、数年前に体調を崩したらしく、それから近所で姿を見かけることはなくなりました」
なぜ洋子容疑者は、40~50年連れ添った壽雄さんをノコギリで殺害するという凶行に及んだのか。犯罪ジャーナリストの小川泰平氏はこう語る。
「包丁など他にも凶器はあったはずなのに、容疑者はノコギリを使用した。それは相手をじっくり痛めつけたいという恨みの気持ちが大きかったからでしょう。壽雄さんは寝たきりだったそうなので、抵抗できなかった可能性があります」
ノコギリで庭の木を切ったのは、「殺人の予行演習」だったのか。不仲な熟年夫婦は哀れな結末を迎えた――。
『FRIDAY』2021年3月26日・4月2日号より
- 撮影:結束武郎