映画『望み』が早速アマプラに!サブスクで始まった作品争奪合戦 | FRIDAYデジタル

映画『望み』が早速アマプラに!サブスクで始まった作品争奪合戦

映像作品はディスクで見る時代から、サブスク配信で見る時代に!

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映画『望み』で主役の一級建築士を演じた堤真一
映画『望み』で主役の一級建築士を演じた堤真一

気がつくと昨年10月公開になった映画『望み』が、アマゾンプライムで見られるようになっていた。堤幸彦監督と堤真一がタッグを組んだ話題作だったけれど、もう自宅で見られるようになるとは、嬉しいと同時にちょっと驚いた。

サブスクで見られる本数、公開のスピードも昨年のコロナ禍以来、格段にアップしている。ここに加えて地上波ドラマもあるのだから、選択肢は日々増加。私たちは一体何を選んで、何を見ればいいのか。やや脳内が煩雑化してきたので、この辺で聞いてきた情報を整理してみようと思う。

サブスクは個性をパッケージした本棚のように

一昨年と比べると、アマプラだけに絞って考えても公開されている本数、作品の質が全く違う。コロナ禍以前までは人気作は有料、だいぶ昔の作品がラインアップされていた。人気作は映画館へ足を運んでください、という制作側もメッセージだったように思う。

それが思わぬ事態に状況は変わり、人が自宅にこもるようになるとサブスクそのものの数が増えている。「あれ? これもうアマプラで見られの??」と感じることもしばしば。

ドラマもオリジナル制作作品が増えた。吉田羊主演『コールドケース』のように、地上波では一切放送はしないけれど、シリーズ化するほどの人気をキープしていくパターンもある。実際、この春からスタートするドラマは全体を見渡すと、約30作品も並んでいるのだ。これは私のようなドラマオタクからすると、ますます引きこもりが加速する。もう家から出なくていいな。

こんな話をテレビ局で聞いたことがある。これまで映画、ドラマといえば公開が終了すると円盤化(Blu-ray、DVDなど)して売り出すことが通例だった。これはさすがに誰でも知っているし、高額なうえに保管場所も必要になる。爆発的に円盤が売れた! という話もここ数年ではそんなに聞いたこともない。

でも今はサブスクも増えて市場は拡大化。たとえ地上波でパッとしなくても、配信後に話題にあがることもある。そのため制作する作品も増えたそうだ。この話を聞くと、昨今の状況は納得できる。もう映像作品は自分好みのものを選んで、本棚に保管していくようにストックしていく時代なのだ。

だんだん脳内整理が進むと、これはいい話だとしみじみ思う。地味だ、斜陽産業だと言われても出版業に身をおいていて自慢できるのは、円盤に比べると安価ではあるし本棚に収めてもらえる。紙でもデジタルでも変わらず、数十年経過しても読んでもらえることがあるのだ。

『望み』は高校の推薦映画に推薦したい名作だ

それが映像作品も本と同じように、棚=サブスクに保管してもらえるようになった。そんなに多発することではないけれど、手がけた本が映像化された場合、また別の形で読者の手元に残ることができる。

そんな中で見つけた『望み』。観に行く機会を逃してしまったので、気合を入れて視聴をした。あらすじはこうだ。

“一級建築士の石川一登(堤真一)は、妻の貴代美(石田ゆり子)と、息子の規士(岡田健史)、娘の雅(清原果耶)の4人家族。ある日、規士が家に戻らなくなってしまう。それまでに膝を痛めてサッカーを諦めたこと、刃物を自宅から持ち出していた経緯から家族全員が不安に陥る。そしてついに警察もマスコミも動き出す”

行方不明になってしまった家族へ思う、それぞれの“望み”は眉をしかめて考えさせるものがあった。それから今回の主演、堤真一のボロボロになったビジュアルの臨場感も胸打つものが。白髪混じりのボサボサ頭が訴えてくる強さは……切なかった。ふと、映画『容疑者Xの献身』(2006年)で見せた、冴えない、野暮ったい数学教師が重なる。彼にこういう非情感ある演技をさせたら、日本一だ。

「心の優しいお子さんほど、ご両親に心配をかけまいとする。しっかりしたお子さんほど問題を解決しようとします」

刑事のこんなセリフが印象的だった。自分が“もしも”気を緩めたときに、家族に及ぶ弊害がわかりやすく描かれていたので、中高生には勧めたい作品だ。こんな映画もサブスクで見られるのだから、お父さんは子どもを映画館に誘い出す必要も、学校で教室を暗くしてわざわざ見せることもない。手元のスマホがあれば十分なのだ。

ちなみに、映像制作数が増えていることによって原作を本屋で探す機会も増えている話も聞いた。サブスクリプションの会社による、いい意味での良作争奪合戦が始まっている。出版、映像化、配信。このいい連鎖が切れることのないことを、その連鎖の一端にいる者として願わんばかり。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

  • 写真Rodrigo Reyes Marin/アフロ

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